ブラックボックス

   原因と結果、あるいは入力と出力のみを問題としたときに、その過程を問題にしなくても良いとするもの、または装置。化学反応の過程、電気回路、機械装置などを指して言う。また内部の様子や構造、物事の過程などが不詳であることを比喩的に表現する。航空機などには「ブラックボックス」と呼ばれる装置が搭載されており、航空記録をとっている。その航空機が墜落した際には、航空記録を調べることで墜落の原因解明に役立てられている。
   ギャレオンの頭頂部、装甲板の下に設けられたユニットは、機体内の他のいかなるシステムからも独立しており、また決してその内部構造を解析することはできなかった。ギャレオンは人類が始めて遭遇した異星文明の産物であったわけだが、EI−01との接触と、スピリッツ号に唯一搭乗していたアストロノート、獅子王凱の救出(と解釈されている一連の行動)を最後に一切の外的な刺激に対しても反応を示さなくなっていた。宇宙開発公団の地下で秘密裏にギャレオンを回収、補修を行った日本政府であったが、彼らとしてはせめてギャレオンがどこから、何の目的で飛来したのか、そのことだけでも把握しておかねばならなかった。飛来した異星文明が必ずしも地球人類に対して友好的であるとは限らない。それを知るための具体的な判断材料が、このときは決定的に不足していたためである。ギャレオンがAI(擬似人格)によって自律的に運用されていることは、損傷部分の補修作業の段階である程度判明していたが、AIが「どのような行動原理で運営されているか」については全く不明であった。
   その鍵はおそらくこの謎のユニットにこそある。獅子王麗雄博士を中心とした調査チームは当時可能とされていたあらゆる方法でユニット内部の解析を試みたが、複雑かつ多重に施されたシールドにより、悉く失敗に終った。だが、何度目かの調査に立ち会った一青年、獅子王凱が事態を急変させた。彼はEI−01との接触事故により瀕死の重傷を負い、この時既に実父である獅子王麗雄博士の手によってGストーンを機能中枢としたサイボーグ体への改造手術を受け、その調整とリハビリを繰り返していた。この日、彼が調査に立ち会ったのは完全な偶然であったが、彼の左腕に埋め込まれたGストーンにギャレオンのブラックボックスが強い反応を示し、内部に保存されていた幾多の情報を出力し始めたのである。それは人類が依然到達しえないでいた科学技術の概念図であり、宇宙の彼方で侵攻を続ける機界文明の脅威を報せるものでもあった。
   これにより日本政府は驚異のオーバーテクノロジーの数々を手にしたが、一方で来るべき機界文明との戦いに備え防衛戦力の開発を急がねばならなかった。元ID5大河幸太郎氏を中心に組織編成が、獅子王麗雄博士を中心に戦力の設計、開発が進む中、獅子王凱青年は自ら志願して戦闘用サイボーグへの再改造を受け、防衛戦力の中心たらんとしていた。地球防衛勇者隊、即ちGusty Geoid Guardのこれが誕生である。