2022年10月の映画  戻る
ヴィーガンズ・ハム 
2021年 仏 87分
メモ 2022.10.29(土)シネ・リーブル梅田
あらすじ
今年もやってきました>”シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション”
行きがかり上、ヴィーガンを轢き殺してしまった肉屋は死体の始末をしている内に生ハムを作ってしまう
感想
例えば、
ティラノサウルスの血まみれのキバ、獲物に襲いかかる爪! 凶悪狂暴そうなツラがまえ!
比べて、ステゴサウルスとかブラキオサウルスとか草食系は性格が穏やで平和そう、、、、、って贔屓してんちゃう? 思い込みやわ
うちらは「教会でキリストの体を食べている」ねんよ・・・の映画 慣れってコワイ
 
カニバリズム、イラン豚、こんなに不謹慎でいいんやろか?(仏蘭西とうち) と思いながらも満員の映画館で見てしまいました。
見た後は、、、、なんでしょ、お肉が食べたくなる。
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夜明けまでバス停で 
2021年 日本 87分
監督 高橋伴明
出演 板谷由夏(北林三知子)/大西礼芳(店長・寺島千春)/三浦貴大(居酒屋のボン・大河原)/ルビー・モレノ(マリア)/片岡礼子/小泉純子/根岸季衣/柄本明
メモ 2022.10.27(木)なんばパークスシネマ
あらすじ
ジュエリー制作が本職の北林三知子は、それでは食べていけないので居酒屋の寮に住み10年パートで働いている。
ところが突如、コロナ禍で居酒屋は閉店、寮から退去となる。認知症の母の介護費用20万円を兄に送金した直後のできごとだ。
別れた夫の借金も払い続けていて貯金はあまりない。
感想
TVでは首相が「自助、共助、そして公助」と話す。自助っていつまでなの? 持ち金が0円になったら共助を求めるの?
主人公は公園の炊き出しにも大企業の若い人たちが企業の社会貢献と開いている仮設相談所にも飛び込むことができない。
今まで法を犯さず他人に迷惑もかけず、自分の力で生きてきたという自負があるからだ。
(おそらく主人公が知らぬ間に30年前ほどから、まじめにこつこつ働けば中流の生活が送れるという世界はしずしずと無くなっていってたらしい)
こうなんというのかな、別れた夫の借金もかぶるなんてちょっと身の程しらずじゃ? と思うところもあるりりしい主人公。
後半は、主人公北林三知子の怒りというより、映画製作者の日本政府の冷たさ、芸術への理解の無さ、社会の仕組みへの怒りが爆発。
だからといって「どういう施策がよかったのか」という踏み込んだ内容はない。
 
この映画を見てて思い出したのは、淀屋橋の地下道にいてはった女の人。
10年くらいずっと、邪魔にならないようにあちらこちらの柱の陰でカートをそばに置いてうずくまってはって。
できるだけ身ぎれいにしてはって頭はそり上げてはった。
年齢はよくわからないけど60代後半から70代かな。
すぐそこに大阪市庁舎があり、市役所のひとたちも毎日通勤してはるのに、なんでなんかな。なんでほっときはるんやろ。
もしかしたら夜は家に帰りはるんやろか理由があって通ってはるんかな と思ってた。
ところが5年くらい前から見かけなくなって。今回ネットで調べて見たらブログに書いてはる方がいてた。
2016年の6月に施設に引き取られはったらしい、とか。気にしてた方たちが「市役所に問い合わせに行った」とか「お金を少し渡した」
とか投稿してはって。何もしなかった私は冷たかったと思う。
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声/姿なき犯罪者 
2021年 韓国 109分
監督 キム・ソン/キム・ゴク
脚本 ペ・ヨンイク
キャスト ピョン・ヨハン(ソジュン)/キム・ムヨル(クァク)
メモ 2022.10.20(木)シネマート心斎橋
あらすじ
元刑事のソジュンは今日もせっせと建設現場で働いている。美人の伴侶も働きものだ。もうすぐ昇進もできそう
そこに襲いかかった災難。災難というもののこれは悪人が起こした犯罪だ
「騙される方がアホ」といわんばかりのひとの感情につけこんだ卑劣な行為に怒りが爆発した
感想
電話の向こうに隠れて犯す犯罪「振り込め詐欺」
主人公が巻き込まれたのは、個人を調べつくされ一本釣りみたいな仕込まれた詐欺やった。巧妙やわ。
潜入した組織は不特定多数に総当たりするわけではなく、その国の世相、国民性に応じた手口で、同じような事情の人たちの名簿を手に入れシナリオを作る。そしてせいので始まる「考える時間を与えない短時間勝負」・・・と頭脳と手足の仕組みがシステム化されている。
これをビジネスというなら労働集約型産業なの。設備があまりいらないからすぐに移動できる。
使い捨ての食詰めたっぽい人を大勢を集めてチームを組ませ、プラスティック椅子に座らせ一日中詐欺行為。イケイケ競技のノリで悪い事しているというより役者みたいになっている。いわばラジオドラマの声優みたいに。
 
