CRT & レココレ
Presents:

Vol. 33
“新・はっぴいえんど伝説”Night

話題騒然のトリビュート企画『はっぴいえんどかばあぼっくす』発売を記念して、OZ DISCとのコラボ・ナイトが実現! とことん聞いて語って、もっともっと深く知りたいはっぴいえんど。

2002年6月18日(火) at 東京・新宿LOFTプラスワン
OPEN 18:30 START 19:30
ゲスト: 湯浅学(音楽評論家)、田口史人(OZ DISC)ほか
出演: 萩原健太(音楽評論家)、寺田正典(レコード・コレクターズ編集長)
料金: 1500円(ワンドリンク付き)
問い合わせ: LOFTプラスワン 03(3205)6864
Daddy & The Surfbeats
萩原健太がメンバーの一員であるサーフ・インスト・バンド、ダディ&ザ・サーフビーツの最新ライヴ情報です。
6月22日(土)
水道橋・東京倶楽部
19:30-
with 東京バニーズ
萩原健太のポレポレナイト
Vol. 2
(8月ごろ開催予定。お楽しみに)
Kenta's Programs
萩原健太がDJ/司会/選曲をつとめるレギュラー番組のご案内です。

ミュージック・プラザ第2部ポップス(オールディーズ)(NHK-FM 毎週月曜日16:00〜18:00)
リクエストは「〒150-8001 NHK-FM ミュージック・プラザ第2部ポップス 月曜日 萩原健太」まで
ソングライター・ファイル(スターデジオ 毎月1回放送)
萩原健太のNothing But Pop!(選曲のみ。USEN-CS BF-52ch)
MUSICAスペースシャワーTV 毎週水曜 21:00〜22:00に初回放送。リピートあり) with 永積タカシ、池田貴史(Super Butter Dog)

Isaac Freeman Beautiful
Stars

Isaac Freeman
& The Bluebloods

(Lost Highway/UMG)
2002.5.24

 コピーコントロールCD問題。しかし、音楽ファンは全然騒がないね。危機感なさすぎな感じ。いいのか、みんな。

 ぼくは全然よくないと思う。やばいと思う。コピーコントロールCDって何? みたいな、のんびりした人がいるかもしれないので、レコードコレクターズ誌の5月号に書いたコラム原稿を再録しておくけど。


for Record Collectors Magazine

 キナくさいのは有事関連三法案、メディア規制関連法案だけじゃないよ。われわれ音楽ファンにとって見過ごせない問題がある。

 コピーコントロールCD(以下、CCCD)問題ね。最近CDの売り上げが落ちた原因はCDからパソコンに音を取り込み、それをデジタル圧縮してネットでタダで違法なファイル交換をする輩が増えたからだ…と。そんな根拠薄弱な“憶測”のもと、いくつかのレコード会社がパソコンへの取り込みをガードするCCCD仕様を採用。3月にエイベックスが3種の新譜をこの仕様でリリースして。4月にはさらに6種出して、9月からは全面的にCCCDを採用するとか。東芝EMIもこの動きに追随。5月にゴールドディスク大賞の受賞曲コンピをCCCDで出す。ワーナーも後を追うらしい。

 もちろん違法コピーはいかんよね。著作権も保護されるべきだ。けど、それとCCCDは別問題。いいのかCCCDで? というのも、エイベックスや東芝EMIが採用したコピーガード方式はイスラエルのミッド・バー・テック社が開発したもので。オーディオCDが遵守すべきレッドブック規格からあえて逸脱。TOCを改竄し、わざわざエラーを書き込み、極悪な仕様でパソコンを混乱させようとしている。だから、ちゃんとレッドブックに準拠したオーディオCDの再生しか保証しない通常のCDプレーヤーでかけると、無茶なTOCを必死に読みに行こうとしたり、頻発する深刻なエラーを懸命に訂正しようとしたりしてサーボがいかれちゃう可能性も。エラー訂正だらけだから原音そのままの再生など不可能。音質も落ちる。普通に聞きたいリスナーにまで“痛み”を押しつけるあまりにもお粗末な仕様なのだ。

