今月の葉っぱ
トップ画像ギャラリー 〜
2005年

コハウチワカエデ
カエデ科カエデ属の落葉高木
所長の私見>12月の葉っぱにカエデの紅葉を用いるのは、違和感あるだろうか? 今年のお正月に山口の実家に帰省した時、裏山が赤や黄色で彩られていたのを思い出す。ハゼノキ、アベマキ、ケヤキなどの紅葉がピークを迎えていたのだ(下写真はお正月に紅葉・開花していたネジキ)。気象庁の記録によると、去年の長崎の紅葉見頃は1月8日だったらしい。ん? これじゃ去年じゃないな、今年だな。 そう、今年も10〜11月と暖かい日が続き、昨年同様に紅葉が遅そうだ。こんな感じで紅葉は年々遅くなって、お正月は紅葉の下で初詣におせち料理、なんて習慣が定着するのかも知れない。地球温暖化は嘆くべきことだが、本州の冬は寒すぎると思っている私にとって、冬が短くなるのは悪くない(2005年12月)
イスノキ
マンサク科イスノキ属の常緑高木
所長の私見>イスノキと言えば虫こぶ、虫こぶと言えばイスノキ。それくらいイスノキと虫こぶは関連深いと思う。イスノキにできる虫こぶは10種類以上が知られており、この枝先についているのはイスノキエダコタマフシという名。「いすの木の枝にできる小さな玉みたいな附子(ふし=虫こぶ)」という意味だ。ナイフで切ってみると、白い粉をかぶったアブラムシが何十匹も飛び出してきた。そう、中は虫たちのパラダイス! こいつら、木の成長力を利用して虫こぶを形成させ、食べ物に囲まれた部屋の中でぬくぬくと育つ。虫こぶの中で一生を終えるアブラムシさえいるという。なんてインドアで享楽的な野郎だ(2005年10月)
クヌギ
ブナ科コナラ属の落葉高木
所長の私見>今月初めに引っ越したばかりの部屋から、クヌギの木が見える。その周りにはケヤキ、ケンポナシ、ヒノキ、ソメイヨシノなどが生えており、人手の入った斜面林になっている。今の時期は、クヌギ林の方からミンミンゼミの鳴き声が一日中響き、時折アカゲラらしき声も聞こえてくる。薪炭世代ではない私は、クヌギと言えば、大きなどんぐりと樹液に集まる昆虫を思い浮かべる。太い枝をぐねぐねと伸ばした力強い樹形と、てかてかした細長い葉をたらす姿も印象的だ。生きものたちが集まる“母なる木”、そんなイメージのあるクヌギが見える景色が、嫌いではない。ちなみに上の葉は、若木や徒長枝によく見られる特有の形。スマートなひょうたん形で愛嬌がある(2005年9月)
セイヨウハコヤナギ
ヤナギ科ヤマナラシ属の落葉高木
所長の私見>北海道を訪れたらどうしても見ておきたい並木があった。もしかしたら日本で一番有名かも知れない並木、北大のポプラ並木である。一般に日本でポプラと呼ばれている木はセイヨウハコヤナギだ。関東以西の地域では、このすらりとしたのっぽ樹形を見かけることは少ない。暖地にあまり適さないのかも知れないが、それ以上に台風が多いことが理由に挙げられるだろう。だが、異常気象の去年は台風が北海道にも訪れた。台風慣れしていない北海道の木は次々に倒れ、ポプラ並木も約半数が倒れてしまったのだ。奇しくも、私が初めて見た北大ポプラ並木はその翌年。間のカスカ空いた並木道は、期待したほどの壮観さはなく、こんなものか、と思わざるを得ないほど寂しげだった。残念だが、むしろ印象に残ったのは横で草をむさぼっていた巨大ブタであった(2005年7月)
ヤマザクラ×カスミザクラ
バラ科サクラ属の落葉高木
所長の私見>サクラ類はよく似た種や園芸品種が多く、木を覚える上でのひとつの難関になっている。それでも、野生のサクラぐらいは分かっているつもりだった。特に低地の雑木林では、ヤマザクラとカスミザクラが混在している場合が多く、私は主に、葉表の毛、葉裏の照り具合で両者を見分けていた。ところが最近、サクラに詳しい方からいろいろ教えてもらう機会があり、それによると、ヤマザクラとカスミザクラの雑種が結構見られるという。本当に?と思ってフィールドの山に出かけ、ヤマザクラとカスミザクラの葉を何個体ずつ採取してきて、家で並べていた時のこと。葉裏が明らかに照っているカスミザクラ、粉白を帯びるヤマザクラ、それに加えて、少し照って少し白いサクラがはっきり存在するのだ。これがヤマザクラ×カスミザクラの雑種か! 鋸歯を確認しても、両者の特徴である単鋸歯と重鋸歯がやはり混在していた(2005年6月)
