トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン29|再演版 【公演データ】
パトカー車内。
満 「どうして実験室に?」
周作 「私は即死ではなく、すぐにうちの病院に運ばれたんです。あの場所は昔、うちの外科病棟でした。私はそこで…」
花音 「刑事さん、どこか救急病院へお願いします。」
周作 「駄目だ!うちに戻ってくれ。」
花音 「駄目よ!死んじゃう!」
浜崎 「家に戻す。」
花音 「どうして?!殺す気なの?」
浜崎 「俺はその男に借りがあんだ。」
花音 「借り?」
満 「どういう事です?」
浜崎 「八十年前、アンタが事故った時助けた子供、その子は俺の…親父だ。」
花音 「えっ?」
浜崎 「つまりアンタがいなかったら今の俺は存在しない。だから偽者なら絶対に許せねぇ。だけどアンタは…」
満 「なぜ本物と?」
浜崎 「信じきってるわけじゃない。だが、絶対に本物だと言い切る人がいてな。」
花音 「誰が?」
浜崎 「うちの親父だ。御年八十七。まだ健在だ。」
周作 「そうでしたか…あの子がまだ…」
浜崎 「あんたの写真を何も言わずに親父に見せた。いきなり言ったよ。『瀬名周作だ』ってな。」
全員ハケる。
(作:松本仁也/写真:広安正敬)