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アンサンブル・アメデオ 第16回定期演奏会
パンフレットより

Ensemble Amedeo The 16th Regular Concert
ロシア音楽の夕べ
2000年1月22日(土)
於:ティアラこうとう
 


曲目解説

第2部:ロシア5人組の肖像

◎本日演奏する曲目について

歌劇「ホヴァンシチーナ」前奏曲 M.P.ムソルグスキー(編曲 小穴 雄一)
 歌劇「ホヴァンシチーナ」は、「ポリス・ゴドゥノフ」に続いて書かれた大作で、「民衆音楽劇」と呼ぶことができます。 スターソフの提言により、史実に基づいて着手されましたが、未完成のままで終わりました。これをリムスキー=コルサコフが補足して完成させました。この歌劇は、ホヴァンスキーの乱と呼ばれる1682−98年のモスクワ銃兵隊反乱の史実によったものです。ストーリーは次のようなものです:2人のホヴァンスキー公父子が、若いピョートル皇帝に対する陰謀をめぐらして、ロシア皇帝の位を奪い取ろうという計画を立てました。これを耳にしたピョートル皇帝は、この事件全体を侮辱的に一蹴して、「ホヴァンシチーナ」(ホヴァンスキーのやつら、の意味)という一語で片づけ、関係者に死刑(公衆の面前で絞首刑)を命じました。また、ホヴァンスキー公を支持した民衆たちは、ピョートル皇帝の軍隊に撃退包囲され、逃げ場をなくした彼らは自らの陣営に火を放ち、燃えさかる炎の中で最後の讃歌を唱和しながら自滅していきました。この歌劇には、ピョートル皇帝の時代の農民達がつねに苦しんでいる姿が描かれています。

 この前奏曲は、「モスクワ河の夜明け」の別名があり、簡潔かつ荘重な美しさに満ちた曲です。曲はまず、ギターが奏する河波のようなアルペジオのppの動機に導かれて、オーボエの印象的な主題が流れてきます。モスクワの夜明けを連想させるこの旋律はまだ眠りを保っています。この主題こ似た旋律が鳥の声をはさんで繰り返されますが、やがて主題の展開とともに、マンドリンの上行音階が朝の日覚めを促します。次に曲はpiu mossoに入ってマンドロン・チェロとクラリネットによって主題が現れ、この主題の力強い表現がマンドリンに引き継がれて次第に活気を帯びてきます。オペラでは、この主題が続くうちに幕が上がり、赤の広場の場面があらわれます。次いで、2分の2拍子に変わると、主旋律はフルートとマンドラで展開されていきます。曲の終わりでは変二長調に変わり、主題は静かに断続しながら消えていきます。


ポルカ M.A.バラキレフ(編曲 小穴 雄一)
 ポルカとはチェコの急速な2拍子の舞曲のことで、1830年頃にチェコ地方でおこり、すぐにヨーロッパ全体に広まったそうです。本来のものは「早いポルカ」と言い、ゆるやかなものを「フランス風ポルカ」と言います。この曲はもとはピアノのために書かれた小品で、今回はそれをマンドリン合奏用に編曲したものを演奏します。この曲は4分の2拍子、ホ短調で、(A-B-A)-(C-D-C-D-C)-(A-B-A)-Codaという複合3部形式の曲であると考えられます。中間部ではホ長調に転調しています。6度の跳躍と音階的な動きとが組み合わさった短い動機で曲全体が貫かれており、調性を変えることによって色彩感を出しています。フランス音楽の影響を強く受けたバラキレフの作品らしく、フランス的な物憂い感じを想起させますが、あるいはヨーロッパ・ロシアの冬の曇り空のような情景の方がふさわしいのかもしれません。


弦楽四重奏曲第2番より第3楽章「夜想曲」 A.P.ボロディン(編曲 小穴 雄一)
 1881年の夏、ボロディンは1年前から構想を練っていた弦楽四重奏曲第2番を作曲しました。彼にとって大切な日、すなわち、20年前にハイデルペルクで彼が妻のエカテリーナに愛を告白した8月10日までに作品を完成させたいと願い、数週間で作曲され、妻に捧げられました。この曲にはおそらく、彼が1877年にハイデルペルクに短期滞在したことと、その時に再びエカテリーナと初めて出会った場所を訪ねたことの印象が反映されていると考えられます。この曲は優しい情熱的な感情に満たされていて、その感情は自然にのびのびと音で吐露されています。強烈なコントラストも比較もなく、抒情的なイメージだけが曲を支配しています。