 デジタル圧縮音源ファイルを違法にネットにばらまく一部ユーザーを規制するため、その他の優良ユーザーまでひとくくりに悪者扱いだ。ひどいぞ。コピーガードをかけたいならDVDオーディオとかSACDとか、もともとセキュリティがしっかりした別方式に移行するか、CCCDを無理なく再生できるプレーヤーを準備するか。それがまっとうな道だ。そういう試みもせず、かといって新時代に適した著作権法の在り方を抜本的に検証することもなく、なし崩し的に全リリースを、厳密にはCDとは呼べない似非CDに移行しようとする安易な動きには、やっぱりぼくは納得できないなぁ。

 そういや、日本レコード協会はCDの売り上げ減を防ぐためとか言って、政府に中古CDの販売禁止を含めた法規制を訴える考えを示したとか。どうなってるの、日本の音楽業界は。やばすぎるでしょ、この流れ。



 字数の問題もあって、あまり深く突っ込んで書けなかったのだけれど。PCジャパン誌5月号のほうではけっこう長い文章を書けたので、よかったらそれも読んでみてください。つっても、もう新しい号が出ちゃったので、読めないか(笑)。ここにこっそり載せておきます。もう2カ月くらい前、CCCDが出たばかりの時期に書いたものなので、状況的にはちょっと古い情報をもとにしてるんだけど、ぼくとしては基本的な考え方は変わってません。あと、この問題を追いかけているホームページとかも多いので、興味のある人はここあたりを基地にいろいろリンクで飛んでチェックしてみて。現状がいろいろとわかると思う。

 ところで。CDにコピーガード機能を付加しようとしている人たちの目的ってのは、要するに違法なファイル交換を防止することなんだよね。個人が、自分の買ったCDから自分のパソコンのハードディスクに曲をコピーすること、それ自体を防止しようとしているわけじゃないはずだよね。将来的にどうしようと目論んでいるのかは別にして、少なくとも現在、私的複製は基本的に許容されているんだから。

 だとすると、本来ならばエイベックスや、それに追随するレコード会社群とかは、まずWinMXのようなファイル交換ソフトとか、あるいは複数ユーザーによるファイルの共有を手軽に実現してくれているマイクロソフト社とか、CD-Rのハードとかメディアとかを出しているメーカーとか、そういうところに怒りを向けるべきであってね。まあ、そういう動きもやってますよ……ってレコード会社側は言うのかもしれないけれど、やっていたとしても何の結論も出ていないわけでしょ。そんな中途半端な段階であるにもかかわらず、いきなり怒りの矛先をユーザー全員に向けて、清濁ユーザーひっくるめて一様に不便を強いるCCCDの発売に踏み切ったのは、こりゃ暴挙以外の何物でもない。

 だいいちさ、彼らが取り締まろうとしている違法ファイル配布なんだけど。これって、理論的には、たったひとつデジタル音源ファイルができれば、あとは無限に増殖していくものでしょ。だから、たとえレコード会社側がCDからパソコンへ直接デジタル・データとして吸い上げられないようなプロテクトをかけたところで、誰かがアナログ再生したCDの音をパソコンで録音して、それをMP3か何かにエンコードしてファイル交換ソフトの共有フォルダに置いたら、あとは同じ。そのファイルは世界に向けてネット上を駆けめぐって無限に増殖していくだけ。何らかの形で再生ができさえすれば絶対にコピーはできちゃうのだ。絶対にコピーされたくなかったら、再生できないCDを出すしかない。

