今月の葉っぱ
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2007年

ヤマブドウ
ブドウ科ブドウ属の落葉つる性木本
<所長の私見>日本一早いと言われる北海道・大雪山の紅葉を見に行く途中、まだ緑色の木々が茂る麓の林の中で、ひとつだけ紅葉のピークを迎えた真っ赤な木があった。いや、よく見るとつる植物が別の木を覆っているのだ。ヤマブドウ。とにかくこのヤマブドウがあちこちでよく目についた。一方で、木を覆うほどではなく、木の幹から紅葉した葉を広げるつる植物なら、ツタウルシだ。両者とも紅葉が早い樹木に挙げることができるだろう。その早さは、大雪山の紅葉に匹敵するということになる。他にも、サクラ類、ムシカリ、タラノキ、ツタ、ナツハゼなども紅葉が早い部類だろう。ナツハゼに関しては、夏の頃から赤く染まる個体も多いから例外だ。ちなみにヤマブドウの実は、サルナシと並んで動物たちにも人気が高いように感じる。だから、実がなくなる早さもピカイチだ(2007年10月)

 

ワラビ
コバノイシカグマ科ワラビ属の夏緑性シダ
<所長の私見>この葉を見てワラビと分かった人は大したもんだ。あなたはシダマニアですか? いやいや、ワラビなんて山菜の基本だから田舎育ちなら誰でも知ってるよ。という声も聞こえてきそうだけど、少なくとも田舎育ちの僕は最近までワラビを見分けられなかった。だって、シダなんてどれも同じに見えるもん。そんな方のためのシダ入門図鑑「シダハンドブック」が間もなく発売になるのだけど、私はこの本でシダのスキャン画像撮影を担当した。花や実がつかないシダは、葉の形が平面的で複雑で、スキャンするにはまさに好対象。でも、シダど素人の僕が自分でシダを探して採取し、スキャンするのは苦労と失敗の連続だった。お陰で今はワラビはもちろん、多くの基本シダを見分けられるようになり、自然を見る視点が広がった。でも、当サイトは樹木専門なので、シダの鑑定依頼は勘弁してくださいね、あしからず(2007年8月)

 

ナツボダイジュ
シナノキ科シナノキ属の落葉高木
<所長の私見>このきなんのき掲示板を開設して早6年がたつ。開設直後の数ヶ月間は、知名度もなく、月に2、3件しか書き込みがなかったものだ。しかも、初めての鑑定依頼はアブラギリ、続いてヒギリ、次はセイヨウシナノキと、いきなりマイナーな樹木が続いて苦戦した。特に3件目のセイヨウシナノキは、東京・銀座の並木通りの街路樹で、私自身はシナノキと思っていたのだが、他の方から「セイヨウシナノキの名札が掛かっていた」との書き込みがあり、とりあえずセイヨウシナノキとしておいたのだった(バックナンバー掲載)。昨年、その銀座シナノキの話題が掲示板をにぎわせ、今年はついに「銀座シナノキツアー」なる調査隊が密かに出動した。その結果、大半はシナノキ、その中にナツボダイジュ、ギンヨウボダイジュ、アメリカシナノキ、セイヨウシナノキなどの外国産シナノキが時折紛れている(っぽい)ことが判明した。掲載したナツボダイジュは比較的見分けやすく、両面に毛が生えるので触るとフサフサしている。6年たつというのに、未だにシナノキに悩まされている(2007年6月)

 

オニグルミ
クルミ科クルミ属の落葉高木
<所長の私見>
芽吹きの季節。それまで冬芽の中に閉じこもっていた葉っぱたちが、四月の陽気に誘われて次々とほころんでゆく。オニグルミは、芽吹きがよく目立つ木のひとつだ。毛をかぶった厚ぼったい葉と、毛虫のような雄花が同時に芽吹く様子は、重量感があって特徴的である。冬芽には“ひつじ”がいることで知られるけど、芽吹くとその姿も見えなくなってしまう。芽吹いた葉っぱの色は、若干くすんだ黄緑色をしている。これは赤の色素を少し含んでいるためで、多くの樹木の芽吹きで見られる現象である。分かりやすく言えば、赤ちゃんの時はまだお肌が弱いので、赤いサングラスをかけてお肌を守っているようなもの。だから、日当たりがいい場所の葉っぱほど赤みを帯びる(2007年4月)

 

ガジュマル
クワ科イチジク属の常緑高木
<所長の私見今月頭に訪れた石垣島で取ってきた葉っぱ。沖縄の木といえばデイゴにガジュマル、ブーゲンビレアにハイビスカス。その中で唯一の自生種であるガジュマルは、公園、庭、道端、山などあちこちに生えている。幹や枝から垂れ下がる気根は、南国ならではの雰囲気を漂わせ、あぁ沖縄に来たんだなぁ、と感じさせてくれる。そんなガジュマルであるが、じつは本土の都会でも目にすることがある。ガジュマルの葉っぱを覚えたばかりの学生時代、私は東京都内にある某バイト先の事務所で、ガジュマルらしき葉っぱを見た。えっ、これってもしかしてガジュマル!? 観葉植物として置かれていた小さな木がガジュマルだったのだ。えー、沖縄を象徴する木が、いつも訪れているバイト先にもあったとは・・・。嬉しいような、悲しいような。そう、南国の木は観葉植物として出回っているものも多いのだ。(2007年2月)

 

トドマツ
マツ科モミ属の常緑高木
<所長の私見>「トドマツ」と名があるが、いわゆるマツの仲間ではない。モミの仲間だ。同様に、「エゾマツ」もマツではなく、トウヒの仲間だ。「カラマツ」もマツではなく、カラマツだ。「マツ」と名の付く針葉樹は、いろいろあって紛らわしい。針葉樹の名前を覚えたくなくなるのも尤もだ。でも、どれもマツ科なので、広い意味では妥当な名前と言える。トドマツは、日本では北海道にだけ分布する木で、当地では門松に使われると聞いた。しかし、狭義のマツ、即ちクロマツやアカマツの姿を想像すると大間違い、どう見てもモミにそっくりな姿だ。トドマツは北海道のモミ、と解釈するのが分かりやすいだろう。同様にエゾマツは北海道のトウヒである。ちなみに、「オソマツ」「チョロマツ」「イチマツ」「ジュウシマツ」という木はない。ただし、「ジュウシマツ」という鳥はいる。(2007年1月)

 

 

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