今月の葉っぱ
トップ画像ギャラリー 〜
2003年

ヒイラギ
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木
所長の私見>12月の木といえば何だろう。やっぱりクリスマスがあるからヒイラギやモミの木かな。でも個人的には12月1日はこのサイトが誕生した日でもあり、私の誕生日でもある。誕生日といえば「誕生日の花」とかがよくあるが、12月1日はヨモギの場合が多い。ヨモギは嫌いではないが、何とシブイ存在だろう。これに対抗して「誕生日の木」とか「樹木占い」とか誰かやらないのだろうか。それはさておき、ヒイラギは俗に「ホーリー」と呼ばれることがある。でも「holly」はモチノキ科のセイヨウヒイラギを指すのでヒイラギとは違う仲間だ、なんて話は樹木マニアの間では新鮮味はない。では、きよしこの夜の「ホーリーナイト」は?と聞かれるとどうだろう。正解は「holy night」で「聖なる夜」という意味だ。 (2003年12月)
シナヒイラギ
ユリノキ
モクレン科ユリノキ属の落葉高木

所長の私見>こんなに葉先がへこむ葉は珍しい・・・とよく私も説明する葉である。ユリノキは北アメリカ原産だが、日本産の植物ではこのように先がへこむ形には「ヤハズ〜」という名前が付けられているケースが多い。樹木ではヤハズハンノキ(下写真)などがそうで、少しマイナーな木だが、本物を見みるとなるほど昔の人が「矢筈」と名付けたくなるのも分かる。でも、現代ッコにとって馴染みのない「ヤハズ」という名前は、正直なんとかして欲しいものだ。現代ッコが名付けるなら何という名になるだろうか。「ハートハンノキ」。まぁそんなとこだろう。また、ユリノキは「ハンテンボク」の別名もある。「半纏」も馴染みが薄いのでこれは「Tシャツボク」・・・外来語の言い換えがもう少し必要なようだ。(2003年11月)
クロマメノキ
ツツジ科スノキ属の落葉低木

所長の私見>ここ1カ月は1000m以上の山に4つ登った。山派の人たちにとっては何てことない数字だが、低地派の私にとってはこれはすごいことだ。2000mを超えるような山になると、森林限界を超えて矮性低木が広がる高山域に入る。私はこれまで高山植物は敬遠しがちだったが、今回訪れた西赤石山、朝日岳、四阿山などを通じてずいぶんと興味を持つことができた。高山植物といえば木本ではツツジ科が主役だ。四阿山では、ブルーベリーの親戚であるクロマメノキが一面に生い茂り、瑞々しい実をたくさんつけていた。同じくツツジ科のコケモモも多く、実もうまい。高山の「三大うまい木の実」を選ぶとしたら、この2つはまず本命だが、もう1つは何だろう。それにしても、天国のようなこのお花畑で、こんなに美味しい実をたらふく食べられる動物は幸せ者だなぁ。(2003年10月)
トウゴクミツバツツジ
ツツジ科ツツジ属の落葉低木

所長の私見>ミツバツツジの仲間を見分けるのは難しい。「○○ミツバツツジ」と名の付く木が国内におよそ12種かそれ以上あるが、見かけ上の違いはほとんどなく、花や葉の毛などで見分けないといけないからだ。こんな時は、産地によって候補種を絞る方法がある。例えば東京近郊の自生種ならトウゴクミツバツツジ、ミツバツツジのどちらかと思っていい。しかし、この鑑定方法は本来は不純だと私は思う。なぜなら、実物ではなく情報で鑑定していることになるからだ。これでは、庭木の野生化といった特殊例には応用できないし、新しい自生地の発見、といった新事実を掴むこともできない。既成概念に囚われず、目の前の植物と純粋に向き合うことが大切である。東京・奥多摩で採取した上の葉は、裏面の毛の量が中間的で何ツツジか分かりにくい。生育地を考えたらトウゴクか、あるいは両者の雑種ムサシミツバツツジか。現実はこんなもんだ。(2003年9月)
カジイチゴ
バラ科キイチゴ属の落葉低木

所長の私見>7月末の3日間、3年前に大噴火した三宅島に行って来た。私は街路樹調査の補助で訪れたのだが、暇を見つけては島の植生を観察するのが個人的な目的だ。島内の風景は比較的平穏でありながら、森林の半分以上が立ち枯れ状態であるのは驚きであった。降り積もった灰や火山ガスによって葉を落としてしまったらしい。しかし、タブノキを筆頭に幹や地際から次々と萌芽し始めている木が多く、再生の勢いを十分に感じる。ところで、島内に多いタラノキ、ハマサルトリイバラ、カジイチゴなどにはトゲがほとんどない。大型草食動物がいないため、トゲの必要性がなくなるという訳だ。カジイチゴは本土産のものでもトゲがないことが特徴だが、キイチゴ属の中でも珍しくトゲがないのは海岸性のためだろうか? 島の植生にはいろいろと考えさせられる。(2003年8月)
クロキ
ハイノキ科ハイノキ属の常緑小高木

