ちょっと気になる交信

アマチュア無線の交信は、相手方の呼び出し方法や自局の呼び出し符号の通報など運用規則に定められた一定のルールがありますが、それ以外は普通の言葉による簡単な交信にするべきです。
実際には俗語・暗語・Q符号など様々な無線用語が乱用されています。
それらは一般の人には理解し難い内容で、電波法上も問題となるものもあります。
ここではアマチュア無線でよくある間違った言葉づかいや、ちょっと気になる交信を取り上げてみました。ニューカマーに伝染しないように、心当たりの人は正しい運用を心がけましょう。

目次

呼出周波数編(メインチャンネル)
交信周波数編(サブ)
Q符号の使い方
フォネティック・コード
 





呼出周波数編

●メインお借りします
呼出周波数は借りるものではありません。
多くの局が常時ワッチしていますので、余計なことは言わず簡潔かつ短時間に、
相手の呼び出しと周波数移動の連絡のみに使用します。

「メインお借りします」はクラブ局を中心に先輩から後輩へと伝えられているようです。
他局へのマナーのつもりでしょうが、かえって迷惑です。
メインお借りしますと言う間にコールサインの一つでも通報できるのです。

たまに「借りたら返せよ!」という声が聞こえることがあり、思わず笑ってしまいます。
確かに「メインお借りします」という人はよくいますが、そのあと「メインお返しします」という人はいませんね。
メインを誰に借りるのか分かりませんけど、借りたら返さないといけませんよね。


●変調レポートください
よく聞くフレーズで、それに対して
「平塚59」・「相模原55」 などと応答しています。
「各局ありがとうございました」(お互いコールサインを言わない場合が多い)。

変調レポートと言いながら、求めているのはRSレポートのようだ。
レポートがほしいのならば、CQ呼出をして応答してくれた局に聞けば済むことで、そのほうが詳しいレポートがわかります。
リグの調整やマイクテストの場合もあるでしょうが、
お互いの設備や状況もわからないのにRSレポートだけ求めても参考になりません。

実際はCQを出しても応答が無いので電波が出ているか心配になって「変調レポートください」などと言ってしまうようです。
心配なら自分でモニターすればよいのですが、とにかく呼出周波数でやるのは迷惑ですのでやめて下さい。
無線入門書の中には「変調レポートには親切に応答しましょう」などと間違った解説をしているものもあり(CQ出版社・まんがでわかるハム用語)困ったものです。
これではワッチして真似るばかりではなく参考書等で勉強した初心者までも間違った知識を身に付けてしまいます。
変調レポートは無視すればよいのですが、応答があるまでしつこく繰り返す者が多いので、黙らせる意味で応答する場合もあります。その際、今後のためにレポートとともにひと言注意してやるのもよいでしょう。


●CQローカル
本来は「どなたか近くの局応答してください」という意味ですが、実際にはほとんどの場合に友達やグループ仲間を呼んでいます。近所だからといってはじめての人が応答すると・・・「あんたを呼んでいません」といった具合になる。だったら、正しい呼び出しではありませんが「お友達各局」とか「フレンド局」とでも言ってください。
近所の局を呼び出したい人はCQ横浜というように、CQに地域名を付けてください。ただCQローカルではどの範囲を指すのか曖昧です。とにかくCQローカルという呼び出しはやめましょう。


●お声がけのみ
朝夕の時間帯に「お声がけのみ」と称して「本日もよろしく」、「また後ほど」、「お気をつけて」・・・
などモービル局を中心に延々と続きます。
だいたい用件もないのに電波を出すのは電波法違反です。
こんな状態では呼び出しの機能は果たせません。


「用事は無くても挨拶くらいはコミュニケーションとして良いことでは」・・とういう指摘を(メールで)受けました。
まあ地域とか状況により感じ方は異なると思います。
28、50、1200MHz帯などの比較的空いているバンドでは少々メインで喋っても問題ありません。
地方の人口が少ない地域では朝のお声がけも微笑ましく感じるでしょう。
でも一時期の都市部の144や430の朝のメインの混雑ぶりは凄まじい状態で、特定局の呼出がなかなか出来なかったのです。
今は無線局が減って呼出が困難という状態ではありませんので、適度の “お声がけのみ” もよいかなと思います。
いずれにしても、自分達だけのものではありませんので、状況を判断して臨機応変に運用することが大切です。

