Solar Star Party 2023
太陽のための観望会、重鎮たちが集合! 2023年11月3日
公開:2023年11月5日〜
更新:2023年11月10日 内容を訂正
塩田さん提供(当日午後の太陽)
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山崎さんが宮古島で、またまた驚愕の写真を撮った。私も毎年遠征している所で、シーイングは本州とは別次元だ。しかし彼の真骨頂は、卓越した撮影・現像テクニックのみならずセンス溢れる仕上げにあって、思わずダウンロードしてしまった写真が沢山ある。同じ場所、時間で撮ったって、あんな見事な写真にはならない。 宮古島のどこで撮ったのか問い合わせたついでに、久々に Solar Star Party をやりませんか?と声を掛けさせていただいた。山崎さんは皆さんご存じの通り、天文ガイドに太陽撮影について連載中で、仲間内では 「何であんな写真が撮れるの?」 といつも話題になっている。そうなると、真っ先にMr.太陽:塩田さんにも声をかけて、佃式ダブル・スタックを編み出して世界の最先端を走り抜けている佃さん、双望会を皮切りにWスタックの驚異の世界を我々に紹介し、そして衝撃を与え続けているじろーさんもお誘いし、そして平塚博物館・太陽分科会の鴈(がん)さん、大島さん、鈴木さんもご参加という、超豪華、実にそうそうたる重鎮の方々が集まることとなった。
駐車場の関係で参加は計14名で締め切りとさせていただいて、神奈川県某所にて朝7時頃からの開催となった。快晴、そして抜群のシーイングとフレアの出現、とてつもない量の濃い内容の情報交換と驚愕の見え味の鏡筒が並んで、それはそれは大変充実したSolar
Star Partyとなった。さて、会場右側から機材紹介。
塩田さん
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Coronado SolarMax 90T
+ Baader Maxbright双眼装置 + Hyperion 24mm
2008年購入。T形最後の鏡筒で主に撮影用。シングル・スタックだと、均一に撮れるのが良い。 塩田さんの名著。誇張ではなく一家に1冊!という素晴らしい内容。今回、サインをしていただいたら、佃さんから、「ミーハーなの?」と突っ込まれてしまった。しかし回りの人々は、「しまった!本を忘れた!」 へへっ。 |
じろーさん
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Coronado 6cm
(20年程前の初期型) + TeleVue Pronto + 超初期型小型EMS + Nikon顕微鏡用双眼装置 + ED Lavendra
34mm
6cmのダブル・スタックは、太陽全景が見え、そしてプロミネンスも複雑な太陽表面も双方が驚異的に見え、我々をショックに陥れた伝説の銘システム。もっと大きな口径、高倍率のものが多数ある中、「全景が見える6cmですが、何か?」
と言わんばかりで皆の羨望を集める。ブロッキング・フィルターは15年で交換。
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石石石さん
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Lunt
LS60THaPT/50FHaダブルスタック/B1200
+ TeleVue Powermate 4×+ ギガオプト30mm
像が暗く、ブロッキング・フィルターの劣化? これからメンテナンスの予定、と。 Nikon ミクロン7×15 + 古スコの24.5mmサングラス 対物筒の直径が24.5mmアイピース用眼視サングラスの外形直径とほとんど同じため、両者をセロテープで巻きつけて合体。昔懐かしい緑色の太陽と黒点が見える。 |
トラさん
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STELLAVUE 80mm ED
(カリフォルニアのメーカー)
+ DayStar QUARK Chromosphere/Baader Quick
Lock + EMS
+ Baader Mark-V 双眼装置 + J&R社プローセル 40mm(SVBONYのアイピースのレンズを置換)
+ アイガード(アメリカ軍用防振双眼鏡で使われていたものをのみの市で購入)
クオークをダイアゴナルの前に装着。そのために鏡筒の工場に行って筒を延長してもらった。
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大島さん (平塚市博物館・太陽分科会、群馬より参加)
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Kenko 12cmアクロマート +
Vixen天頂ミラー
QUANTUMは2010年購入。消費電力が大きい。QUANTUMも家の昭和機械25E赤道儀(長焦点屈折も難なく運用)もLunt
5cmも出てすぐに購入した。
佃さんが大島さんに、「太陽を見たいのですが、何が良いですか?」と問い合わせ
