△ 「背中のイジン」シーン11


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このシーンのみ、ナレーターとキャストが入れ代わり立ち代わりになる。

周人 『この日から文字どおり彼の第2の人生が始まった。外出をしばらく控えるかわりに昼間はあらゆる本を読み…』舞台写真
周作 「周人くんが言ってたのはこのマンガのことですね。秀作って出て来ますし。」
周人 『とりわけ気に入ったテレビに見入り…』
周作 「緑黄色野菜で血液サラサラね。みのさんは博学だ。」
周人 『そして毎晩のように皆が集まり、彼の話に聞き入った。』
花音 「え?タクシーのことは『円タク』って言うんじゃなかった?」
森島 「それは昭和初期の話だよ。」
周作 「私の時代は『辻待ち自動車』と言いました。でも中には営業許可のない『朦朧自動車』ってのがいまして、一度間違ってそいつに乗ってしまったんですが、その車、速度の出し過ぎでまんまと赤バイに捕まってくれたんで、助かりました。」
周人 「赤バイ?」
森島 「白バイの元祖は赤いバイクだったそうだ。」
周人 「なんだ。大正時代は郵便配達が警察もやってんのかと思った。」
花音 「ありえないって。」
おじい 『我々が彼の話にのめり込んだように、彼もまた我々の話にのめり込みました。』
周作 「文豪の漱石氏がお札になっているのも驚きですが、あの野口先生が新しいお札にねぇ。」
森島 「周作さんだって顔写真が残っていればお札になってましたよ。」
周人 「オレはお札になんなくてもいいから、お札が欲しい。」
森島 「またかよ。」
花音 『不思議な感覚でした。歴史上の偉人とこんな形で話ができるなんて。まるで夢のような一時でした。そして彼も、八十年後の未来人との会話をとても楽しんでいるようでした。』
周作 「(携帯を持ち)ホントに凄いです。こんな小さい中に何から何まで入っている。」
周人 「しかもオレのはカメラつき。」
周作 「写真機もですか?」
「最近のは活動写真まで撮れるんですよ。」舞台写真
周作 「いったいどういうカラクリなんです?」
花音 「そうだ、写真撮りましょうよ。」
周作 「いいですね。撮りましょう、撮りましょう。」
おじい 「ワシのデジカメ使おう。はい、並んだ並んだ。」
周人 「周作、そんな堅くならない。もっとリラックス、リラックス。」
周作 「なんか久しぶりで、緊張しますね。」
おじい 「撮るぞー!ハイ、チーズ!」
周人 「チーズは古いよ、じいちゃん。」
周作 「なぜ、チーズと?」
森島 「チーズのチーで撮ると笑顔で写るんですよ。」
周作 「チーーー。あ、なるほどね。じゃあ、この2っていうのは?」
花音 「あぁ、これは2じゃなくてピースよ。」
周作 「ピース?」
おじい 「確かイギリスのチャーチルがやったんじゃなかったか?」
周作 「チャーチルって、あの英国海相の?」
おじい 「そうそう、大平洋戦争で首相になってね、彼の勝利のサインがピース。」
森島 「いや、チャーチルのはビクトリーのブイです。写真を撮る時のピースサインが定着したのは確かベトナム戦争の反戦運動をしていた若者からじゃなかったかな?」
花音 「知ってた?」
周人 「知らねー」
周作 「森島君、博学ですねえ。みのさんのようだ。」
森島 「みの?」

カメラを持って奥にハケていた満が戻って来る。

「はい。出来ましたよ。」
周作 「えっもう?こりゃほんとに凄い。」
森島 『彼の事を大学病院の仲間に話した。もちろん瀬名周作としてではなく、知り合いとしてだ。みんな彼に興味を持ち彼にもその事を話してみると…』
周作 「是非会って現代医療の最先端を見せて頂きたい。」
森島 『とのこと。彼が早死にしなければ、医学界は変わっていただろうと言われている。が、彼が蘇った今、今度こそ医学界の未来を変えてしまうかもしれない。』
『そんな中、私は彼の特殊な力についてみんなに公表した。彼は私と同じく、強い霊の姿を見る事が出来る。こんな突拍子もないはずの事をみんなはすんなり受け入れた。八十年も経って蘇った人間を目の前にして、もはやどんな事にも驚かないといったところか?』
周作 「私にもあなたのような力が?」
「えぇ。霊媒能力や悪霊払いの力があるはずです。」
周作 「悪霊払い…」
「万が一悪い霊が迫って来たら(悪霊払いのポーズ)こうして悪霊退散と唱えて下さい。」
周作 「こうかな?」
「いや、こうです。」
周人 『そして二週間程経ち、いよいよ周作が初外出することになった。』
おじい 「どこか行きたいところありますか?ディズニー・シーとか。どこでもおつき合いしますよ。ディズニー・シーとか。」
周人 「結局、自分が行きたいんだろ。」
周作 「そうですね、とりあえずご近所とそれと銀座方面。」
おじい 「行きましょ行きましょ。私ねいい店知ってんだなこれが。」
森島 「先生は駄目ですよ。」
おじい 「え〜なんでよ。」
森島 「実験装置の修理今日明日中に進めないと、さっ行きましょう。」
おじい 「え〜え〜え〜え〜…」

おじい、森島、ハケる。花音、入ってくる。

花音 「おまたせー(周作の腕をとる。)」舞台写真
周人 「花音…」
花音 「いいじゃない今日くらい周作さんとデートってことで」
周作 「でーと?」
周人 「別にいいけど…」

典子、入ってくる。

典子 「おまたせー(満の腕をとる。)」
周人 「待ってねえよ。なんで姉ちゃんも行くんだよ。」
典子 「いいじゃん。いいよねー、みっちゃん?」
「えっ?いいですけど。」
典子 「ダブルデート、ダブルデート。さっ行きましょ!」

周作、花音、典子、満、ハケる。

周人 「ダブルデートって…あまってんじゃんオレ。」

周人、ハケる。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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