●サブチャンよろしく
北島三郎ではありません。サブチャンネルつまり交信周波数を指定してくださいということ。
チャンネルという概念はCB無線からだと思います。また送信がクリスタルだった時代の名残かもしれません。
まあメインに対してサブということだろうから、意味としてはわかりやすい表現だと思います。
私もメインとサブという表現はよく使います。
しかし、それに対して「いつものところ」、「さっきのところ」、「メモリー1」などと言っているのをよく聞きます。
これでは第三者には分からないので暗語ということになり、電波法的にも問題があります。



●**県**郡お出ましです。ご希望局ありましたら・・・
大きなお世話です。MC局と思われますが、CQは自分で出しましょう。そして自分の力でワッチしましょう。
MC局と称するものに中継してもらい、むりやり交信を成立させる悪い慣習はやめましょう。
本来のMC局はパイル状態で収拾がつかないときに交信希望局のリストをとって順番に交信させる役割です(これもお節介ですが)。
めずらしい地域の局をキャッチしたからといって呼出周波数でインフォメーションするのはただのお節介です。
それとも自分の無線設備を自慢したいのかもしれません。無視するのが賢明です。


●連続呼び出し
呼出周波数において連続呼び出しをする人が非常に多くて困ります。
長たらしいCQ呼出のあと応答がないとすぐに何度もCQを繰り返す人。
特定の局を呼び出す場合に、数秒おきに相手が出てくるまで連続呼び出しを続ける人。
呼出周波数は自分だけのものではありません。大勢の人が使用するもので、非常通信周波数でもあります。
ですから呼び出しは簡潔に短時間で行わなければなりません。
大勢の人が常時ワッチしています。連続呼び出しは非常に迷惑ですのでやめてください。
続いて呼び出す場合の方法は、海上移動通信に規定されており、海上以外の通信もできるだけこれに準じた方法をとることになっています(運用規則21条)。
それによると、「呼び出しは1分以上の間隔をおいて2回反復することができる。呼び出しを反復しても応答がないときは、少なくとも3分間の間隔をおかなければ、呼び出しを再開してなならない」となっています。
つまり法的にも連続呼び出しはしてはいけないのです。
ただ、海上移動通信以外では「できるだけ」となっていますので、直ちに違反ということにはならないでしょう。
でも呼び出しを反復しても応答がないときは、電波が届いていないか相手が何かの都合で聴いていないと思われますので、10分程度は間隔をおいたほうが良いと思います。


●呼出周波数(メイン)でCQを出してはいけない?
呼出周波数は文字通り呼び出しをする為の周波数ですから当然CQを出してかまいません。
でも呼出周波数でCQ呼び出しをしてそのまま受信体制に入ると、「ここはメインですよ」と注意されることがあります。

FMでは呼出周波数でCQ呼び出しをして応答があった場合に、一旦待機してもらい、交信周波数を探して再び呼出周波数で待機局に交信周波数を指定してQSYしてもらうというのが元々の方法です。
しかし、144MHz帯や430MHz帯では混雑してなかなか空き周波数が見つからないというケースがよくあります。
そのため効率よくする方法として、
あらかじめ交信周波数を確保しておいてから呼出周波数でCQ呼出し(その際交信周波数を指定)をするのが一般的になってきました。

だからといって「メインでCQを出してはいけない」ということはありません。
注意をする人は元々の方法を知らないのだと思います。
ただし呼出周波数での連続呼び出しはいけません。連続呼び出しをすれば注意されるのも当然です。
50MHzや1200MHz帯のようなバンド自体が空いているものや、
144や430でも深夜帯など周波数が空いているときは、応答があってから交信周波数を探せばよいのです。
そのほうがむしろメインとサブを行ったり来たりするより効率的です。



 
●次回

「お聞きのステーションございましたら、次回433.10にて再度コールします・・」という呼び出しをよく聞きます。
次回というのは交信周波数(サブ)に移った際という意味でしょう。
容易に想像できますので目くじらを立てることもないと思いますが、
「次回」という言い方が気になる人がけっこういるらしいのです。

