2023年11月の映画  戻る
鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 
水木しげる生誕100周年記念作品
2023年 日本 105分 東映アニメーション
メモ 2023.11.30(木)大阪ステーションシティシネマ
あらすじ
山の奥深く廃村となった哭倉村(なぐらむら)に立つ鬼太郎と父(目玉おやじ)、猫娘。鬼太郎の父は68年前にこの村で起こったことを語る
感想
「君たちはどう生きるのか」を見て”2時間の虚無”になったちびさぼが「今年みた映画でいちばんよかった」「正直、ジブリもこれくらいできひんか!!????って マジで」「水木しげるが戦争を描くからこその迫力ってのはあるけど」という押し映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を見る。
まずアマプラで第一話無料の「墓場鬼太郎 鬼太郎誕生」を見てから映画を見に行く。
(アニメは第六期の第一話とか。この映画はドラマの前日譚なので見ていてよかった)
 
現在から昭和三十一年という東京タワーができる前でまだ敗戦が色濃く残ってた日本、そしておどろおどろしい因習にとらわれた哭倉村(なぐらむら)へと移る舞台とそれぞれの人物がよく描かれていた。南方の戦地からなんとか帰還した水木も黒々したものを抱かえていて、搾取する側にのし上がる野望を持っている。
 
小さい頃近所の映画館に父、兄と怪獣映画を見に行ったんやけど、どうやら二本立てやったらしく兵隊さんが雨の中を行軍し新兵さんはなぐられ自転車こぎとかさせられ女のかっこさせられ嘲られ、耐え切れずとうとう銃で自殺を図るんやけどうまくいかなくてやめよと思った時に暴発してしまう。
という映像に震え上がる(後年、「人間の条件」の第三部の冒頭らしいと知る)
その時なんの怪獣映画を見たかなんて憶えちゃいない。
というわけで漫画雑誌に載っていた水木しげる先生の漫画は妖怪よりも兵隊さんが出てくる時が怖かった。
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理想郷 AS BESTAS
第37回ゴヤ賞最優秀映画賞
第35回東京国際映画祭グランプリ
2022年 スペイン/フランス 138分 
監督 ロドリゴ・ソロゴイェン
脚本 イサベル・ペーニャ/ロドリゴ・ソロゴイェン
メモ 2023.11.23(木)シネ・リーブル梅田
あらすじ
フランス人の中年夫婦アントワーヌとオルガはスペインの片田舎に移住した。元教師の夫が空気と風景に惚れて、らしい。
有機農業で育てた野菜を町の市場で売り生計を立て始める。
村は9家族ぐらいの過疎、もちろん高齢化。そこに風力発電計画が持ち上がったとかで大金が襲い掛かる。村の投票は賛成6反対3だったらしい。
フランス人夫婦は風景と環境を守りたいと反対票を投じたが、それが隣人の兄弟の逆鱗にふれた。
感想
開発に反対したよそ者は村八分に会うのかなあ・・・と予想してたけど、警戒され冷遇されてはいたがそういう風でもなかった。
どこもかも坂ばかりの村で、フランス人夫婦の畑もゆるやかながら斜面、ふたりがしがみつくように耕している厳しい土地柄。
地の人たちは牛、ヤギ、ヒツジの放牧をしている。映画父/「パードレ・パドローネ」の世界なのだ。
いやがらせをする隣人に夫は戦い、「自分が得をするわけやない。お前たちは貰えるお金だけでこれから死ぬまで暮らせるのか? 
だいたい風力発電はノルウェーの会社が(自国で反対されているので)スペインに建てるので儲かるのは彼らだけだ」と説得するが、兄弟は耳をかさない。
 