リョウブ
リョウブ科リョウブ属の落葉小高木
所長の私見>若葉の頃は、どんな木でもまだ特徴が不完全で見分けにくいものだ。それは、人間だって赤ちゃんの頃は誰の子どもか分かりにくいし、男か女かも分かりにくいのと似ていなくもない。この葉を見てリョウブと分かった人は、かなり木に見慣れていると言えるだろう。リョウブの名の由来は、かつて救荒用にリョウブの木を残す令法(りょうぼう)が出されたためといわれるので、リョウブの若葉は当然食用に適していると思われる。ところが、山菜の本などを開いてもリョウブは載っていないことが多い。そこで昨年、リョウブの若葉を摘んで適当にリョウブ飯を作ってみたのだが、これがとてもまずかった。このままでは納得できないので、今年ももう一回リョウブ飯にチャレンジしたいと思う(2005年4月)
タブノキ
クスノキ科タブノキ属の常緑高木
所長の私見>この時期から初夏にかけて、決まって鑑定依頼が増える木がある。タブノキだ。タブノキは、目立った花が咲くわけでもないし、特別変わった姿をしているわけでもない。それでも写真を撮って投稿する人が多いのは、この芽吹きの姿が他種にもまして目立つからだろう。冬は長さ1cmほどだった枝先の芽は、春先には3cm以上にも膨れあがり、真っ赤な若葉が勢いよく飛び出してくる。その姿は、しばしば花と見間違えられるほどだ。考えてみれば、当サイトへの鑑定依頼が多い木ベスト3に入っているに違いない。これと競り合うのはエノキやシロダモ。いずれも身近な低地に生えていながら、日頃は地味な姿のせいか認知度は低い。そんな木々が「この木何の木?」のNo.1を競うことを私は嬉しく思う(2005年3月)
ブナ
ブナ科ブナ属の落葉高木
所長の私見>ブナとイヌブナの見分けは、大概は葉の硬さでわかる。硬くてパリパリ感があるのがブナだ。より正確に見分けようと思ったら、私はまず葉裏の毛を見る。若葉は両者とも毛深いものの、成葉になっても相変わらず毛深いのがイヌブナでよく目立つからだ。この秋冬は、落ち葉になっても毛が残っているかを注意していろんな葉を見てみた。すると、ほぼすべての葉で、落ち葉になっても毛がついていることがわかった。だから、ブナとイヌブナも落ち葉で判別可能だ。ちなみに、ブナと言えども右写真程度の毛はあるので要注意。また、側脈の本数で見分ける方法(一般的にブナは7〜11対と言われる)も有名だが、ブナでも側脈が多めのものがあったり、葉先の部分をどこまで数えるかで随分上下するので、あまりシビアに数えすぎてはならない。この写真の葉だって、シビアに数えると側脈は12対ある(2005年2月)

イチイ
イチイ科イチイ属の常緑小高木
所長の私見>やや季節外れの話題になるが、イチイの実は「オンコの実」とも呼ばれ、食べられる。中のタネには毒があるが、さほど心配することはない。例え飲み込んだとしても、噛み砕かない限りは大丈夫だろう。イチイだって動物を殺したい訳ではなく、芽生えの元となるタネを噛み砕かないでほしいだけだ。さてここで考えたいのは、イチイは針葉樹(裸子植物)であるということ。専門書を開くと、果実とは被子植物(広葉樹)の実ことで、裸子植物では果実とは呼ばないとある。私に言わせれば、イチイの実も「果実」であるが、専門家はこれを種子と呼び、赤い部分を仮種皮と呼ぶ。まあ堅苦しい話はやめようじゃないか。鳥だって、食べられるか食べられないかで木の実を区別してる訳だし。そういえば、小笠原に唯一分布する針葉樹のシマムロも、鳥が実を食べるから小笠原に渡ってきたと考えられている。裸子植物だからとか被子植物だからとか、そういう問題ではないのだ(2005年1月)

バックナンバー>>> 2001-2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年

このきなんのき
Copyright© Masayuki-Hayashi
All Rights Reserved
since 2000.12.1