香椎線のイメージアップを目的として、キハ58系を改造したものです。JR九州のほか、今では各地の鉄道から引く手あまたとなったデザイナー、水戸岡鋭治さんが初めて手がけた鉄道車両とされています。
登場当時、雑誌で水戸岡さんのデザインコンセプトを読みましたが、子供騙しの絵をでかでかと入れたものにだけはしたくなかったというコメントが印象に残っています。楽しいからと称して安易に絵を描いても、車両自体のデザインに合わず、中途半端になってしまっているものは少なくありません。想像以上に老朽化した車両をいかにリフレッシュするかに苦心したとされていますが、さすがにセンスよくまとめられていると思います。
普通列車にしか使われないのに「エクスプレス」という命名は不思議ではありましたが、香椎線での運行を終えると車両の名称、デザインもそのままに肥薩線の急行「くまがわ」に転用され、晴れて「エクスプレス」になりました。
1994年6月に全廃が予定されていたジョイフルトレインを撮るため、九州を訪れたことは第10回「BUNBUN」で触れました。「BUNBUN」のポイントがイマイチであったため、八代へ向かう途中、開けたポイントが見つかった小川−松橋間へ移動しました。「アクアエクスプレス」は定期列車用のため、廃止対象からは除外されていましたが、特急「はやぶさ」などと共に撮影できるのは嬉しいことでした。
天気は下り坂の予報でどんどん暗くなります。それでもアクア使用の「くまがわ6号」の時間はなんとか雨は降らずに持ちこたえていました。
カメラを構えていると、近くの畑に農家の方が見えました。はっきり覚えてはいませんが、きっと「何ば撮っとっとですか?」とでも尋ねられたのだろうと思います。どんな珍しい列車が来ることかと期待していらしたようですが、アクアは475系などの普通列車(アイボリーに青帯)と色合いが似ているためでしょうか。「この列車のどこが珍しいのだろう?」という顔をされていました。
急行「くまがわ6号」1816D キハ287001 1994.6.11 鹿児島本線 小川−松橋