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マリリン・モンロー、ネバダ砂漠

【 マリリン・モンロー,ネバダ砂漠 1】

 何年かぶりに新聞をとった。
  読む暇がない。
 と言うより、帰ってすぐ四角い箱に向かい、酔いつぶれるまでそうしているので、そんな「隙間」が、ないのだ。
 新聞はバサバサと降り積もる。「部屋」は精神の「身体」だ。たまらないのでまとめて一気読みする。酔いながらランダムな情報を眺めていると、なんだか面白い。なんだ?結構、ゆくじやないか。‥・ふふふ。…けれど・…何処へだ?

 夕刊に、イヴ・アーノルドというアメリカ人が撮った「マリリン・モンロー、ネバダ砂漠」という小さな写真があった。なにかの撮影の合間のショットなのだろう。広い空。広い砂漠。空と砂漠の間に帯のような低い山脈。その前景に撮影機材と、モンローがひとり写っている。モンローは両手の拳を口元にあてて、目を伏せ、寒いのか、震えている。それは、まったく、「独り」の姿なので、遠くの空と山と砂漠と一緒に、時軸の違う、いまここの、この私に、殺到したのだ。…ふふふ、…ふふふふふ…

> 駐車場で「マネキンのようなものが焼けている」と通行人の女性から110番
>通報があった。警視庁捜査一課と綾瀬署が調べたところ、女性の死体とみられ、
>首がなく全身が焼け焦げていた。

 「まだ怖いところがある」と、別れた人に言われた。当惑し、朝の繁華街を帰る。舗路はザラザラしている。朔太郎だったら、くつの裏に、粗製じやない 「ごむのやうなもの」を貼り付けて、大気中の赤や青や黄の原色の粒子を「ぶむぶむぶむ」と避けて帰れるのにな。駐車場でマネキンのようなものが焼けている。世界はそんなふうだ。首がなく全身が焼け焦げる。「おわあ、おわあ、こんばんわ」。猫が私に挨拶する。

> 三橋実習也 「多臓器不全のため」死去

 そうだ。たくさんの「臓器」は「ノン!」を言える。私はハタチ前後の頃、この不随意筋である「臓器」が気持悪くて仕方なかった。「意識」を拒否するこの「身体」たちが不快でしようがなかった。依存する共同体。「ふるさと」は、帰る度に私を傷める。それがいよいよ「末期」に解体した時に、ひとりひとりの「個」は、激しく「ノン!」を宣告される。…………だがな、それから先に、…「未知」はある。「未知」はどんな「場所」にもある。

1996-01-10