ああ、これが養老先生の言う「バカの壁」かあ。
兄弟にとってはフランス人の何もかもが気に入らない。
よそ者なのも都会者なのも学があるのもお金を持っていそうなのも、だいたい結婚してて自分の女がいるし。
しかし夫に従順でおとなしそうやったこの奥さんは只者ではなかった。
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン KILLERS OF THE FLOWER MOON
2023年 米国 206分 
監督 マーティン・スコセッシ
原作 デイヴィッド・グラン  『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』
脚本 エリック・ロス/マーティン・スコセッシ
キャスト レオナルド・ディカプリオ(アーネスト)/ロバート・デ・ニーロ(アーネストのおじ・ウィリアム・ヘイル)/リリー・グラッドストーン(モリー)/ジェシー・プレモンス(FBI・トム・ホワイト)
メモ 2023.11.17(金)大阪ステーションシティシネマ
あらすじ
アメリカ大陸の先住民は白人に降伏し遠くの保留地に強制移住させられる。
そこは何もない荒野、のはずがオセージ族がミズーリーから追われ移住させられたオクラホマ州のオーセージ郡は1890年代に石油が噴き出す。
大金持ちになったオセージ族。だが白人支配者が指をくわえて黙って見ているはずはなかった。
オセージ族は学がない無能者で散財するだけだと、白人の後見人を必要とする法律を作る。
無能者とされた先住民は日々の家計のお金を受け取るのさえ、後見人に理由を説明しなければならない。自分のお金なのに。
そしていちいち「肉を買い過ぎだ」などと言われるのだ。
その上、白人と結婚した場合オセージ族ではない白人が遺産として土地を受け取れる法律まで作られる。先住民の土地なのに。
感想
100年ほど前の事件が忘れられ埋められた黒歴史。
それを掘り起し多くの人がほんの200分でエンタメとしてみれるように映像化した力。映画ってすごいな
欲深さと偏見が黒く滑稽に描かれ、じわじわした恐怖と共存している。賢いオセージ族はやられっぱなしやないの。
元はディカプリオがFBI役やったらしいけど、それやったらかわいそうな先住民を助ける白人の「アンタッチャブル」になるから、「あんたはいったい何がしたいの?」という筋も骨もおつむもなんもない男の役になったらしい。
FBI役は不気味さのあるジェシー・プレモンス。「バトルシップ」で一水兵ながら目立っていたひとで、ドラマ版「ファーゴ2」で共演したキルステン・ダンストと結婚しはったらしい。
もうひとつ悲しいのはオセージ族はお金が入ったことで白人の様な高カロリー食のとりことなり、糖尿病やら成人病に蝕まれはったみたい。アルコール依存の問題も起こる。
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私がやりました MON CRIME
2023年 フランス 103分 
監督・脚本 フランソワ・オゾン
原作戯曲 ジョルジュ・ベル/ルイ・ヴェルヌイユ
キャスト ナディア・テレスキウィッツ(女優のたまご・マドレーヌ)/レベッカ・マルデール(弁護士ポーリーヌ)
メモ 2023.11.8(水)大阪ステーションシティシネマ
感想
1935年のパリを舞台にしたフランソワ・オゾン監督作ブラックコメディ、原作は戯曲だそうです。
スクリューボール・コメディなのか舌をかむソフィスティケイテッド・コメディというか(違いがよくわかりません)
ビリー・ワイルダー監督の「ろくでなし」っていう映画がちょっとだけでてくる。「ろくでなし」のヒロイン役ダニエル・ダリュー(「5本の指」)はオゾン監督の「8人の女たち」にも出てはったけど2017年に100歳でなくなられたみたい。
 
若い主役ふたりは姫力全開で「災い転じて福となそうぜ」と飛んだけど、その斜め上を行く「私の犯罪よ(MON CRIME)」うば桜往年の女優がイザベル・ユペール。面白い。言っていることは正しいような正しくないような。まあ登場人物全て自分の理屈で行動してはるから。
もうひとつ楽しめたのはへっぽこ判事(ファブリス・ルキーニ)の犯罪再現脳内ドラマ。
そして、配管会社の成金社長ダニー・ブーン。このひと「パリタクシー」の運転手やったひとなの。びっくり(**)。最後のセリフは「配管修理してただけ」(笑)
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アステロイド・シティ ASTEROID CITY
2023年 米国 104分 
監督・脚本 ウェス・アンダーソン
原案 ウェス・アンダーソン/ロマン・コッポラ
メモ 2023.11.1(水)シネマート心斎橋
感想
『ヨーロッパ新世紀』が重かったので軽い映画をと思ったが、それはあさはかな考えで楽しいねんけど凝っていていささか難解。
 
「グランド・ブタペスト・ホテル」「犬ヶ島」のウェス・アンダーソン監督作品。アステロイドとは「星のような形」で金平糖みたいな形らしい。で小惑星の意味もある
「達者な役者をそろえ様々に意匠を凝らすと、何がいいたいの?の不条理劇も楽しく見れるんです。退屈しないんです」と言われているように感じる。
パステルカラーとモノクロ映像はティム・バートン監督の『シザー・ハンズ』みたいなノスタルジックさもある。
 
本作はおそらく三重の入れ子になっていて、舞台劇「アステロイド・シティ」はカラー、その劇の作家、演出家、役者のドキュメンタリーは白黒、そのドキュメンタリーを放送するTVも白黒(設定は1950年代だから)。そしてそれらをひっくるめて映画として私が見ている。
・・・考えてみると舞台劇と制作の舞台裏ドキュメンタリーは同時進行やから並列なのか。大事なひとが亡くなり主人公(ジェイソン・シュワルツマン)がショックを受けているのがシンクロしている。カラー劇がドラマで白黒ドキュメンタリーが舞台劇に見える様に作られているみたい。
 
ゾロゾロ登場する役者さんもそらまあ凄くて「この人わかる?」ってクイズみたい。TV番組の司会者は米国ドラマ『ブレイキング・バッド』のひと・・よね、としょっぱなからたいへん。苦戦する。
劇中のアステロイド・シティは、ダイナーひとつ、給油所兼整備工場ひとつ、10個のコテージがある人口87人の砂漠の町。観光名所は巨大なクレーターだけ。
近くで核実験が行われていて、コテージは舞台の書き割り風というか、映画インディ・ジョーンズの何作目かで(『クリスタルスカルの王国』やった)インディが核実験に遭遇し冷蔵庫に身を隠した実験用のペコペコの家に見える。宇宙人はサイレント映画「チャーリー・バワーズ」の栗人形みたい。ここ楽しい
マクベスの3人の魔女 ではなくちっこい三人娘たちに近寄って来る鳥が『ジュラシックパーク』のしょっぱなに登場する恐竜みたいでハラハラした。
映画についていけず頭がこんがらがっている中で、主人公の超秀才の息子が「北条時行」っ言う。誰? (検索したら南朝側で戦った鎌倉幕府北条氏の生き残りみたいです)
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