オーディオ日記 第33章 原点への回帰(その19) 2013年12月29日


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Omni Mic V2によって現用3wayシステムの 測定と調整 を行ったことにより、なかなか良い感触を得ている。そこで、何回かトライしては挫折している4wayへのチャレンジをこの測定ツールを武器にして再度行ってみた。

基本となる 3way のユニットはSUP-L11、SUP-T11、PT-R9という構成であるが、ここにミッドロー帯域を受け持つユニットを追加するのである。ただし、このミッドローユニットは専用ではなく、サブスピーカとして導入した ELAC BS403 の150mm AS-XRコーンユニットを無改造で流用している。(BS403はJET Vツィータとの2way構成。従って、このユニットにはクロスオーバーネットワークが介在している)

過去に挑戦した結果であるが、ミッドローユニットに受け持たせる帯域に迷いがあって、周波数帯域的にはそこそことなるものの音の質感では基本の3way構成を超えられなかった。これはユニットの素性やキャラクターの他、3wayでも難しいタイムアライメント調整を4wayではクリアー出来ていないことにも大きな理由があると考えていた。今回インパルス応答の測定できるOmni Mic V2の導入によって3wayでこの設定が存外に塩梅良くそこそこにまとまったので、同様に4way構成でも成果が得られるのでは、という期待もある。

さて、肝心のミッドローユニットに受け持たせる帯域であるが、あれこれと悩むとまた収拾がつかなくなる恐れがあるので、200Hz~1KHzにてえいやっと決め打ちにした。スロープ特性は共に-24dB/OCTとする。この受持ち周波数であるが、BS403は単体で測定すると100Hz前後のレスポンスが結構良いのだが、やはり小口径ユニットをバスレフ駆動していることもあり、低域の質感はいまひとつ。このため、あまり低い領域を受け持たせないように200Hz以上と考えた。また、高い方の1KHzは若干迷いもあるものの、声の基音となる帯域にクロスオーバー周波数をもってこないこと。ミッドハイを担当することとなるドライバーをなるべく低い帯域から活用したいこと、の二点からの妥協点である。

ミッドロー以外のユニットの基本調整は、3way構成で何とかまとまった設定(タイムアライメント、位相、スロープ特性、レベル)をそのまま流用することとし、低域の上限、中域の下限をそれぞれ200Hz、1KHzと変更することで開始した。ここにミッドローを単純に足して、まず大まかなレベル調整を実施。次にインパルス応答を計測しつつタイムアライメントを調整しようとしたが、低域にミッドローを足した状態だけではあまり正確なインパルス応答に対する測定結果が得られない。インパルス応答はある程度高い周波数領域でないとちゃんと計測できないのかもしれない。このため低域ユニットと中低域ユニットのボイスコイルの前後位置を測定し、その距離をデジチャンのタイムアライメントに設定したがこれは今までの試行してきた方法と同じである。(今回は11cmの距離補正)

なお、中高域、高域のタイムアライメント設定は3wayで合わせたものであるので、測定上もぱっちりと把握でき基本問題無し。多少前後にタイムアライメント数値を動かしてみたが、結果として初期状態(3wayで調整完了したもの)がやはり一番ベターであった。さて、問題はここからである。周波数測定を行いながら、まず位相の正逆による変化を見ていく。結果として低域、中低域は正相、中高域は逆相、高域も逆相が平坦となる。(マイク位置は基本はリスニングポイントであるが、いろいろと位置を変えながら総合的に判断。当然ながらマイク位置によって特性は結構動く)

この状態で、ミッドローユニットのレベルの追い込みを開始。まずは計測によりまずまずの音量位置を決めた後、さらに音楽を聴きながら最適なレベルを探す、という手順である。この音量設定は面白い。200Hz~1KHzという音として捉えられる非常に重要な帯域なので、レベル設定により(当然であるが)音楽の表情がかなり変わる。レベルを下げると透明感が増したように感じ、全体がすっきりする。200Hz以下の低域は変化しないので低音の量感はそのままでありクラシック系の音楽(特に教会音楽など)には相性ばっちりと思う。逆にボーカル系は艶っぽさや存在感が薄れて物足らなくなる。古い録音のものはこの帯域のレベルを若干高めにした方が元気が出るようにも思う。この帯域のコントロールでスピーカーの性格をかなり変えられるようで面白い。音楽の好みがはっきりしていればどちらかの性格に振っても良いのかもしれないが、ここは両方を満足させるべく微妙なレベル設定を狙って、大分聴き込んでやっとこまあまあのレベル設定に辿り着いた。音の表情までは測定ではつかめないので少し時間がかかってしまったが。なお、ある程度性格の違う設定を残しておいて音楽によって使い分ける、という楽しみ方も出来そうだ。