所長の私見>私の実家は山口県にある。ところが山口にいた少年時代は全く木を知らなかった。千葉の大学に入学して木に興味を持ち始めたある年、お盆に帰郷したついでに実家の裏山の木を調べてみることした。すると、高木層にはクヌギ、低木層にはモチノキが多いようだ・・・いやちょっと待て、この木はなんか少し違うぞ!? よく調べてみると高木はアベマキ、低木はクロキと判明した。私にとって、西日本と東日本の植生の違いを感じた瞬間であった。関東平野に住んでいるとハイノキ科の木とは縁が薄い。それに比べると西日本の森にはクロキ、クロバイ、シロバイのような見分けにくい樹種がいくつもあって腕が鳴る。クロキは枝先の芽が特徴である。もっと西に住みたいと思うこの頃である。(2003年7月)
シンジュ
ニガキ科ニワウルシ属の落葉高木

所長の私見>日本に野生化した外国産の植物、いわゆる帰化植物は、草本に比べると木本ではずっと少ない。中国産のシンジュはその代表種である。別名をニワウルシというが、ウルシ科ではないし、「神樹」の響きがカッコイイので私はこの呼び名の方が好きだ。普及した二通りの和名を持つ樹木はいくつかあるが、いわゆる正式名称なるものは決められていないので、いつも表記に迷ったりもする。シンジュの場合、属名の「ニワウルシ属」の表記も通っていることだし、和名もニワウルシにした方が本来は混乱が少ないだろう・・・。上の画像は羽状複葉の小葉。付け根の両側に突起があるのが大きな特徴だ。(2003年6月)
バッコヤナギ
ヤナギ科ヤナギ属の落葉小高木

所長の私見>ヤナギ科の樹木は大変種類が多い。しかも、どれも一様に細長い葉形をしていて見分けるのが難しいため、専門家も煙たがる部類である。私はようやく去年あたりからヤナギ科をちゃんと勉強し始めた身だが、いざ調べ始めると面白い。都内でも、広い河原の中州にはヤナギが自然状態で茂っており、都心に残る唯一の原生自然だ!と若干感動できる。バッコヤナギは、ヤナギ類の中では葉幅が広いタイプ。裏面に白い毛が密生しているので比較的見分けやすい。5月は、綿毛を持ったヤナギのタネが飛び交う柳絮(りゅうじょ)の季節だ。河原に降りそそぐ初夏の雪を見に行こう。(2003年5月)
エゴノキ
エゴノキ科エゴノキ属の落葉小高木

所長の私見>新芽の季節。正常な人なら、次々と芽吹いてくる新芽に春の到来を感じ、何とも嬉しい気分になるものだが、木を仕事にしていると、反面“あせり”にも似た気持ちも芽生えてくる。何故なら、木々の活動が活発化してくると、「あの花を見に行かなきゃ」「あれを写真に撮らなきゃ」「今年こそあれを調べなきゃ」といった項目が次々と発生するからだ。しかも、葉も冬芽も不完全なこの季節は、同定が一番難しい季節と言われる。日々変わる木々の姿を、自分の目で数多く見ておくことが大事だと思う。エゴノキの新芽は、砂粒のような星状毛がよく目立つ。肉眼でも星の形をしているのが分かりそうなくらいだ。(2003年4月)
ヤマコウバシ
クスノキ科クロモジ属の落葉低木

所長の私見>3月とは言えまだ枯葉の季節だと私は思いたい。山に入ると、明るい日差しに足下の落ち葉が照らし出される。そんな中、未だに木の上に葉を残している落葉樹があった。ヤマコウバシである。このように枯葉を長らく枝に残す樹種と言えばカシワやクヌギ(右写真)などが有名だが、ヤマコウバシもよく残る。何のためなのか? 先に果実を地面 に落とし、後からその上に葉をかぶせて保護するため・・・と考えるのが自然な気もするが、諸説があるらしく真実は知らない。そうゆう“植物の不思議”を追究するのも楽しいと思うけど、私は案外追究しようとしない。なんでだろう?(2003年3月)
モミ
マツ科モミ属の常緑高木

所長の私見>モミの木はクリスマスツリーだけじゃない。大気汚染に非常に敏感な木で、東京のような空気の汚い所ではよく育たない。つまり、一種の環境指標植物と言えるだろう。そうゆう意味でも、私は好印象を抱く木だ。案外平地近くの山にも多く、大木も多い。先日、奈良の春日山で樹高40m超級のモミに出会ったが、広葉樹の大木とは違った爽快な雰囲気がある。ちなみにクリスマスツリーとして流通しているのは、近縁種のウラジロモミの方が多いらしい。モミの葉の大きな特徴は、先割れスプーンのように葉先が2つに割れること。写真右のウラジロモミは割れ方が小さい。(2003年2月)
ヤブコウジ
ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑低木

所長の私見>ヤブコウジはすごくちっちゃい木。背丈はふつう15cmぐらいだ。日本一小さい木・・・と言いたいところだが、高山植物やつる性の木を入れるとそうは言えない。でも、身近に見られる最も小さい木と紹介して差し支えないだろう。それゆれ、千両、万両ならず、十両という愛称がある。ちなみに百両はカラタチバナ、一両はアリドオシだ。アリドオシは背丈50cmぐらいになるが、葉や実は一番小さい。これらの赤い実はお正月の飾り物によく使われる。この個体には実がなかったので、私が飾らせてもらった。(2003年1月)

バックナンバー>>> 2001-2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年

このきなんのき
Copyright© Masayuki-Hayashi
All Rights Reserved
since 2000.12.1