オーディオ日記 第33章 原点への回帰(その1) 2013年7月12日


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転居後メインシステムの調整に没頭して来たこともあって、サブスピーカーなどを考える余裕が無かったが、現在はかなり落ち着きを見せてきたことでもあり、多少遊びたくなったと云えるであろうか。

比較的大型のスピーカーは試聴する機会も多く、そんな中では PIEGA Coax90.2ELAC 609CE などがお気に入り。 Magico S1 は今後聴いてみたいスピーカーの筆頭なのだが、まだ機会がない。そんな中で、 musikelecronics Geithain RL904を聴いたこと に刺激されて、サブスピーカー構想が現実のものとなってしまった。当初はパワードモニターのタイプをいろいろと検討して聴き回ったが、ふと興味が沸いて ELAC BS403を最後に試聴したことが結果的に決定打となってしまった。試聴の限りでは、JET Vというリボンツィータが持つ音に従来に無い新鮮さがあったことが一番のポイントであるし、充分に小さくて「小型2WAY」という希望にも適っていた。

ニアーフィールドリスニングに限定した設置位置:


ニアーフィールドリスニングを実践するため、比較的近い位置に充分間隔を取り、また耳の高さに合わせて設置することを考えて標準スタンドと合わせて導入することとなったが、左右の間隔は約2m、リスニングポイントまでは1.8mくらいの設置スタイルである。現時点ではまだ厳密、最適のポジションではないし、エージングも不十分であるが最初の感想として記してみたい。

BS403のインプレッション:
とにかくナチュラルでバランスが良く快い音である。鮮度感や音場感がかなりある方だとと思うが、何より高域にかけての自然な感じは類い稀。リボンツィータはメインシステムでも使っており、またリボンの持つ肌触りの良い音が元々当方の好み(PIEGA Coax90.2やELAC 609CEが好きな理由もリボンツィータのせいかも)であるのだが、このBS403のJET Vというリボンツィータの高域は少し違った感触を持っている。うまく表現できないのだが、輪郭が明快でありながら、音の広がりを感じさせるように柔らかく音楽に作用しているところがあって、それが本機の音の核心となっているように思う。音場はきれいに広がり、固まった感じは出さない。また、JET Vのツィータに負けず低域の反応も良いのだが、このスピーカーはブックシェルフであるにも係わらず、バスレフポートが底面にあり下を向いている。このスタイルは低域を全方位に均一に供給するメリットがあり、B&W 800や801、802にも採用されている方式だが、同じB&Wでもブックシェルフタイプの805やPM1では採用されていない。小型スピーカーで採用するには構造的、コスト的にハードルが高いのだろうが、ELACがこの方式を初めて小型スピーカーに採用したことにも注目した。他社のブックシェルフタイプでの採用例は無かったように思う。なお、量感の不足はないものの、ゴリッとした低音や身体で感じるような低域まで再現するのは難しい。

音楽表現はややくっきりとする方で、敢えて絵画の表現で云えば、「 永田萌 」という感じであろうか。色数が豊富で大変爽やか鮮やかであり、それぞれの音色の違いを描き切る。加えて、音楽に対する得意、不得意の領域は意外と少なく、どんな録音のものでもそれなりに聴かせてしまう上手さがある。また、音数の多い音楽であっても破綻を見せず平然としている。 その反面、微妙なグラデーションを感じさせるようところは少なく情感がさらっとしているので、音楽の深みの表現には多少の不足があるかもしれない。

ダイナミックレンジはメインシステムに比すれば小さく感じられ、あまり音量に神経質になる必要がない。従って、VoyageMPDにてクラッシク系の曲をランダム再生しながら、やや絞り加減の音量で読書時のBGMにするにはもったいないかもしれないがリラックスできて最高である。これからの夏場にパワーアンプが一台で済む、という省エネ効果も想定できそうだし。

Piano Blackは綺麗すぎて、かえってホコリが心配:


BS403に比較してのメインシステム:
同様に絵画表現で云えば、BS403を永田萌とすればこちらは「 岩崎ちひろ 」の世界と云えるかもしれない。SONYのスピーカーユニット(SUP-L11、SUP-T11)は音色がやや薄めだがほんのりと暖かく、その暖色によって支えられる音楽は懐が深く広い。ボーカルの素晴らしさはALTECの系譜にも通じるような甘美さがある。音楽を奏でる上で重要な音の芯がしっかりしていることやリアリティーについては比類ないと思うし、また音にまみれ、全身全霊を傾けて、というような突っ込んだ聴き方にもどこまでも応えてくれる。

分析的過ぎず微妙な曖昧さも残している音だと思うのだが、録音の状態についてはこれを補うということはあまり無く、良いものは良く、悪いものは悪いと提示する。ソースの他、システムのどこかに問題があれば、それを正直に暴き出してしまう。また、ダイナミックレンジが大きいので最適な音量への調整には気を使う必要があり、小音量ではこのスピーカーのパフォーマンスは存分に発揮することはできない。その意味では、使い方は幾分かのシビアーさを要求されるかもしれない。

BS403とメインシステムともどちらも素敵な音であるのだが、敢えて比すればスピーカーとしての構成や外観だけではなく、音に対しての個性の違いは、リボンツィータという共通要素があってもそれなりに際立っているようにも思われる。これをどのように使い分け、楽しんでいくかは、今後ゆるゆると聴き込みながら考えていこうかと。スピーカーもTPOにて使い分ける、ということがあっても良いかもしれないなどと思いつつ。

なお、今後チャレンジしてみたいことは、BS403にメインシステムの低域をクロスさせたハイブリッドマルチアンプシステムである。BS403の150mmウーファーと15インチのSUP-L11では反応、スピード感が違うので、上手くマッチさせるのは難しいかもしれないし、そもそもクロスオーバー周波数を何処に設定すれば良いのか皆目検討がつかない。が、試行錯誤しつつタイムアライメントなどの調整が上手くいけば、両スピーカーの優れたDNAを掛け合わせた新しい音が創造できるかもしれないと、これには結構ワクワクしている。

この距離でタイムアライメント調整ができるかな:


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