さて、設定が落ち着いたところで、今回の4wayの評価に入る。デジチャンのメモリー切替で簡単に3way、4wayと行ったり来たりできるのがやはり大変ありがたい機能である。4wayの感触であるが、以前の実験でもそう感じていたが、聴感上のフラットネスがあってとても聴き易い。ホーンの受持ち帯域が1KHz以上ということもあって、インピーダンス変動の影響が少なくなっていることも関係があるかもしれない。クラッシク系の音楽ではこの平坦かつスムーズな感じが弦楽器やホールエコーなどと上手くマッチしてとても気持ち良い。高域に向けてのタイムアライメント調整が上手く行っていることもあるのかもしれないが、高域に滲みが全くと云っていいほど無いので、抜け切った音に感じる。ヴォーカルに関しては少し気になる面が残る。それは実在感や色気、声の力感というものをしっかりと出そうとするとレベル設定に対して非常にセンシティブになること。これは3wayの場合、SUP-L11という15インチウーファーでボーカル領域の下の方をカバーしているので、ある種の紙臭さや歪率が加わっての「味わい」となっているようなことも理由のひとつとして考えられそうだ。あるいはBS403の150mm口径のウーファー自体の性格や特性にも因果関係があるかもしれないが、BS403では音楽としてのこの味わいをやや薄く感じてしまう。ただし、ホーンの場合には時に感じられる圧迫感みたいなものがほとんど無くなるので、これは好みの問題や、聴き慣れの問題もあるかのかもと思う。従い、しばらくはこの実験的な4way構成を聴き続けてみようと思う。なお、低域に関しては、SUP-L11が200Hzまでの受け持ち(加えて、3way構成で40Hz以下を-24dBのスロープ特性とする新たな設定)であることから量感と音のキレが上手く同居してくれているようで、Queenなどのロック系の音楽を聴いても、パイプオルガンなどの持続系の低域を聴いても、4wayに軍配が上げられると思う。

3wayにユニットを足して4wayとするには、今更ながらであるが、まず3way構成のブラッシュアップが限界まで行われていなければならないことを痛感した次第。その意味で、3way構成をOmni Mic V2で再調整したことの効果が4wayの実験でも現れていると考えても良いと思う。こうなると、次のステップとしては、BS403の低域を流用している肝心のミッドローユニットを何とかしたくなるのは当然の人情であろう。単純にはBS403の内臓クロスオーバーネットワークをバイパスし、直接ユニットを駆動する方法(わずかな改造は必要となるが)を試すこと。あるいは一足飛びに専用のユニットを選定し、導入するか。以前に PARC L-11 をSONYユニットとの親和性からニッドローユニットの第一候補と考え、実験させていただいたが、最終結論を出す前に一度Accutonのユニットをどうしても試してみたいと痛切に思う。

ただし、この先の課題も大きい。4way構成に向かうに際してはやはり音量調節機能の扱いが一番のポイントであろう。今回の実験は下記の構成図のように以前に4wayテスト用に設えた構成で3way連動の6chボリュームと2chボリュームの組み合わせで行っており、音量調節をデジタルボリューム(具体的にはPC上での音量操作)としたが、この方法ではアナログ再生での音量調節が出来ないなど汎用性も無く、使い勝手もベストではない。従って8chマスターボリュームを仕入れるか、アナログ再生時は構成を組み替えるか、等々の対応が必要となる。頭の痛い問題である。

今回も同様の構成だがパラメータは微妙に異なる:


再生系に関して、頭の隅にPCM to DSDのことが常にあって、こちらも是非ともチャレンジしたいと考えている。躊躇しているのはデジチャンを軸にした場合、D/A変換を何処で行うか、という課題である。PCM入力によりデジチャンでマルチウェイに分割されたPCMを取り出した後に個々の帯域をDSD変換、D/A変換を行うことがベストと思うが、市販製品がないこと、とにかく構成が大規模になるなどハードルが高く、悶々としている。


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