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一読者による新訳『カラマーゾフの兄弟』の点検

                             (2008・2・20)

 目次

公開にあたっての序文     ・・・・ 木下豊房

点検者の前書き        ・・・・  森井友人

点検             ・・・・ 森井友人+NN

後書き            ・・・・ 森井友人

「検証」「点検」に寄せて    ・・・・ 木下豊房

亀山郁夫氏の「踏み越え」(«преступление»)−『カラマーゾフの兄弟』テクスト改ざんと歪曲の疑い― 

 

公開にあたっての序文

 私とNN氏が「検証」を公開したのは、昨年(2007年)1224日のことだった。間もなく、年が明けての12 付けで、森井氏から長文の手紙が届いた。そこには、「検証」を見て、「我が意を得たりと、胸のつかえがおりる思いがし、非礼を顧みず一筆差し上げることに しました」と書かれていた。日本語だけが頼りの一読者として、亀山訳の不適切な個所に疑問を感じ、光文社の編集者直々に問題個所を指摘するなど、私たちの 「検証」公開に先立つ、森井氏の孤軍奮闘の幾月かがあったのである。その詳しいいきさつは森井氏の「前書き」で読んでいただきたい。

 森井氏はすでに誤訳とおぼしき 不適切な個所のリストを作成しており、そこには「検証」と一部重なりながらも、そのほか私達が見逃した数々の重要な個所が指摘してあった。それらは当然な がら、ロシア語の専門的立場から検討に値するものと思われた。そこでNN氏の賛同と協力を得て、「一読者による点検」の作成を開始したのである。

 ロシア語の知識がなくとも、先行訳をすでに深く読み込んでいる読者ならば(あるいは森井氏ならずとも)気づくであろう疑問点を氏が指摘し、参考に先行訳の当該個所を対置、NN氏がそれにロシア語の専門的知識を駆使してコメントするという形で作業を進めた。

 この作業によって亀山訳の断面 がさらに浮き彫りになったように思われる。それは、単純な誤訳にとどまらない日本語表現の問題である。さらにはドストエフスキー特有の文体の改ざん、さら にはテクストそのものの改ざんにつながる疑いである。これについては、私は別稿で論評したい。

 「検証」公開の際と同じよう に、この「点検」も私の個人的責任において公開するものであることを明言しておく。ドストエフスキーを愛する者たちの「開かれた場」としての発足以来の会 の精神に、「検証」も「点検」も背くものではなく、むしろその意味を高めるものと確信するからである。

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