私なんか別に気にもならないし、「サブに移るんだなあ」と思う程度です。
あまり細かいことを言う必要もないと思いますけど、一応気になる人もいるらしいということは知っておいて損はないでしょう。
意地悪に解釈すれば、次回CQ呼出する周波数より今回の周波数を知らせてほしいと思ったりするのでしょうかね?
確かに「次回」という人はいますが、「今回」という人は聞いたことがありませんよね。
じゃあどう言えばいいのかというと、単に「次回」を抜かせば済むことです。
「お聞きの方いらっしゃいましたら、433.10にてコンタクトお願いします」・・・みたいな調子でいかがでしょうか。

そういえば、以前に周波数で433.10(サン テン イチマル)とか言う表現に対して、
周波数に小数点以下は無いから「テン」を付けるのはおかしいという意見を聞いたことがあります。
まあ通常は単位を分かりやすくMHzで言ってますから、普通「△テン○○」と言うんじゃないかな?
じゃあその人はUHFでも何時もHzやKHzで言うのかな?
「ヨンサンサンイチマル」とかいう表現はたまに聞きますけど、かえって分かりにくいのでは?
何事もあまり細かく言うと嫌われますので、ほどほどに!

話しはそれますが、今回と次回といえば今回が今現在だと何となく分かります。
それが「今度」と「次」となるとどちらが先か迷いませんか?
国語辞典で調べると、今度の意味が「この次」とかなっていて余計に分からなくなります。
辞書により表現が異なりますが概ね「今度」は今現在の時間を基準にして、今現在も含めて過去・将来でごく近いものを示すようです。
「次」は時間以外にも順番や大きさなども基準になり「すぐあと」という意味のようです。

そこで「次」の基準を時間的な今現在にすると「今度」と意味が重なってしまいます。
だから駅で「今度」と「次」という表現には迷います。
地域によっても感じ方は異なるようで、
特に関西圏ではニュアンス的に「次」が先で「今度」は次の後という感覚が強いようです。
関西育ちの私は関東に来た当初は駅で「今度」と「次」という表現が理解できなかったのです。
関西では「先発、次発、次々発」あるいは「先発、後発」となっており分かりやすいです。
結論から言うと、駅で「今度」と「次」という表現の場合は100%今度が先です。
まあ表示機が上下になっていれば、常識的に上が先というのは分かりますが・・
始発駅で両側に列車が並んでいたり、大きな駅で行き先が同じでも発車ホームが異なる場合は
表示機は左右にあるわけで、
「今度と次・・・どっちが先やねん?」・・・と関西育ちの私は当初迷ったわけです。
ということで駅では今度が先のようですが、日常会話ではどっちでもイイんじゃないかな。







交信周波数編

●「この周波数混信・妨害・カブリ込み等ございましたら ご一報下さい」
●「メインからのQSY並びにこの周波数ワッチ又はお聞きのアマチュアステーションございましたらコールください」

丁寧すぎる言葉はニューカマーに多いようですが、クラブ局の先輩から教えられたり、ワッチして真似をするようです。
まあ、品性のないCB無線用語を使うよりはよほど マシだと思います。
でも無線はできるだけ簡潔な言葉を使用するのが基本です。
混信も妨害もカブリ込みも同じ意味ですし、ワッチもお聞きも同じですし、メインからQSYした人は聴いているわけです。
それにアマチュア局しか応答できませんので、いずれも無駄な言葉となります。
「太陽の日光の日ざし」とか「海の海底の底」とか「頭の頭痛が痛い」などと言っているようなことです。
あまり難くならずに意味を考えて、だれでもわかる普通の言葉でよいのです。



●「59です。コールとれません」
「こちらから59お送りします。コールとれておりませんもう一度お願いします。」・・・???