 もちろん、くどいようだけど違法なファイル交換ってのはいけないことだ。なにせ、違法だし(笑)。そんなことはわかってる。ただ、それを承知の上で言うけど。違法コピー/配布を防止するために、パソコンへの直接取り込みを禁止するプロテクトをCDに付加したところで、状況はプロテクト導入以前と何ひとつ変わらないのだ。違法ファイル交換そのものが根絶しない限り、どんなコピープロテクトがかかったCDが発売されようが、状況は同じ。アナログで取り込めば問題ないし、しかもエイベックスが採用したミッド・バー・テック社のプロテクトは、実際にはプロテクトと呼べない程度のザル技術だし。まじに意味なし。無用の長物。だったら入れないほうがましでしょ。入れないほうが音もいいし、プレーヤーにも無理がかからないし。

 結局、コピーですませるやつは、それがデジタル・コピーだろうがアナログ・コピーだろうが、関係ないのだ。そういう人はCD買わないんだから。さっきも言ったように、たったひとりだけCD買えば、あとは無限にコピーが広がっていくだけで。そういう状況のもと、エイベックスをはじめとするいくつかのレコード会社は、むしろお金を出してCDを買うユーザーのほうに不便を強いているわけで。ここも、なんだかむかつくポイントだよね。

 とにかく。本当に音楽好きな人間なら、いい音楽は買うよ。絶対。とりあえず友達からコピーしてもらったテープとかMDとかCD-Rとかで聞いていても、本当に好きになったら絶対買う。いい音楽には金を出す。そうでもない音楽には、たぶん出さない。そういうことでしょ。そうそう、ちょっと前のヒットチャートとか、それを証明していたんじゃない? コピーガードを拒否した宇多田ヒカルのシングルが、コピーガードをかけた浜崎あゆみを打ち負かしてチャート・トップに輝いたじゃないのさ。コピーガードなんてかけてもかけなくても関係ないのさ。

 浜崎あゆみとか、別に買わないし、エイベックスが何をやろうがいいよ……とか言ってるのんびり屋さんもいそうだけど、そうぼんやりしてもいられない。なにせロス・ロボスの素晴らしい新作さえも、国内盤はこの仕様で出ちゃうんだから。ブライアン・ウィルソンとジェフリー・フォスケットが参加したナンシー・シナトラもそう。輸入盤買いましょう。輸入盤なら、規格から逸脱した似非CDじゃなくてちゃんとした音楽CDで出ているからさ。もちろん、一方でヨーロッパ盤のセリーヌ・ディオンとかロジャー・ウォーターズとか、輸入盤のほうがコピープロテクト仕様で、国内盤が普通のCDって場合もあるので、ご注意を。

 というわけで、せこいコピーコントロールなんかかかっていない新作CDをご紹介。映画『オー・ブラザー』でも重要な役割を果たしていたアイザック・“ディッキー”・フリーマン。単独での活動のほか、ジョン・フォガティ、エルヴィス・コステロ、スティーヴ・アール、チャーリー・ダニエルズなどとの共演でもおなじみのゴスペル・ヴォーカル・グループ、フェアフィールド・フォーのベース・ヴォーカリストだけど。73歳にしてついにソロ・デビューだ。すごいね。

 これまた自らソロ・パフォーマーとして活躍する一方、ジョン・ハイアット、エミルー・ハリス、アーロン・ネヴィル、デルバート・マクリントン、ロニー・マック、ジョニー・キャッシュなど多くのアーティストをバックアップしてきた白人ギタリスト、マイク・ヘンダーソンがバックアップ。彼のバンド、ザ・ブルーブラッズのジョン・ガードナー(ドラム)、グレン・ワーフ(ウッドベース)らとともに、フリーマンのぶっとい歌心をブルージーに支えている。

 11曲中10曲がゴスペル/スピリチュアル系のスタンダード。残る1曲も、ゴスペル畑のプレイリー・ホーム・コンパニオンのギャリソン・キーラーの持ち歌だとか。ルーツ・ロック・ミーツ・スピリチュアルみたいな感触で。渋いす。豊かっす。こういうCDにだったら、金出しますよ。持ってたいもん。



The Last Waltz
The Association
Brendan Benson
Joey Ramone
Say It Loud!
Willie Nelson
American Roots Music
Rickie Lee
CCR
Jay Farrar
Hank Williams Tribute
Borderline
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Bob Dylan

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