スリリングな展開で、エレベーターシャフトの中での攻防が最大の見どころ。そういやこの人現場監督やったな と納得の脚本が巧みやわ。
 
心がけること 知らない人からの電話には出ない お金の話になったらすぐに切る
 
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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 
2022年 日本 82分
監督 竹林亮
脚本 夏生さえり/竹林亮
出演 円井わん/マキタスポーツ(部長)
メモ 2022.10.18(火)TOHOシネマズ梅田
あらすじ
陽がのぼり月曜日の朝、孫請けの広告代理店の窓に鳩が激突する
金曜日に停電があり保存してなかったPCのデータが飛び、週末出勤徹夜明けの会社は屍累々
見習社員のふたりが先輩社員に訴える。「一週間が繰り返されていてタイムループにはまっているんです」
感想
「涼宮ハルヒの憂鬱」の「エンドレスエイト」(夏休みが終わらない)と同じタイムループ物。
寝不足と長時間労働の疲労からゾンビ状態の毎日で同じ週が繰り返されていても、気が付かない。
「これ、前にもあったんじゃ?」と気づいたペーペー社員が部長に訴えても相手にされないだろうと、
企画+営業5人、事務方1人、部長1人の総勢7人の小さな所帯ながら、ピラミッドの底辺からひとつ上に順々に説得していくという”ボトムアップ”作戦が始まる
日本の組織構造への皮肉がきいている
面白かってんけど、、、業界としてブラックなのは仕方ないのかな。映画業界も漫画界も同じなのかな。
恐ろしいのは出しても出しても案が「もう一歩」とダメ出しの連続なこと。
働き方改革で電通は夜ビルに電気がついているのはまずいと、社員は早朝出勤しているって噂も聞くし。
ピラミッドのトップ企業がそんなんなのかな。
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チャーリー・バワーズ 発明中毒篇 Charley Bowers
 
 
 
 
 
 
 
 
 
1917〜1928年 米国/仏蘭西
監督・出演 チャーリー・バワーズ
メモ 2022.10.14(金)シネ・ヌーヴォ九条
感想
サイレント映画をシネ・ヌーヴォ九条に見に行く
『とても短い昼食』(1917年 6分)『オトボケ脱走兵』(1918年 6分)のアニメーションと、
『たまご割れすぎ問題』『全自動レストラン』『ほらふきクラブ』『怪人現る』のストップモーション・アニメーションと実写の融合映像
のチャーリー・バワーズ監督、主演の6作品
 
シュール(不条理・奇抜)で狂気さえ感じられる 
妄想とイマジネーション(想像・空想)の炸裂
異能の人なんかな
『ほらふきクラブ』と『怪人現る』が面白かった
見ていると記憶が掘り起こされ『怪人現る』は昔に見た映像があったような気がする
バスター・キートンの命知らずの活劇・・ではなく、レイ・ハリーハウゼンのような壮大さでもない
「フランケンシュタインの花嫁」のロマンチックさとも違う
手造り風のちまちました映像なんやけど、その手間と工夫が100年を経ても楽しい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『怪人現る』のノミだかなんだかわからないしスコットランドの民族衣装みたいなのを着たヤツは何者なん
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ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス湖畔通り23番地 
1975年 198分 ベルギー
メモ 2022.10.6(木)シネ・ヌーヴォ九条
監督・脚本 シャンタル・アケルマン
キャスト デルフィーヌ・セイリグ(「去年マリエンバートで」)
感想
ベルギーのシャンタル・アケルマン監督作品(1950-2015)
 
