碧電12周年企画各地を走った ジョイフル気動車

第36回 サロンエクスプレス アルカディア  13.7.30UP

高崎線をゆく「アルカディア」のキロ59508。この1ヶ月後には火災事故で焼失してしまう。

●不運にもめげず、キハ58系改造ジョイトレの最長寿を誇る

第7回で扱った「kenji」の再改造前の姿です。国鉄時代末期に新潟鉄道管理局で設計、改造工事が行われ、分割民営化と同時にデビューしました。前頭部は北海道の「アルファコンチネンタルエクスプレス」と同様ですが、設計期間を短縮するため、「アルコン」の図面を利用したとされています。国鉄時代の改造であったから成し得たことでしょう。
 デビューしてからは引っ張りダコの人気で、連日運用が設定されていました。首都圏まで来ることもあり、喜んで撮影に出掛けたものです。
 華々しく活躍を開始した「アルカディア」でしたが、1988.3.30、上越線内でキロ59508が火災を起こし、全焼してしまいました。工場や専門家による究明が行われた結果、構造上消音器に油がたまりやすく、下り勾配区間でエンジンブレーキを使用したことによる過熱によって引火したことが原因とされました。この事故がきっかけとなり、JR東日本ではDMH17型エンジンを全て新型エンジンに取り替える工事が行われました。
 延焼を免れた2両、キロ59509とキロ29505は長らく休車状態でしたが、1992年に盛岡支社の「kenji」として再起することになりました。大活躍の最中、デビュー後たった1年で遭遇した不運な事故でしたが、新たな活路を見出すことができたのはなによりでした。ELに牽かれて回送されるシーンを雑誌で見たときは、やっと彼らが表舞台に戻ることができるのかと、嬉しく思いました。
 基本的な構造はそのままですが、前面窓の横枠がなくなり、前面の見通しがよくなりました。また、3両とも普通車扱いとなり、旧アルカディアの2両は原番号に戻されました。
 2013年現在、車体、エンジンの乗せ換えを行って種車のイメージとは大幅に変わった「ゆふいんの森I世」中間車を除けば、JR線内最後の現役キハ58系として活躍を続けていることは特筆に価します。

火災事故約1ヶ月前のキロ59508 1988.2.21 高崎線 吹上−北鴻巣


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