 「夜想曲(ノクターン)」は全4楽章中の策3楽章で、きわめて美しい抒情的な楽章です(アンダンテ、イ長調、4分の3拍子)。はじめ、第2マンドリンの女性的な感じのするシンコペーションを伴奏にして、無類の魅力に貫かれた美しい主題が流れてきます。この主題は、まるで優しく語りかけてくるセレナーデのようです。それと同時に、この音楽では明るい夜の静けさの感じが的確に伝えられています。そのあと、次から次へと駆け上がっていくバイオリンの鮮明なパッセージが現れ、音楽は情熱的で燃え上がるような感情の高まりに満たされます。この情熱的な副楽想を2回ほど挿しはさみつつ、主題は展開され、何回もいろいろな楽器で繰り返されますが、その都度異なった伴奏型が異なった彩りを与えてくれます。主題は繰り返されるのですが、今度は、1つの声部が別の声部より少し遅れて登場して同一主題を繰り返していくというカノン風に歌われて、対位法的な感じになります。まるで語り合っているかのような、愛情にあふれた美しいデュエットです。こうして、感情の一致、統一、同意が曲全体を支配していきます。最後は、主題と副楽想の断片が静かに繰り返され、安らぎに満ちて終わります。


5つの小品より「ワルツ」 C.キュイ(編曲 小穴 雄一)
 キュイの音楽はフランスのロマン派の影響を強く受けていると言われていますが、この曲も非常にフランス的な音楽であると言うことができます。この「ワルツ」は、もとはピアノ用の小品であり、それをマンドリン合奏用に編曲したものを演奏します。曲は4分の3拍子、二長調で、バラキレフの「ポルカ」と同様に複合3部形式であると考えられます。つまり、(A-B-A)-(C-D-C')-(B-A)-Codaという形式になっており、最後のB-Aは、A-B-Aとなるペき所の最初のAが省略された形と考えることができます。C-D-Cの部分ではト短調に転調しています。Aの部分では、シンコペーションによって2小節にまたがった動機が単位になって曲が進行していき、Bの部分になって、1拍自で飛び跳ねる感じのワルツらしくなります。Cの部分ではフランス的な憂鬱が感じられます。Dの部分では少し流れるような感じになり、この曲のクライマックスを形づくります。曲の最後はのどかな感じで終わります。とってもチャーミングな小品で、マンドリン合奏によく合っている曲ではないでしょうか。


スペイン奇想曲 N.A.リムスキー=コルサコフ(編曲 小穴 雄一)
 リムスキー=コルサコフは、生来の異国情緒好みと海軍士官として各地を航海した体験とによって、スペイン風な色彩を持つ音楽に強く心を惹かれ、この曲の作曲を計画しました。彼は始め、スペイン風の主題に基づく技巧的なヴァイオリンの幻想曲を意図し、スケッチも作ったのですが、1887年の夏にこのスケッチを基礎にして、管弦楽のための「スペイン奇想曲」を書き上げました。このため、スケッチでの技巧的なヴァイオリンの色彩は、ここで輝かしい管弦楽の色彩に変化し、また、様々な楽器の技巧的な独奏として取り入れられています。

 この曲を聴いて感動したチャイコフスキーは、次のような手紙を書いてリムスキー=コルサコフを励ましたそうです。「まさに、この曲は巨大な傑作です。これによって、あなたは当分、最大の作曲家たることを自認されてしかるペきでしょう。」実際、この曲の色彩的なオーケストレーションは、実に素晴らしいものです。曲は、5つの楽章からできており、「奇想曲」の名前のとおり、一定の形式によらない気まぐれな要素を持つ曲です。各楽章の主題はすべてスペイン民謡であり、スペインの作曲家ホセ・インセンガ(1828-91)が編集したスペイン民謡集「スペインからの響き」の中から採ったものです。リムスキー=コルサコフは、これらの民謡からの主題を、加筆することなくそっくりそのまま採用し、そこから自分の楽想を自由に展開して作品を仕上げていったのでした。彼はこの曲について次のように述べています。「この曲での作曲のポイントは、音色の変化、適切な旋律の配置と装飾音形の選択、中でもそれぞれの楽器の結合、独奏楽器の巨匠風の短いカデンツァ、および打楽器のリズムに向けられ、仕上げとかオーケストレーションといったことは、もう作曲の重要課題ではなくなっていた。」

第1楽章「アルボラーダ」
 ヴィーヴォ・エ・ストレピトーソ、イ長調、4分の2拍子。アルボラーダとは、アストゥリア地方の舞曲で、朝のセレナードの意味です。ストレピトーソ(力強く)という演奏指定が付いています。
 この曲の形式はきわめて単純で、主題を4回繰り返したあとに結尾をつけたものとなっています。全体の感じは明るく快活で、スペインの太陽がまぶしく輝きながら昇る朝の情景を想わせます。まず曲は全合奏によって強烈なスペイン的主題が奏されます。続いてクラリネットに移されて発展し、終わり近くで、ヴァイオリン幻想曲の面影を見せるように、独奏ヴァイオリンの伴奏付きの華やかなカデンツァが現れ、これが終わると曲は興奮からさめたように静かにディミヌエンドし、ティンパニの音に乗って消えるように終わります。