一日目の夕刻から三日目の夜まで、四十路近くと思われる女性の行動を定点カメラが記録する。
主人公は豊満な胸の持ち主でもあり年増ながらとてもきれいなひとだ
一日目の夕食を息子と食べながら「先週より水を少なくしたの」と話すところで「この家は曜日で夕食の献立が決まっているんやわ」とわかる。
一日目は肉の煮込み、二日目はカツレツ、三日目はミンチ肉と玉ねぎのオーブン料理のようだった。
規則正しく家事をこなしている姿を見てる内に、だんだん節約主婦というより日銭で生活しているこの家は危機的状況なんと違うやろかと思えてくる。
ベットカバーの上に敷くバスタオルがほつれてくたびれている。
バスタオルはなかったことにするためか、ふた付きの洗濯物入れにいれられる。洗濯は何曜日にするんかな。
 
夫が亡くなって6年がたち、預貯金も底をつき古いものを大事に使って表面は取り繕っているが、内心は追い詰められている。
唯一の贅沢はカフェでコーヒに砂糖を入れて飲むこと。
いくら節約しても、郵便局か銀行で水道代もガス代も電気代も払わなくてはならない。
息子は窮状を知らずか、毛糸がたくさんいるのに丈の長いセータがいいと言うわ、昼飯代をもっと欲しいと言うわ。
一日の終わりにはベルギーチョコを渡す。これも習慣。
それでも、思春期の息子が寝る前に語る言葉から何かを感づいているみたい。
 
主人公は日々のスケジュールを守ることで、今までと何も変わっていないと思い込もうとしている。ひとつ日々の習慣が増えただけ。
が、二日目に接客が長引いたせいでじゃがいもが茹ですぎになってしまう。
「ミルクを入れてポタージュスープにするのかな」と思っていたら、崩れたじゃがいもは捨て店に買いに行ってまた蒸かしいもを作り始める。
献立は変えてはいけないものらしい。
 
自分の意見を言うのは、本を読みながら夕食を食べる息子に「食事に集中しなさい」と言うところと、二日目にじゃがいもを茹でなおしたせいで夕食が遅くなったけれど「(いつも通り)散歩に行きましょう」と言う二か所だけ。ふたつとも毎日の決まりごとになっている。
買い物の間、やあこを預けに来る近所の主婦の取りとめのないどうでもいい話も黙って聞いている。
カナダにいる妹にも息子にも誰にも、心の内を明かさない。
 
三日目、息子はお昼ご飯代を持って出たんだろうか? もう帰ってこないかも。
ボタンは見つからないしスケジュールもおして心がざわついているのに、カナダにいる妹はどこに来ていったらいいのかわからないやたら派手なブラウスを送ってくるし、客はいらんことに時間をかけるし、終わってもすぐに帰らないみたい。またじゃがいもが茹ですぎになってしまう。ああまだ皮も剥いていなかった。それでも帰ってと言えない。これはないはずのものだから。
 
193分ほぼ会話がないのに、これだけのことを想像してしまう映像作品。すごい。赤ん坊をあやしているシーンに肝が冷えた。
電話は誰に助けを求めようとしたんやろう。
題名の「ブリュッセル1080、コメルス湖畔通り23番地」は新聞広告と思う。
 
岩下志摩さんが昔自分にとって一番難しい演技は主婦役で台所で包丁を使うシーンと言われていた。
夫の篠田監督が「きみは女優なんだから」と一切の家事禁止やったらしい。
岩下志摩さんほどやないかもしれんけど、女優さんが毎日やってますわと朝コーヒを作り、ベットメイクをし、洗い物をして買い物に行き、バスタブを洗い、じゃがいもの皮をむいて夕食を作る。主婦の鏡みたいに家事をこなしていく演技はたいへんやろなと思う。これもすごい。
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