トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン21|再演版 【公演データ】
明転。瀬名医院の病室。満から周人と周作の話を聞き、全員沈んでいる。
森島 「なんだよそれ…」
花音 「どうして…」
典子 「ホントにどっちも助けるって道はないの?」
満 「その武者の話ではそういう事に。」
典子 「そいつが嘘ついてるって事は?」
満、首を振る。
おじい 「別の人間が身代わりになる事は出来んのか?」
森島 「先生。」
おじい 「ワシの命ならいつでもくれてやる!」
道子 「それは私だって出来ればそうしたい。」
満 「問題は、彼らが『守護霊』と、『それを宿す人間』だという事なんです。」
典子 「他の者の命じゃ何の代わりにもならない。」
道子 「私は信じない。」
典子 「お母さん。」
道子 「私は医者よ。そんな事認められると思う?」
森島 「そうですよ。このまま黙ってどちらかの死を選ぶなんて医者のやる事じゃない。」
周人 「そうか。オレ、死ぬのか…」
道子 「周人。」
周人 「周作は?」
満 「僕の家だ。」
周人 「一人で?」
満 「いや、さっき妹が戻ってきてな。彼を見てくれている。」
周人 「そう…花音。」
花音 「何、周人?」
周人 「周作のところに行ってくんないか?」
花音 「え?」
周人 「あいつきっと落ち込んでるからさ。」
花音 「…うん…分かった、行ってくる。」
おじい 「とにかく、医者としてやれるだけの事はやろう。」
道子 「どちらも死なせやしない。」
(作:松本仁也/写真:広安正敬)