了解度5は「完全に了解できる」ということです。なのに聞き取れないとはどういうことでしょうか?
仕方がないのでもう一度大きな声でコールサインを言うと・・・
「えっと、QSBが激しくてちょっときびしいです。ラストレターだけもう一度お願いします」・・・といった具合だ。
だったら59なんて言うな!
RSレポートによって応答の仕方も変わってきますので、特に了解度は正確に通報しましょう。
アマチュアの世界では悪いレポートを送ると相手に失礼だという風潮があります。
実際に59以外のレポートを送ると「納得できない」という態度をとる人がいます。
でも電波状態がよくないのに59なんて送る方が私は失礼だと思います。
「おまけで59」とか「大サービスで59」では実験・研究になりません。
電波状態が悪いからといって「大変申し訳ありませんが、こちらからは55」なんて謝る必要はありません。
ありのままを送ってくれたほうが大変ありがたいのです。(私の場合は)



●「レポートは次回お送りします」
無線通信で重要なのは、まず電波の状態を相手に知らせることです。
それによって普通の話し方でよいか、何度か重複して送信するか判断します。
ですからRS(T)レポートは最初に通報してください。
●「レポート見落としました。次回お送りします」
レポートを見落とすとはどういうことなのか?電波が見えるのか?
電波のレポートは見るものではなく、耳で聴くものです。
まあ、リグのメーターのことを言っているのだと想像できますが・・・。
本来のS(信号強度)はリグのメーターの値ではありません。
リグのメーターはメーカーや機種によって設定値が異なりますので参考程度と考えてください。
RSレポートは自分の耳で聴いた自己判断でよいのです。
どうしてもリグの値でしかわからないという人は、とりあえずR(了解度)だけでも最初に通報してください。



●59は「ごうきゅう」か「ごじゅうきゅう」か?
RSレポートのR(了解度)とS(信号強度)は別々のものですから、
59の場合は「ごうきゅう」または「ファイブナイン」といいます。
「ごじゅうきゅう」や「ヒフティナイン」ではありません。
この点は分ればよいので目くじらをたてるほどのことではありません。
ただ、原則にこだわる人も多いので、できれば「ごうきゅう」又は「ファイブナイン」という習慣を身に付けたほうがよいでしょう。
また、「59オーバー」とか「59プラス60」など余計なことをいう必要はありません。
メーターの針が動かないからといって「50」なんていうのは大間違い。
S(信号強度)は1〜9で、それ以外はありません。
リグのメーターの様子を伝えるのはあくまでも参考情報としてください。
実際にQSLカードのRS欄に「59+60」と書いている人がいるのです。


●カードください
応答後すぐに「カードください」という人が非常に多くいます。
QSLカード集めもハムの楽しみの一つですからそれ自体は誰も批判はできません。
しかし、QSLカードは交信証ですから交信が成立しなけれはカード発行はできません。
交信成立の最低条件は、お互いのコールサインとRS(T)レポートの確認です。

実際の交信では・・・
「コールとれておりません。レポートは次回お送りします。よろしかったらカードのご交換をお願いします」
・・といった具合だ。 カード交換の約束は交信成立後にしてください。
元々カード交換の約束は、交信の一番最後におこなうという習慣で、
カード交換を口にすると「そろそろ失礼します」という暗黙の合図のようなものでした。
それが最近は、最初に言い出す人がほとんどです。

カード交換も含めてすべてのチェック事項を確認しないと落ち着いて話しができない人・・・
交信中にカードを書き上げる人・・・
カード集めが目的でカード発行してくれない人とは時間の無駄だから早々に切り上げたい人・・・
カードよりいろいろな話しをしたい人・・・
人それぞれ考え方の相違がありますので、
私の場合はカード交換のタイミングは相手に合わせています(自分から言う場合はファイナルの意味です)。
いずれにしても、交信成立後が条件です。


●さっそく電波出してます
「今日ハムショップで新しいリグを買いましたので早速電波を出しています」 とか・・
「昨日○×さんからいただいたリグを使っています」
・・のようなことを時々交信中に聴きますが、現在は包括免許ではありませんので違法行為になります。
新たにリグを取得したときは、増設、取替、変更等の届出をして許可を受けなければなりません(許可まで約1ヶ月かかります)。
免許の範囲内のリグであれば悪質度は低いと思いますが、一応違反です。
黙っていればわからないのに、わざわざ言わなくてもと思いますが、多分知らないのでしょう。
リグは一台ずつ許可を受けてから使用しましょう。



