今月の葉っぱ
トップ画像ギャラリー 〜
2004年

オトコヨウゾメ
スイカズラ科ガマズミ属の落葉低木
所長の私見>紅葉の時期、このように黒に近い紫色になった葉をよく見る。枯れたのかと思ってしまいそうだが、これは紅葉の初期段階、あるいは紅葉そのものと呼んでも差し支えないと思う。紅葉のメカニズム的に説明すれば、緑色の色素が抜ける前に赤色の色素ができてしまったものと考えられる。だから、葉を裏返せばまだ生き生きした緑色が観察できる(下写真)。表面には赤色色素ができたものの、その下には緑色色素が残っているので、それらが重なってこのような濃い紫色に見えるのだろう。緑色の色素が完全に抜ければ、このオトコヨウゾメの葉も赤色になる。同じ赤色でも、緑色色素が少し残っている方が、より濃い赤色に見える。紅葉は色の勉強だ(2004年12月)
ドウダンツツジ
ツツジ科ドウダンツツジ属の落葉低木
所長の私見>暖地の公園でも堅実に紅葉してくれる木。ドウダンツツジにはそんなイメージがある。それまで気にも留めていなかったの道端の植え込みが、急に真っ赤に染まり出し、思いがけずささやかな紅葉狩りを味わってしまう。そんなドウダンツツジの紅葉を見て、結局その年の紅葉狩りはそれで終わり・・・なんてことが、忙しい都会のサラリーマンなら十分ありうる。有難いやら、悲しいやら。他には、ツタ、トウカエデ、ハゼノキ、ナンキンハゼなども暖地都市部で鮮やかな紅葉が期待できる。反対に山の中ではドウダンツツジは滅多に見かけない。自生地はごく限られているのだ。一方、標高1000mを超えるような高い山や、寒地の都市でよく見かけるのは同属のサラサドウダンだ。この時期のツツジ類は、紅葉した枝の周りをよく探すと、上向きに開いた果実を見つけられる(2004年11月)
アオギリ
アオギリ科アオギリ属の落葉高木
所長の私見>アオギリと言えば中国原産の木で、公園などに植えてあるのをよく見る。のっぺりとした幹、大ぶりな葉っぱ、剪定されて疎らな枝・・・個人的にはあまり好きな姿ではないが、これが日本にも自生するという説がある。その一つが、伊豆半島南端に近い下田市の白浜神社だ。今年の夏、海水浴ついでに訪れてみた。そこは小規模な神社林で、タブノキやヒメユズリハに交じってアオギリが多く生えている。潮をかぶったせいか、真夏というのにその多くが黄葉しており、そばの国道を走っていても姿がはっきり認められる。また、波しぶきが当たるような海岸最前線の砂岩地にも若木が生えていたから驚きだ。「なるほど、これが野生のアオギリの姿か」と感激したが、100%信じ込む訳にはいかない。神社は古くから珍木が植えられることも多いからだ。自生説としては十分面白い(2004年10月)
ハカマカズラ
マメ科ハカマカズラ属の落葉つる性木本
所長の私見>南に行けば変わった形の葉があるものだ。本州の最南端部にあたる紀伊半島の江須崎は、このハカマカズラの北限自生地ということで、「亜熱帯性の原生林」と唱われている。が、実際に行ってみるとさほど亜熱帯を感じなかった。雰囲気は西日本の照葉樹林とほとんど変わりない。ハカマカズラはいくつも生えており、樹高15mを超える木にもよじ登っていたし、付近を通る国道や線路沿いにも雑草に交じって生えていた。まあ、本州ではこのようなハカマ形の葉を見る機会はないので、このシルエットを見れば南国に来た気分にはなれる。個人的には、ハスノハカズラ(右写真/裏面)の葉形も南国を感じて好きだ。こちらは西日本の暖地では比較的普通に生えているけど。(2004年9月)
シマサルスベリ
ミソハギ科サルスベリ属の落葉高木
所長の私見>サルスベリとシマサルスベリの相違点は、いくつか明確に挙げられる。一つは、シマサルスベリは葉先がよく尖ること、一つは、シマサルスベリは幹が直立して高木になること、一つは、シマサルスベリは果実が楕円形になること、そして一つは、シマサルスベリは日本にも自生すること。先日奄美大島に行って来たのだが、里山地帯を車で走っていると所々の山に小さな白花をたくさん咲かせた木が目につく。何かと思い車を止めてもらうと、なんだ、シマサルスベリであった。とはいえ、本土ではシマサルスベリの野生は見ることはできないから貴重な光景だ。近年は、東京近辺でもサルスベリに交じってシマサルスベリが庭木に出回っているという。時に古い公園などで大木を見ることもあるが、まだまだ珍木の類である(2004年8月)
シモツケ
バラ科シモツケ属の落葉低木