第2楽章「変奏曲」
 アンダンテ・コン・モート、へ長調、8分の3拍子。主題と5つの変奏からなっていて、熱狂的な第1楽章と対照的に穏やかで温かみがある曲です。まず、アストゥリア地方の民謡「夕ペの踊り」に基づいた牧歌的な主題が静かに奏されます。
 そのあと第1、第2変奏は静かに演奏されますが、第3変奏は力強く奏されます。第4変奏ではオーボエの旋律をクラリネットとマンドリンが16分音符で伴奏します。全合奏の第5変奏のあとに結尾に入って、半音階の華やかなフルート独奏に縺れながら、穏やかに曲は終わります。

第3楽章「アルボラーダ」
 速度も主題も第1楽章と同じですが、今度は前よりも半音高い変ロ長調で、管弦楽法も違うので、新鮮な別の印象を与えます。第1楽章と較べて著しく違うのは、マンドリンとクラリネットが役割を交換していることです。構成は第1楽章と同一ですが、最後のカデンツァがクラリネットのすばやい分散和音になっていて、終わりにはピアニッシモからクレッシェンドして、力強い和音を2つ置いています。

第4楽章「情景とジプシーの歌」
 アレグレット、二長調、8分の6拍子。この曲は、アンダルシアのジプシー女が歌いながら踊る情景を描いたものと見ることができます。冒頭でとつぜん小太鼓が鳴り、マンドラとマンドロン・チェロが明るい情熱的な旋律を奏します。この部分は、独奏楽器の技巧的なカデンツァが聴きもので、始めにマンドリン、次にクラリネット、フルート、オーボエ、ギターの順こカデンツァが行われます。これらのカデンツァは、次々に登場する踊り子を描いていると考えられます。ギターのカデンツァの最後のグリッサンドで「情景」の部分が終わり、アンダルシア地方の情熱的なジプシーの歌の部分に入ります。まず、第1の踊りの主題が、マンドリンによって力強く奏されます。この野性的な、いかにもジプシー風の主題に続いて、第2の主題が木管とマンドリンによって奏されます。この2つの主題がもう一度繰り返されると、今度は憂愁味のある副主題が現れます。この部分に現れる木管の装飾風の旋律やマンドリンのギター風の伴奏も印象的です。そのあと、2つの主題を取り上げながら曲は次第に熱を増し、速度を上げ、絢爛たるウライマックスを築き上げて、休みなしにそのまま第5楽章に入ります。

第5楽章「アストゥリアのファンダンゴ」
 アレグレット、イ長調、4分の3拍子。ファンダンゴは、ムーア人あるいはアストゥリア地方に起源を持つ古い舞踏音楽で、カスタネットやタンブリンなどの打楽器でリズムを刻みます。まず、木管と技の強烈な伴奏を伴って、勇ましい主題が提示されます。次いで、優美な踊りの旋律が奏されます。これらの主題を奏し終わると、独奏ヴァイオリンが優雅にこの主題を変奏します。さらに変ホ長調で流れるような旋律が低音で奏されます。このあと、第4楽章で出てきた第1の踊りの主題や、第4楽章のマンドリンのカデンツアの主題が顔をのぞかせて曲がクライマックスに達すると、熱狂の中から突如として第1楽章の施律が出て、曲は結尾に入ります。そしてさらに熱狂を重ね、速度もプレストまで高まり、興奮の絶頂で曲は華々しく終わります。フィナーレを飾るのにふさわしい華麗な曲です。

参考文献:」川端香男里「ロシアその民族とこころ」(悠思社出版、及び講談社学術文庫)、ロンイアー「ロマン派の音楽」(東海大学出版会)、サムソン編「市民音楽の台頭」(音楽之友社)、ラング「西洋文化と音楽」(音楽之友社)、服部龍太郎「ムッソルグスキー」(文体社)、ゾーリナ「ボロディン その作品と生涯」(新読書社)、宮城谷昌光「クラシック千夜一曲」(集英社新書)、「ロシア国民楽派」(音楽之友社)、「ガイドブック音楽と美術の旅・ロシア」(音楽之友社)、「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)、「スコア・ムソルグスキー『歌劇ホヴァンスチーナ前奏曲』」(音楽之友社)、「スコア・リムスキー=コルサコフ『スペイン奇想曲』」(全音楽譜出版社)、合唱面白樺「混声合唱曲集・ロシア民謡の花束」(全音楽譜出版社)、アンサンブル・アメデオ第7回定期演奏会プログラム
(曲目解説 新井 宗仁)



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