た。「まずは既存の鏡筒を使用できるDayStar
QUARKが良いのでは。ただしバラツキが大きいので、選んで購入すること」。大島さんはいち早く30本程を検品した経験があり、不合格の物が沢山あった。
以前、双望会でQUARKを2〜3見せてもらった時、随分と見えなくて、以後眼中になかった。ところが2018年のSolar
Star Partyの時、佃さんのQUARKの太陽像にびっくり仰天し、私も導入することとなった。QUARKは見えないのではなく見える物もあって、つまりはばらつきが大きいのを初めて知ったのであった。Luntだってあれだけばらつきがあるのだから、QUARKだってそうなのだ、と考えるべきだったのかもしれない。
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鴈(がん)さん (平塚市博物館太陽分科会・学芸員、星槎大学客員研究員)
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Lunt
8cmダブル・スタック(黒い方が追加した部分)
博物館がオープンした1976年から太陽に取り組んでいる。スケッチ、写真、Hα
と時代の変遷と共に歩んできた。
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Takahashi FS-60C + スペクトル・ヘリオグラフ + Manfrottoギア雲台 + Kenkoスカイメモ フランスのアマチュア達が考案したスペクトル分光器。2019年に数万円で購入(今は10万円位)。送られてくるのは スリット、グレーティング(2400本/mmの回折格子:種々の波長が混ざった白色光を波長ごとにわける分散光学素子)と光学系(中国製)。ケースは3Dプリンターで製作(図面データ送付)。 最近はケースも合わせた組み立てキットも販売されている。
太陽を全面撮ろうとすると、この中にすっぽり入れないといけないので、鏡筒は6cm f=335mm。昔の望遠レンズNikon
300mm F5.6+ 1.4×テレコン(420mm)もちょうど良く、これも使用。
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写真・左は、このスペクトロヘリオグラフで撮影した11月2日のHα像(鴈さん提供)。 フランスのアマチュアが書いた凄い本がある。鴈さん達が翻訳中。ぜひ出版して欲しいが、出版社が乗り気ではないとこと。数は売れないかもしれないが、出版社としての社会的責務を感じてもらえたら... |
佃さん
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Lunt
8cm + Baader BBHS + DayStar QUARK Chromosphere + Baader Mark-V +
Lavendura 40mm、TeleVue Plossl 32mm、Zeiss Abbe 25mm、16mm 太陽を始めてまだ5年、時に初心者と名乗るが、そもそも天文の超ベテランでキャリアも長く、高級車のチーフ・エンジニアとして活躍していた技術力と明晰な頭脳でのアプローチなので、あっという間に頂点の一角に君臨するに至った。 大島さんの所に書いた通り、大島さんからDayStar QUARKを紹介され、最初はTOA-150/130で観望。その後、試行(思考)錯誤の末、Lunt + QUARKの混合ダブル・スタックを編み出し、最も見える太陽望遠鏡が誕生した。2019年にSolar Star Party(未報告)で私はこれを見て再び驚愕し、あれだけ見えていたLunt純正ダブル・スタックを手放して佃さんに追従する道を選んだ。佃式混合ダブル・スタック方式は、世界でも類を見ないパラダイム・シフトだ。 天頂ミラーは、以前はTeleVueのエバーブライトを使っていたが、これを銀ミラーのBaader BBHSに替えた。銀ミラーは赤色の反射率が落ちないので、ここで情報が削られない。また、この天頂ミラーの対物側にはDay StarのUV/IRカット・フィルターを、QUARKの鏡筒側にはBaaderのHαフィルター3.5nmを入れることで背景が締まり、格段にコントラストが向上した。 QUARKは4.3×バーローが内蔵されていて、結果的にF30以上になる。定番の太陽ファインダー:ソル・サーチャーでは太陽を視野に入れるのは、誤差が大きくて結構大変だ。そこで、ドット・ファインダー SkySarfer V は軸長があるのでこれを採用。FOT-85に装着。 アリミゾは、RAYOX社製。プレートを緩んだアリミゾにカチャリと嵌めるとロックがかかり、鏡筒が落下しないような仕掛けになっている。それからゆっくりネジを締めて固定する。ここでの落下事故はあるある事象なので、良くできた装置だ。TOMITA扱い。 架台Rainbow
Astro RST-300はハーモニック・ドライブなので、本体はわずか8.5sなのに、ウェイトなしで積載重量30kg ウェイト併用で50kgまで対応する。トルクが極めて大きいので、引っかかったらちょっとした金属をへし曲げてしまう位のパワーがあるので注意。通電でブレーキがかかっている状態になるので、まずは通電してから鏡筒を搭載する必要がる。経緯台モードで運用
