オーディオ日記 第46章 幸せの音(その20)2019年9月16日


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK 掲示板

私を忘れないで:FPS編(その2)

今年の夏は比較的暑かったと云えるのだろうか、8月中はずっとクーラーのお世話になってのオーディオだったのだがやっとこのところクーラーの電源を入れずに済んでいる。年齢と共に暑さに対する耐性は落ちてきているようにも感じるのだが、関心事はこれで電源事情が多少は改善されるのかな~というしょうもも無いことばかり。先に行ったMUTEC MC3-USBの 別電源化 とデジチャンへの ノイズ対策 も暑さの中の電源事情故の効果であったのか、これから日常でも効果を期待しうるのかなどなど。

デジタル機器に対する電源系ノイズ対策は(効果の大小はあれども)有効なことは実証的には論を待たないのだが、何故そうなのか?と疑問を呈してみても今ひとつ納得の解釈には辿り着けない。デジタルオーディオの仕組み(あるいはオーディオ全般)が背負ってしまっている電源というものの宿命なのだろうか、、、

我が家の上流のPCオーディオは三形態(JPLAY FEMTOとSymphonic-MPDの二構成)あり、4wayのスピーカー構成も二形態(FPS構成、ホーンドライバー構成) ある。これを適宜組み合わせるスタイルで再生させているのだが、なかなか明確な評価というものができない。多少音源にも依存するところがあるので、評価軸がブレてしまっているのかもしれない。なるべく冷静に評価できるように、小型2way構成のスピーカーとバランスや音色の観点からの比較調整も行っている。また、ヘッドフォン(iPADをレンダラーとして再生する構成)とは高域感や音の抜けを検証する目的で適宜使用している。

これは結局パーフェクトな構成が無い、とも同義であろう。いずれも一長一短あるのだが、シンプルな構成の鮮度感の良さ、あれこれ手当てした構成での音の安定度などどこに着眼するかによって変わってしまう部分があるのだ。そしてそれは音源の特徴とも結び付いてくる。逆に云えば適合する音楽、ちょっと合わないかなという音源もあって、ワンアンドオンリーの構成には絞り切れないジレンマがある。

そんな中で、C51というドームユニットの 導入 に始まり、SUP-T11ホーンドライバーとの比較や組み合わせ変更などから、Mid Lowとして使用してきたFPSが設置上の理由などから一旦はお役御免になったのだが現在はそれを 復活 させており、この構成のベストな状態にすべく試行錯誤している。現在の設置状況はスタンドスタイルでFPSならびにそこから上の帯域を担当するふたつのユニットをインラインに配置するもので、その点は復活時点からの変更はない。課題はFPS自体が担当する領域。エンクロージャを持たない設置スタイルなので、低域側の限界があり200Hzあるいはそれ以下に下げることには無理がある。また背面の処理も完全に開放し、ダイポール特性を継承するのか、若干なりとも背後からの音圧をコントロールすべきか。当初C51とのつなぎは1KHzでスタートさせたが、これもまだまだ改善の余地があるように思える。自由度が高いのも逆に云えばまたひとつのハードルでもあろうか。このため帯域バランスや音色には細心の注意を払いつつ設定を煮詰めていく必要がある。

平面ユニットの特徴を活かしたレイアウト:(画像は再掲載)
FPS Stand

はっきりしているのは、中低域からの三つのユニットをインライン配置したことのメリット、そして上流のデジタル系電源の見直し、改善を実施したことによる相乗効果が音に現れている点(主として音場感、空気感)。従って、この辺りをしっかりと活かしながら納得の音に仕立てなければならない。まず背面であるが、完全開放ではなく若干の吸音材を配してみた。これによって完全なダイポール特性ではなくなるので音場感は後退するかもしれないのだがその分密度感は向上する。クロスオーバー周波数はなおトライ中なのであるが、ぎりぎり下げて280Hzくらい。あまり上げてしまうと4way構成としてのMid Low帯域を担うメリット〔平面振動板の反応のシャープさ)が薄れてしまうし、一方で低域のクリアネスと充実感は両立して欲しい。この点の鬩ぎ合いであろうか。上の設定は更に悩むのだが、1250HzとSUP-T11をMid Lowにした時と同じ設定で現在は固定している。(一時にあまりあれこれ弄るとどれが効果的なのか判らなくなる)スロープ特性は高次のものを使うのが従来からの方針なのだが、ここは原点に立ち戻って-24dB/octからスタートさせている。低域とのクロスオーバー周波数が280Hzということもあって、ここは-24dB/octでも思ったほどの違和感は無い。

総じて、静けさ(S/Nが高い?)に裏打ちされたすっきり系の音(SUP-T11と比較すればやや細身?)だと思う。これは中高域、高域のユニットの表現力とも上手くマッチしているのかもしれない。合わせる低域はあまりレベルを絞ると音楽的に寂しくなってしまうので量感を確保する必要はある。ただし、クロスオーバー周波数が280Hzなので膨満感はそれほど出なくて済む。爽やか系のクラシック音楽、器楽曲、ジャズ、などは良い感じ。ボーカルものも普通のロック、ポップス系であればむしろストレートな表現が好ましいか。