●漢字解釈は・・・
名前をどういう漢字で書くかを伝える際に「漢字解釈は田んぼの田に真ん中の中」という表現をする人が多いようです。
これは警察・消防などの業務無線用語を真似たものだと思われます。
アマチュア無線で交信相手の名前の漢字を確認する必要はありませんが、電子ログに漢字で入力したいからでしょう。

それにしても漢字を解釈とは奇妙な表現です。
漢字解釈は本来なら漢字の意味を説明することですが・・・。
相手が尋ねた場合には 「漢字で書きますと・・・」 と普通にいえばよいのでは。


●行政区は・・・
自分の運用場所を通報するのに、
「こちらのQTHは神奈川県は横浜市、行政区は旭区となっております」
・・・と奇妙な言い回しをする人がけっこういます。
「こちらは横浜市旭区です」といえば簡潔で明快です。


●スタンバイします
受信するという意味で「スタンバイします」という表現をよく聞きますが正しくありません。
スタンバイ(stand by)は相手に対して「待て」「待機せよ」という命令形です。
よって自分が「スタンバイします」というのは間違った使い方になります。
自分が待機する、つまり「受信します」という場合はスタンディング・バイ(standing by)といいます。
例:コーリングCQ アンド スタンディング・バイ(Calling CQ and standing by.)

無線に限らず、日本では「スタンバイ」という言葉は「待機」の代名詞のように使われています。
でもアマ無線は世界共通ですから、外国局に誤解されないように、
スタンバイとスタンディング・バイの区別はハッキリさせるべきです。
国内では無理に英語を使用せず「受信します」「待機します」「待機してください」・・といえばよいのです。


●コーリングユー
CQ呼出しの局に応答する際に自分のコールサインの後にコーリングユーという人が結構います。
でもコーリングユーだけでは「貴方を呼んだ」という呼び捨てのような感じがします。
コーリング・ユー アンド スタンディング・バイ(Calling you and standing by)=貴方を呼んで受信に入ります。
というようにコーリングユーのあとには必ずスタンディング・バイと付け加えてください。


●ショートブレイク
ショートブレイク[short breake]を質問に対してのみ「短く簡単に返答してください」
というニュアンスで使っている人が多いようですが、これは大間違いらしい。
英語にちょっと詳しい複数の人に聞いたことがあります。
私は英語が母国語ではないので、どういう感じに受け取られるのかよく分かりませんが・・
英語圏では[short memory breake off]の口語的短縮形で
非常に乱暴なヤクザ言葉になるようですので絶対に使用すべきではありません。
「この役立たずめ!焼きを入れてやれ」 といったニュアンスでしょうか?。


●バイ・ザ・ビューロ/バイ・ア・ビューロ
ビューロ[bereau]は事務所の意味ですが、アマチュア無線ではQSLカードの転送業務をやっているところ。
QSLカードをビューロ経由で交換するというとき 英語の場合はバイア・ザ・ビューロ[via the bereau]といいます。
バイ・ア・ビューロ[by a bereau]やバイ・ザ・ビューロ[by the bereau]というのは間違いです。
他人の交信を聞いて真似をするのが原因だと思います。
国内交信では無理に英語でいう必要はないのです。
発音の良し悪しは別問題としても、英語の語句は正しく言いましょう。


●ベスト73(セブンティスリー)
73は[Best regard]を意味する電信用略語。最大の敬意を表す意味であり、手紙でいう敬具に相当する。
一般的には男性に対する「さようなら」という意味で使用されます。
意味からすれば女性に73と送ってもよいと思いますが・・・。

注意したいのは、「ベスト73」とか「ベリーベスト73」という人が結構多いことです。
73には既に「ベスト」が含まれているので非常に可笑しくなります。
発音の問題でも「セブンテースリー」ならまだ許せるが、「セブンツースリー」だと「723」か「7 to 3」になってしまう。
また「ななさん」とか「ななじゅうさん」というのも奇妙である。
とにかく間違って使うよりは電話では「さようなら」と言ったほうが簡単です。