所長の私見>先日八ヶ岳に行って来た。八ヶ岳は、富士山から続くフォッサマグナ地帯特有の植物が見られることで知られる。また、私が登った西岳周辺はシカが多いこともあり、イボタヒョウタンボク、ヒロハヘビノボラズ、レンゲツツジなどのシカが食べない低木が偏って残るという特徴もある。標高1400m前後にはシモツケの紅色の花が目に付いた。一緒に登った地元の人は「白花のシモツケもよく見るんだよ」と言う。でも、この日見たのは紅色ばかり。不思議だな・・・と思っていたら、若い実をつけたアイヅシモツケを見つけた。正体はこいつだ。別名シロバナシモツケ。花は白くて、開花期も少し早い。葉がシモツケより丸みを帯びることが特徴だ(右写真)。地元の人の話を聞きながら、噂の真相を探るはおもしろい。(2004年7月)
コンロンカ
アカネ科コンロンカ属の常緑半つる性低木
所長の私見>先日沖縄に行って来た。やんばるの森に入ると、本土に比べてアカネ科やクワ科の木が異常に多いことに気付く。クワ科はまだ見分けられるが、アカネ科は一筋縄にはいかない。コンロンカやクチナシをはじめ、ボチョウジ、ギョクシンカ、シロミミズ、ミサオノキ、ルリミノキ、ハナガサノキ、ヘッカニガキなど、のっぺりとした似たような葉の木が10種類以上もあるからだ。アカネ科の木を見分けるには枝を取り巻く托葉の形が重要だが、この葉の画像にはそれが写っていないので、コンロンカと分かった人はほとんどいないだろう。一方、花は非常にユニークで覚えやすい。園芸用には「ハンカチの木」の名で出回っていることもあるが、ハンカチノキ科(ダビディア)のハンカチノキと混同しないようにご注意。(2004年6月)
ツタウルシ
ウルシ科ウルシ属の落葉つる性木本
所長の私見>かぶれる木と言えばヤマウルシ、ハゼノキ、ヤマハゼが有名だが、ツタウルシも忘れてはいけない。名の通りツタに似た三出複葉を持つつる植物で、幼木の葉では写真のように鋸歯が目立つが、成木では全縁になる。かぶれる作用はウルシ類の中でも最強と言われるから、本来は十分注意したいとこだが、前出の3種より知名度が低い気がする。かと言って珍しい植物ではなく、身近な低山でスギなどの幹によじ登っているのをよく見る。「ウルシの木に触った覚えはないのにかぶれた」という人は、このツタウルシによる場合が多いのではなかろうか。ちなみにミツバアケビ(右写真)も同じく三出複葉を持つつる植物だが、こちらは鋸歯が丸いので区別できる(2004年5月)
ウグイスカグラ
スイカズラ科スイカズラ属の落葉低木
所長の私見>ウグイスカグラの葉は、単葉(不分裂葉)、対生、全縁である。落葉樹でこのような形態をもつ木は意外と少ない。深山や亜熱帯の木、あるいはつる植物などを含めればやや数が増えるが、本州の低地に生える木に限ればとにかく少ないのだ。だから、平凡な葉の形でありながら、比較的見分けやすい木ということになる。ちょうどこの季節から小さなピンクの花が咲き始め、やがて、画像のようにふちが赤みを帯びた若葉が芽吹く。地味な木だが、名の通りウグイスが好むような茂みによく生える。「カグラ」は葛(かずら)ではなく神楽の意味。「ウグイスカズラ」と間違えられることが多く、誤表記の多い木ワースト5に入るであろう。(2004年3月)
アスナロ
ヒノキ科アスナロ属の常緑高木
所長の私見>アスナロの名が「明日ヒノキになろう」に由来している話は比較的有名だ。それだけヒノキ材は良いということだが、アスナロ材も耐朽性が高いことで知られ、建築材にも用いられる。さて、ヒノキの仲間といえば、葉裏の白い気孔線の形が見分けのポイントである。サワラはX(エックス)、ヒノキはY(ワイ)というのは有名だが、アスナロはW(ダブル)という見方をご存じだろうか。下の写真を見ても分かる通り、はっきり言ってこじつけに近いが、そんなことを言えばサワラだってとてもXには見えない。それよりも、一番初めにこれらの気孔線をX,Y,Wと言い出した人の方がよほど偉大だと私は思う。(2004年2月)
ユズリハ
ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木
所長の私見>正月と言えば、ユズリハ、ダイダイ、ウラジロ、マツ、タケ、ウメ、ナンテン、ハボタン・・・いろいろな植物が登場する。私の地方では、しめ縄にも鏡餅にもユズリハを飾っていた。寒い地方などでは違う葉を使うのかな?と思い、当掲示板で尋ねてみたところ、日本海側ではやはりエゾユズリハを飾るという回答をいただいた。ついでに門松には通常クロマツやアカマツを使うが、北海道ではトドマツを使うらしい。これはおもしろい。こうした地域文化にとけ込んだ樹木を集めれば、1冊のおもしろ図鑑ができそうだ。(2004年元旦)

バックナンバー>>> 2001-2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年

このきなんのき
Copyright© Masayuki-Hayashi
All Rights Reserved
since 2000.12.1