最近はほとんど「ハイパワー再生」などはしないでひっそりと音楽を楽しむ傾向が自分でも強まっているように思うのだが、その抑圧(?)を一気に開放したくなるような気にもさせる音である。音数は多いのだが低歪なのであまり違和感はなく、音の粒立ちや芯も明確。以前の使い方のどこかに課題があるようにも思える結果なのだが、その差異は何処から来ているものなのか判然とはしない。総合的に上流が変化、改善されたことによる表現の差異となっているのか、どこかに使い方の課題があったのか。これはもう少し追い込んでみようと思わせられる音でもある。一般論的にはこの構成の再生音の方が好まれ、評価されるかもしれないと思う。Symphonic-MPDの再生音との相性もかなり良い。一方で女性ボーカルに関して云えば、お気に入りのアーティストの声をとことん楽しませてくれる没入感はやはり得にくく人間の声の持つ機微や肉感を十全には表現仕切れていないようにも感じてしまうのだ。だが、それはむしろSUP-T11というホーンドライバーが例外であって、そこに琴線に触れる何かがあるのだろうか。あるいはそれは単なる再生上の固有のキャラクターであるのかもしれないのだが。

(閑話休題)過ぎ行く夏に思う

翻って考えてみると随分といろいろなこと(機器の追加、改定やら対策やら)を行ってきた我がオーディオなのであるが、それに見合う程の改善効果、あるいは音の向上?などがあったのだろうか、そう冷徹に分析すると甚だ心許ないところもある。まぁまぁかな、と思う日もありながら、全然ダメじゃん、と落胆する日も少なくはない。理想は理想としてもそれには遥かに届いていない、という思いも強い。

時にあと数歩かも、、、と浮かれることはあってもそれは砂上の楼閣のように儚い。もちろんその時の音源との相関関係も強いのだが、今日の良い音は決して明日には続いていかない。このように思うのは当方だけなのか、あるいは世のオーディオファイルの多くがそのように感じているのか、その辺りは定かではない。だがネットにあるオーディオテーマのブログなどを読む限り、日々向上に勤しんでいる方が多い。それはまた裏を返せば現状に満足できていないが故?とも推論できるのだろうか。良い音楽はそれをどのような再生装置で聴くにしても概ね幸せになれる。だからもっと幸せになりたい?と欲を搔いてもっと「凄い」音で再生させてみたくなる。だが、そこから先にはそう容易くは行けない。壮大な音の伽藍に身を任せることを期待しつつも現実は貧相な雑音に塗れているだけなのか、、、それは紙一重の差なのか、埋めることのできぬ程の差異なのか自分では分からない。

知らずと夏は過ぎても行く。気が付こうと付くまいと時は進みどこかに(あるいは若き日に?)戻ることなど叶わない。我がオーディオの遍路では最早通り過ぎた道など忘れてしまい、この遍路の意義や目的すら定かには思い出せない。ただただ日々の道を前へ前へと進み今日が良かれと祈るのみ。その先に何があるのか、何処に向かっているのかさえも判らない。

これは別にオーディオだけのことではなく、当たり前のように人生そのものだと。木々の緑が色を変えていくように夏は過ぎ、熱き想いもその色を薄めていく。今ここで聴ける音楽は多少の不満があるにせよ、自分があれこれ選択し続けてきた結果でしかない。だが何となくではあるが、多くのオーディを聴いてきた経験値として自分が求めてきた音のイメージが朧げながらも掴めつつあるように感じることもある。自分の心の中にある「こう鳴って欲しい」というイメージが以前よりも具現化できるのだ。だが、イメージと現実を結び付ける困難さには何ら変わりは無い。どうすればそのイメージを我がオーディオシステムの音として反映させることできるのか。闇雲にあれこれと手を打っても実現できるようには思えない。単に機器の入れ替えやアクセサリーなどで近づけるようにも到底思えない。もちろん相当の機器ををガラガラポンしたら音は変わるであろうけれど結果元の木阿弥かも知れぬ。

工業製品、電気製品としてのオーディオ機器はなるほど繋いで電気を入れれば音は出る。音が出なければそれは故障なのだが、その音のクオリティの評価は相当に曖昧でもある。結果血の滲むほどの(ある意味で尋常ではないほどの)努力があってやっと素晴らしい音が味わえるようになる。オーディオファイルであればこの苦労(逆に喜びでもあるのだろうけれど)を誰も否定はしないようにも思う。普通の自動車であれば時速150キロくらいは今では難なく出せる。だが、時速300キロを出そうと思えば一般的な市販車ではかなり難しくなる。多少タイヤを変えた位ではそれは出来る筋合いではなく抜本的に無理難題なのだ。それと同じように考えればそこそこ満足なレベルの音しか出せない装置で「ある種の理想」を実現しようなど、そもそも無理がありそう。その次元ではあれこれやっても結果瑣末なレベルの改善にしかなりそうにもないとも思える。もちろんやらないよりはマシなのだが。だが、理想に近づけるような機器が何かは判っていないし、単に価格の高い機器を使えばそれが実現できるとは今はもう思っていない。使いこなし、部屋、そのどちらも重要な要素だとは思うのだが、、、

かようにつまらぬ事をつらつら考えていも夏は通り過ぎていく。我が身に終わらぬ時はなく、趣味としてのオーディオには果てというものはない。


4way構成の設定備忘録(2019年9月5日更新)設定値

項目 帯域 備考
Low Mid Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
Sony
SUP-T11
Accuton
C51-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 110 (+17) 93 (+0) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 -9.7* +1.7 +4.0
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -3.0 -6.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB -6.0 -12.0 -6.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 85.3 82.7 82.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

500
500

1250
1250

2240
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-24 24-12 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -7.0 -37.0 +45.0 +40.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm MPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

next index back top