●88(エイティエイト)
「Love and kiss」を意味する電信用略語で、女性局に対する「さようなら」の意味として使われることが多いようです。
しかし意味からすれば、ごく親しい間柄(妻、娘、恋人など)しか使えません。
国ごとに文化が異なりますので、気軽に使用すると失礼にあたることもあり得ます。特に海外との交信では注意が必要です。
電話の場合は「さようなら」と言えば済むことなので、誤解を生じる可能性がある88をわざわざ言う必要はないと思います。


●この周波数オープンです
交信終了時に「周波数オープンです。各局ありがとうございました」とか
「このチャンネルクリア」などと宣言することについては賛否両論があります。

私自身は言っても言わなくてもどちらでもよいと思います(私は特に言いません)。

周波数は誰かに借りているわけではありませんので、特に「お借りします」とか「お返しします」とか言う必要はありません。
別に言ったからといって、メインではなく交信周波数(サブ)であれば時間の無駄だとか余計な言葉だと、目くじらを立てるほどのことでもありません。
終了するときは何も言わなくてもよいし、気になる人は
「ラストコールです」とか「これでCQを終了します」のようなことでも言えばよいのではと思います。
周波数を使用したいときは、よくワッチして他局の妨害にならなければ勝手に使えばよいのです。








Q符号の使い方

Q符号は電信による問いと答えを容易にするためのもので、アマチュア無線に限らず、他の業務無線とも共通の符号です。
電話では言葉の方がわかりやすいのでわざわざQ符号を使う必要はありません。決して使ってはいけないというわけではありませんが、使う場合は意味を理解したうえで使用するべきです。電話で使う場合は名詞的になる傾向があります。実際には間違った使い方をしている人が非常に多いようです。
また、QRアメリカ、QTヘンリー、QRマイク、QRゼブラ等Q符号のラストをフォネティックコードで言う人(古いコールサインの人が多い)がいますが、これでは普通の言葉より長くなってしまい、Q符号の意味がありません。OMだからといって真似をしないようにしましょう。



●QRA
ほぼ全員が「QRAは鈴木と申します」、「クラブQRAは○×高校無線部」
・・・のような使い方をしていますが、これは間違いです。

QRAは「貴局名は何ですか」・・に対して
答えとしては「こちらの局名は○○です」という意味で、電話で使う場合は局名ということになります。
局名とは人の氏名ではありません。
局名とは監督官庁(総務省)から与えられた名前である呼出符号(識別信号)つまりコールサインのことです。
QRA=コールサインです。

だれが勘違いしたのか知りませんが、
QRAが人の名前だという間違った認識がOMからニューカマーまで日本全国に拡大してしまいました。
無線雑誌や入門書の多くもQRAが人の名前のような間違った記述を平気でしています。
インターネットでもQRAを人の名前というように紹介されていることが多いようです。
「みんな名前だと思っているのだから、わかればいいじゃないか」という人もおり、困ったものです。
ニューカマーが間違った使い方を正しいと思い込み真似をしてしまうのです。
たとえ日本国内で通用しても海外では通用しませんので、勘違いしたままだと海外との交信で恥をかきます。
そうすると今度は「オレは海外との交信はしない」とか「日本人同士だから構わない」と言った理屈が出てきます。
日本語であれば慣用の表現でもかまいませんが、Q符号は世界共通のものです。
だから日本国内しか通用しない使い方は止めてもらいたいものです。

「名前は鈴木です」といえば一番わかりやすいので、電話でQRAというのはやめましょう。
電信でQRA?と聞かれればコールサインを打ち返しますが、電信ではQRAはほとんど使用されません。
だからQRAというQ符号は実用上存在しないと考えていいかもしれません。
元々QRAは運用場所を示すQ符号だったようですが、
QTHが追加されたのでその後QRAは局名を示すようになったようです。
いずれにしてもQRAに人の名前という意味は全くありません。
でも、ここまで間違った使い方が一般的になってしまったら指摘しても嫌われるだけです。
名前のことをいっているんだなあという程度に思って、自分だけは使用しないようにすればよいと思います。


