冬眠に入ろうとしていた熊は、小さな泣き声に目を覚まします。それは熊と同じほらあなで暮らしていたせみの子でした。いくらなぐさめてもせみは泣き止みません。
年が明けたある日、森の動物たちが顔を出します。そしてうるさくて役立たずのせみなど食ってしまえといいます。熊が怒ってどなりつけているところへ、せみが顔をだします。
「いままで何年も土の中で暮らしていて今年は外に出て行かなくてはいけない。でも地上では2週間しか生きられない。それが悲しくて泣いていたの。だからどうかぼくを食べないで」
そういわれて動物たちはこそこそと姿を消しました。
夏になって、いよいよせみが地上に出てきました。熊や他の動物たちが見守る中でせみは変身を始めます。そのとき間近で見ていたリスが悲鳴を上げます。としよりのふくろうが木の陰からせみを食べてやろうとねらっていたのです。
ふくろうが飛びかかったとき、一瞬はやく変身したせみは逃げのびました。そしてふくろうにおしっこをひっかけてやりました。
夏の間中、せみのミンミン言う声が森に響き渡りました。でもうるさいとはだれも言いません。くまはほらあなの家に帰って、せみの残してくれたおいしい蜜を発見しました。
|