△ 「背中のイジン」シーン30


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病室。周人、心臓のマッサージを受けている。

道子 「周人!」
典子 「しっかりしろ!」
おじい 「戻れ!戻って来い!」

周作達、実験室に登場。浜崎と満に抱えられ、周作、実験室に横たわる。

浜崎 「ここでいいのか?」舞台写真
周作 「はい。ありがとうございます…」
「周作さん。」
周作 「あ…だんだん消えてきました。」
花音 「周作さん!!」
周作 「皆さん、お世話になりました。…そうだ花音さんこれを…」
花音 「(周作からロケットを受け取り)これは…」
周作 「やはりそれ…あなたが持っているべき物でした…」
花音 「ごめんなさい。あなたを助けてって言われたのに…結局何も出来なかった…」

周作、消えてゆく。

周作 「いえ…助かったんですよ…私は…助かったんです。」

涙する花音を観て周作が声をかける。

周作 「花音さん…」

周作、満面の笑みでピースし

周作 「チーズ!!」

花音、精一杯の笑顔でピースし

周作 「…チーズ!!」

周作うなずき、笑顔のままゆっくりと消えてゆく。
病室。心電図の心臓停止音が響く。病室の全員、肩を落として動かない。
森島が心電図のスイッチを切り、音が止まる。そこへ、潤が帰ってくる。

「周人!俺の身代わり作戦、成功したぞ!おい…」

潤、室内の状況に気付く。

「周人…?」

実験室の全員も入ってくる。

花音 「周人!」
「周人君は?」

森島、首を振る。

「…そんな…」
花音 「周人?…周人!!」舞台写真
美香子 「周作さんは?」
「今…消えたんです…なのにどうして!」
森島 「え?周作さんが…ちょっと待てよ!そんなことって!」
道子 「どうして…どうしてこんなことに…」
おじい 「ワシだ。全てはワシのせいだ!!」
花音 「私が先祖の霊なんて呼び出そうとしたから!」
「それを引き受けたのは僕だ!!」
道子 「違うわ。誰も悪くない。誰も悪くないのよ!」
典子 「じゃ、なんで…二人とも助けようとしてたのに、なんで二人とも死んじゃうんだよ!」
「なんだよ、これ。意味分かんねぇよ!」

典子が周人の亡骸に近づき、

典子 「おい、起きろよ!周人!病院のベッドで寝るなって何度言ったら分かるんだよ!(ベッドの脇にあったハリセンを取って周人を叩く)」
道子 「典子」
典子 「寝るならてめえの部屋で寝ろって言ってんだろ!起きろよ!起きろよ!!(また叩く)」
道子 「典子やめて!」

周人が動く。

花音 「待って!今。」
「え?」
周人 「ううっ…」
おじい 「まさか。」
道子 「周人?」
典子 「周人!」舞台写真

全員が周人を囲み、周人の名前を呼ぶ。
そして周人は目を覚まし、ゆっくり起き上がる。

周人 「うるせぇな、周人周人って。サッカーの試合じゃねぇんだからよ。」
道子 「周人!(周人に抱きつく)」
周人 「痛ぇよ、母ちゃん!!」
典子 「我慢しろよ(姉心で叩く)」
周人 「痛ぇよ、姉ちゃん!」
おじい 「良かった、本当に良かった!」
周人 「そうだ、周作は?」

全員、シーンとなる。満がゆっくりと周人に近づき、背中を叩く。

「お前のここにいる。」

周人、事情が分かり、うつむく。が、すぐに笑顔になり、自分の背中に向かい、

周人 「おかえり。ひいひいじいちゃん。」

その場の全員が癒されたような笑顔になる。ゆっくり暗転。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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