●QTH
QTHは緯度経度で示す現在地点ですが、電話では運用場所ということになります。
それを住所と勘違いしている人もいます。
通常は自分の居住地が無線設備の常置場所(設置場所)になっていると思います。
移動しない局(固定局)又は常置場所運用の場合は問題ないのですが、
移動する局が移動運用した場合はその移動地がQTHです。
間違った例として「相模原モービル、QTHは平塚です」のようにいう人がいます。
これは住所と混同した例ですが、この場合は相模原がQTHです。
ホームQTHといえば意味はわかりますが、奇妙な表現です。
移動運用では移動地の通報は必要ですが自分の住所を言う必要はありません。
相手が尋ねた場合に「常置場所は平塚です」と言えばよいのです。


●QRZ
「だれかこちらを呼びましたか」という意味です。
自局が呼ばれたことはほぼ間違いないが、相手のコールサインがわからない場合に、
相手のコールサインの代わりに「QRZこちらは7L4CWL」のように使用します。

しかし、誰も呼んでいない(受信もしていない)のに、
一つの交信が終わるとすぐに「QRZステーションございますか」などと奇妙な使い方をする人が多いのが実情です。
QRZを「他にお聞きの方いらっしゃいますか」という意味で使っているようです。
応答する側は、QRZといったら、既に呼んだもの以外は電波を出してはいけないのです。


●QSY
「50.250MHzにQSY」のように周波数の変更を指示するものです。

実際の交信では「昨年、川崎から横浜にQSYしました」とか
「新しいリグを買いましたので古いリグは○○さんのところへQSYしました」というような表現をよく聞きます。

QSYは決して人や物の移動を指すものではありません。あくまでも周波数の変更に限ります



●QR
混信という意味で不法CB無線やパーソナル無線で当たり前のように使用されています。
アマチュアバンドでもCBからはじき出された者が使っています。
半端な知識でQRMの略のつもりでしょうが、QRだけではQ符号の意味を成していません。
さらに俗語として「道路が混雑・渋滞」、「体が忙しい(ボディQR)」の意味でも使用されています。
正統派アマチュア無線家は真似をしないようにしてください。


●Q符号は世界共通
言葉は時代とともに変化していきますが、Q符号は運用規則に定められている世界共通のものです。
運用規則の改正でもない限りQ符号の意味が変わることはありません。
日本国内だけしか通用しない使い方は止めましょう。
書物やインターネットで初心者向けに解説するのはよいのですが、
その場合は電波法の運用規則等で正しい意味を確認してからにしてください。







フォネティックコード



フォネティックコードの歴史は古く、軍事用、電信電話会社用、航空用などいくつかの種類がありましたが、戦後に現在の基本形に統一されました。運用規則に記載されている通話表はよく吟味されており、英語圏以外の人が聞いても分るような語句となっています。しかし、実際の交信を聞いていますと決められている語句以外のものもよく使用されています。昔の通話表の名残だったり、馴染みのある地名だったり様々です。

運用規則に記載されている語句に地名は少ないです。これはQTHと間違えるからという説と、現地語で発音すると頭文字を想像できないような発音になるという説があります。一方で運用規則外の慣用のフォネティックコードには地名が多くあります。これは馴染みのある地名の方が覚えやすい(特に英語圏以外の人同士)からでしょうか。特に「ジャパン」や「アメリカ」などは正式なものより馴染みがあります。

