#409 ささやかに楽しむW杯2018

2018/07/14

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 早いものでこのテーマでモノを書くのも、肺炎で臥せっていた2010年を除いて4回目である。(過去の記事はこちら、2002年2006年2014年

 今回の開催国はロシアで、国内西側の12か所のスタジアムで熱戦が繰り広げられている。広い国土にちらばるスタジアムを転戦する代表たちは大変なことであると想像する。チームによってはグループステージの3試合だけで7000kmもの移動を行わなければならないところもあったらしい。そして緯度や経度の差もあることから、気温差もあれば時差もある。選手の体調管理がこれまで以上に重要になっていたのではないかと思われる。

 そして今回の大会からは「Goal Line Technology」という、ゴールの判定を機械が行い主審に伝えるというシステムと、複数のビデオによりファウルやオフサイドの有無などを確認できる「Video Assistant Referee(VAR)」制度が導入されている。人間の審判だけでは誤ったり見逃したりされる可能性のあるゴール判定や反則を見逃さないためのもので、スピードの速いサッカーにおいて公正なジャッジが行われるという意味では歓迎すべきものである一方、試合が中断する回数や時間が多くなった結果、アディショナルタイムが長くなったり、PKの機会が増えたりと言ったようなことが目につく大会ではある。

 試合が行われているロシア西部は、日本時間からは4時間から7時間の遅れ。ドイツ大会の時もそうであったように、試合は日本時間の深夜から未明にかけて行われることが多い。ライブで試合を見ている人たちは寝不足の日々が続いていることであろう。私などは相変わらず子供よりも早く寝てしまうほどで、恥ずかしながら実際の試合はほとんどライブで見ていない。せいぜい、朝5時ごろ目が覚めた時に、遅い試合の終了間際のシーンをライブで見たり、すべて終わった後でW杯公式ページを開いて試合の概要を動画でチェックする程度である。

 NHKは今年12月から、8Kという高解像度の放送を開始するとのことで、その宣伝とばかりに、都内数か所で8K映像による試合の様子(主に録画)を放映している。私もその一つ、日本−コロンビア戦の録画を都内で見た。既に終わって結果がわかっている試合なので、誰が何分に得点したかということまですべてわかった上で見ていても、両チームの真剣勝負の映像にはつい見入ってしまう迫力があった。だからと言って8Kテレビを買おうということにはならないと思うけど。

 さて我らが日本代表は、W杯初出場からの6回連続出場(イングランドと2位タイ記録)というのをなし遂げて、見事に本大会へ出場したわけだが、大会の2か月前に監督の交代劇があったり、選抜されたのが前回大会の主要メンバーから代わり映えしなくて「おっさんジャパン」とか「忖度ジャパン」とか、ひどい言われようであったりして、大会前は国内でさえあまり期待されていない状況であった。

 しかし蓋を開けてみれば、グループステージ第1戦では、前回大会で1-4と大敗したコロンビアに2-1で堂々勝利し、続く第2戦も、2度のビハインドを跳ね返してセネガルに2-2で引き分けてグループ首位をキープ。第3戦こそポーランドを相手に点が取れなかったものの、勝ち点で並ぶセネガルも敗勢であったため、試合終盤の勝利を放棄した試合運びに賛否両論あったものの、結果として両者同勝点同得失点差同得点直接対決引き分けで、フェアプレーポイントの差で日本は辛くもセカンドステージに進出できたのであった。

 ノックアウトステージの初戦はG組1位のベルギーで、後半に日本が早々に2点を先制した時には、これはひょっとして初の8強になるのではないかと思ったりもしたが、そこはFIFAランク3位のベルギー、恐るべし底力で追いつき、最後はアディショナルタイムで逆転という幕切れ。こんな展開を大会前には誰も予想できなかったと思うし、全体としては大健闘であったと言えるのではないだろうか。何しろスペインもポルトガルもアルゼンチンも8強に進めないほどの厳しい戦いなのだから、やはりW杯は甘くない。

 これを書いている時点で、残るはベルギー対イングランドの3位決定戦と、フランス対クロアチアの決勝戦を残すのみ。1ヶ月間世界中を熱くしてくれた選手たちの健闘を称えつつ、最後に相応しい戦いぶりを、ささやかに楽しみつつ期待するものである。


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