5. 四つの真理 (四聖諦)
d. 苦の消滅への道の真理
[ENGLISH]
苦の消滅への道の真理とは何でしょう。それは八正道のことです。つまり、正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定のことです。
では、
正見 (Samma-ditthi: Right View or Understanding) とは何でしょう。苦の理解、苦の原因の理解、苦の消滅の理解、苦の消滅への道の理解、これを正見と呼びます。
では、
正思惟 (Samma-sankappa: Right Thought) と何でしょう。肉欲からの解放へと導く思考、悪意のない思考、残虐さのない思考、これを正思惟と呼びます。
では、
正語 (Samma-vaca: Right Speech)
とは何でしょう。嘘、
陰口
、悪口、
うわさ話や無駄口
、これらを控えること、これを正語と呼びます。
では、正業 (Samma-kammanta: Right Action) とは何でしょう。
生き物を殺さない
、
盗みをしない
、みだりに
淫欲
にふけらない、これを正業と呼びます。
では、正命 (Samma-ajiva: Right Livelihood) とは何でしょう。
間違った手段で生計
を立てずに、正しい手段で生計を立てて生きていきます。これを正命と呼びます。
では、正精進 (Samma-vdyama: Right Effort)とは何でしょう。
修行者は、まだ心に生じていない悪意や不健全な状態が生じないように、意思を持ち、努力し、気力を奮い、心を傾け、熱心に取り組みます。
修行者は、心に生じた悪意や不健全な状態を放棄するために、意思を持ち、努力し、気力を奮い、心を傾け、熱心に取り組みます。
修行者は、まだ心に生じていない健全な状態が生じるように、意思を持ち、努力し、気力を奮い、心を傾け、熱心に取り組みます。
修行者は、心に生じた健全な状態を維持するために、その健全な状態が消えずに、広がり、大きく成長し、完全なものになるように、意思を持ち、努力し、気力を奮い、心を傾け、熱心に取り組みます。
これを正精進と呼びます。
では、正念 (Samma-sati: Right Mindfulness)とは何でしょう。
身体は身体にすぎない
と怠ることなく、きちんと理解し、気づき、繰り返し認識しながら生きるのです。このようにして、この世での強欲や憂いを遠ざけるのです。
感覚は感覚にすぎない
と怠ることなく、きちんと理解し、気づき、繰り返し認識しながら生きるのです。このようにして、この世での強欲や憂いを遠ざけるのです。
心は心にすぎない
と怠ることなく、きちんと理解し、気づき、繰り返し認識しながら生きるのです。このようにして、この世での強欲や憂いを遠ざけるのです。
心の中味は心の中味にすぎない
と怠ることなく、きちんと理解し、気づき、繰り返し認識しながら生きるのです。このようにして、この世での強欲や憂いを遠ざけるのです。
これを正念と呼びます。
では、正定 (Samma-samadhi: Right Concentration) とは何でしょう。
肉欲や不健全さから距離を置いた修行者は、
一次思考と二次思考
のある第一の
禅定
に到達し、そこにとどまります。そこには
(五つの) 障害
から距離を置くことで生じる歓喜と安楽があります。
一次思考と二次思考が弱まるにつれて、修行者は、第二の
禅定
に到達し、そこにとどまります。そこには内なる平静と、一点となった心があります。一次思考と二次思考がなく、集中から生まれた歓喜と安楽があります。
歓喜がなくなると、気づきと正しい理解をともなった平安にとどまり、心身に安楽を経験します。修行者は、第三の
禅定
に到達し、そこにとどまります。ここに到達した者は、平安と気づきを得た、安楽にとどまる者として聖者たちに称賛されます。
安楽と苦悩から距離を置くことで、快楽と苦痛は消滅しているので、第四の
禅定
に到達し、そこにとどまります。平安が生む純粋な気づきの状態です。
これを正定と呼びます。
これが苦の消滅への道の真理と呼ばれていることです。
このように、自分にとって心の中味は心の中味にすぎない、わたしのものでもなく、わたしでもなく、自分でもなく、現象にすぎない、といつも感じて生きるのです。
他人にとっても
心の中味は心の中味にすぎない、といつも感じて生きるのです。
自分にとっても他人にとっても
、心の中味は心の中味にすぎない、といつも感じて生きるのです。
心の中味が存在する原因と、実際に心の中味が出現するのを、いつも感じて生きるのです。心の中味が存在する原因と、心の中味が実際に消滅するのを、いつも感じて生きるのです。心の中味が実際に出現し、実際に消滅するのを、
原因
とともに、いつも感じて生きるのです。
つまり、魂でもなく、自分でもなく、わたしでもなく、心の中味のみが存在するという事実を、はっきりと自覚するのです。この自覚が、洞察や気づきを着実にもたらすのです。修行者は、渇望や
間違ったものの見方
から距離を置き、世の中の何ものにも執着しないで生きるのです。
* (注 )
これが四つの真理は四つの真理にすぎないと、いつも感じて生きる方法なのです。
(苦の消滅への道の真理 了)