台風が近づいてきたある日のこと…
庭の木々は風にふかれて、枝をゆさゆさ。雨も強くふりだした。もよちゃんは、人形の王さま相手に台風ごっこをはじめる。水があふれてきた。人々は逃げまどっている。へやの中は大洪水だ。水は王さまの座っているいす――お城にもせまってきた。
「王さま、王さま…どうするの。川は水でいっぱい。人も家も流されていく」
でも、人形の王さまはなにもできない。じぶんのつくったストーリーにもよちゃんは、どんどんひきこまれていく。お城の階段も水がひたひたおしよせる。女王さまも、家来も水に流された。
「王さま、王さま…」 そのとたん、ドップーン!王さまも大波にのまれた。われにかえったもよちゃんはかわいそうな王さまをだきしめた。「ごめんね、王さま」
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