、視野回転が無いので良い。 三脚 SUPER MOUNT CYG-54Gは本体10.9s、積載225s。ただし、エレベーターの耐荷重は75s。エレベーターで上下してもアライメントが狂わない優れもの。しかも、小型のバッグに入れて持ち運べる。この会社はカスタマイズにも柔軟に応じてくれる。 オーディオでも、ただ高価格/高級品を並べて繋げただけでは決して良い音は出ない。佃さんのシステムは、三脚と架台だけでもかなりの高級品だけれど、鉄壁のアプローチと使いこなしで 、流石としか言いようがない。そして、佃さんのアプローチは全て理に適っている。勉強になるなあ! |
K Nebuka
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Lunt
LS152THa + EMS銀ミラー + DayStar QUARK
Chromosphere + Baader Mark-V + Lavendura 40mm、ED Lavendura 34mm、Brandon
24mm iPotron AZ Mount Pro
Lunt
LS80THa + EMS銀ミラー + DayStar QUARK Gemini
+ Lavendura 40mm、ED Lavendura 34mm、Brandon 24mm。 Founder Optics FOT-104 +
Baader ハーシェル・プリズム
+ TeleVue Apollo 11 重複になるので、こちらをご参照下さい。 *半値幅についての論議が続くが、書ききれないので割愛。 |
長岡さん
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Takahashi 6cm+
Extender (F10) + DayStar QUARK Chromosphere
山崎さんの天文仲間。小学校の時からのお付き合い。同じく中学の時からのお付き合いの木下さんと共に参加。 |
山崎さん
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TOA-150・トライバンドERF
+ 笠井GS Quartz天頂ミラー + 4Xパワーメイト + DayStar ION + Lunt 35mmエタロン
トライバンドERFは、Hα、CaH、CaKの3バンドだけ通す。
架台は、佃さんと同じRST-300。ウエイト無しで、C11とミューロン210(計約20s)を駆動したこともある。宮古島では、ミューロン300(27s)もウエイト無しで撮影した。 朝8時頃、さっそく見せていただいたが、豊かなグラデーションのプロミネンス、リムに向かっている連峰状のダークフィラメントと連続して飛び出している立体的なプロミネンス、実に見事なコントラストと解像度の黒点とプラージュ、そしてちょうど出現したフレアなど、圧巻!の像だった。やはり優秀な鏡筒と追い込んだダブル・スタックはかくも違うのか、このままかじりついてずっと見ていたかった。 |
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Kenko New Sky
Explorer SE 120L・Alter トライバンドD-ERF + 2Xパワーメイト + DayStar QUARK CaH or CaK
or Mg I b2-Line
トライバンドERFは、同じくHα、CaH、CaKの3バンドだけ通す。シェルは一見アルミ金属製のようだが、樹脂製(だろう)。
続いて 、この鏡筒でCaK。塩田さんは同じように見えた、と。しかし見えない人達も多く、私は黒点が一つだけ見えた。この領域はUVに近く、眼鏡はUVを吸収するので見るなら外した方が良い。眼には良くないと思うので、見えない場合には深追いしない方が良さそう。CaHは3969 Å、CaKは3934 Åと、わずかな波長の差しかない。 |
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Magnesium I b2-line QUARKは、見るチャンスを失ってしまった。残念! |
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また、一角にSeestarが。 10時にはネタが尽きて解散かと思いきや、地面によるシーイングにつて論議が続いたり、1時近くになって、ようやく片付け、解散となった。
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顔が識別できないよう、小さく掲載。所用で3名、途中で離脱。
やはり皆さま、ただの天文ファンではなく、創意工夫と知識が半端ではない。大いに刺激を受けまくり、飛び交う情報の濃さ、多さに頭はジンジン、そしてシーイングに恵まれ、素晴らしい太陽像に感嘆の嵐。よくぞ集まって下さった方々に感謝! 感謝! 各コーナーで様々な試みが行われているので、網羅し切れないほどだった。
また、来年の適切な季節にやりたいと思います。皆さん、進化していることでしょう。私もあれこれ動き始めています。よろしくお願いします!