いずれにしても、まずは規則通りの正式なフォネティックコードを使用すべきでしょう。
そして伝わりにくい場合に限って他の慣用のものを使用してもよいでしょう。
自分のコールサインの語呂が悪い場合に慣用のものを交ぜて使っている人もいるようです。
ただし相手に伝わらないと意味がありませんので、自己流のフォネティックコードは厳禁です。
欧文通話表
運用規則による正式なもの その他よく聞く慣用のもの
文字 使用する語 発音  語句(カタカナ発音)
A ALFA アルファ America (アメリカ)、Able(エイブル)
B BRAVO ブラボー Boston (ボストン)、Baker (ベーカー)
C CHARLIE チャーリー Colombia (コロンビア)、Canada (カナダ)
D DELTA デルタ Denmark (デンマーク)
E ECHO エコー Edward (エドワード)
F FOXTROT フォックストロット Florida (フロリダ)、France (フランス)
G GOLF ゴルフ Germany (ジャーマニー)
H HOTEL ホテル Hawaii (ハワイ)、Honolulu (ホノルル)、Henry (ヘンリー)
I INDIA インディア Italy (イタリー)
J JULIETT ジュリエット Japan (ジャパン)、Jack (ジャック)
K KILO キロ Kentucky(ケンタッキー)、King (キング)
L LIMA リマ London (ロンドン)
M MIKE マイク Mexico (メキシコ)、Mary (メリー、メアリー)
N NOVEMBER ノベンバー Nancy (ナンシー)、Norway (ノルウェー)
O OSCAR オスカー Ocean (オーシャン)、Ontario (オンタリオ)
P PAPA パパ Peter (ピーター)、  Portugal (ポーチカル) ?
Q QUEBEC ケベック Queen (クィーン)
R ROMEO ロメオ Radio (レィディオ)、Robert (ロバート)
S SIERRA シエラ Spain(スペイン)、Suger (シュガー)、Santiago(サンチャゴ)
T TANGO タンゴ Tokyo (トーキョー)
U UNIFORM ユニフォーム Uncle (アンクル)
V VICTOR ビクター Victory (ビクトリー)
W WHISKEY ウィスキー Washington (ワシントン)
X X-RAY エクスレイ
Y YANKEE ヤンキー Yokohama (ヨコハマ)、Yoke (ヨーク)
Z ZULU ズール Zebra (セブラ)、Zanzibar (ザンジバル)

カタカナ表記は正確ではありませんので目安として考えてください。
発音の注意点
発音が悪いのはある程度仕方が無いのですが、特に注意すべき点は・・・
 を「ジュリエイト」と発音する人が非常に多いです。「J8」と間違える可能性がありますので「ジュリエット」といいましょう。
を「キロワット」というと「KW」と間違えます。
を「フォックス」と略すと「きつね」になります。昔はFOXというフォネティックコードもありましたが、「フォックストロット」は社交ダンスの名称ですので略さずにいいましょう。
を「キューベック」というのも気になります。キュービック(Cubic)かと思われるかも。
を「クリスタル」とか「クリスマス」という人がたまにいます。略記でX’とは書きますが、コードとしてはXなのかCなのか分かりませんのでやめてください。Xはエックスレイの他に適当な言い方がありません。
を「ゼーター」と発音するのはマニアックな感じがします。
まずは基本形で!
運用規則に記載されているフォネティックコードを使用するのが基本ですが、
やむなくそれ以外の慣用のものを使用する場合は特に注意が必要です。

を「ポーチカル」という人がいます。意味不明ですが使う人が多いのも事実です。
似た発音を辞書で調べましたが、恐らくポルトガルを指すポーヂュガル(Portugal)だと思います。
しかし「ポーチカル」とは発音しないでしょう。奇妙な語句は使わないようにしましょう。
●英語が苦手な人(ローマ字読みしかできない人)に対して「C」を「カナダ」というと「K」と間違える可能性があります。
同様にコロンビアをK、ジャーマニーをJ、アンクルをA、エイブルをEと捉えてしまうことも考えられます。
英語が苦手な人のことも考えて世界共通の基本形が出来たのですから、
まずは運用規則通りのフォネティックコードを使用しましょう。

自己流は厳禁
なかには運用規則ではなくそれ以外の一般的な慣用のものでもなく、
昔の軍事・航空・電信用でもなく、自分で発明したフォネティックを使う困った人が結構います。
誰も使わない語句を言って得意になっています。
皆が同じ語句を使ってこそフォネティックコードの意味があるのです。
仲間とのラグチューなら許せるとしても、自分で勝手に考案したフォネティックコードの使用は厳禁です。
初心者にも配慮を!
ニューカマーにとっては、フォネティックコードを覚えるのも結構たいへんなものです。
なんとか覚えても、実際には聞き慣れない色々なフォネティックコードを使う人が多くて戸惑います。
なかにはわざと難解な言い方をして初心者を困らせているのではないかと思うこともあります。

それから、1つのコールサインの中に同じローマ字が複数ある場合はフォネティックコードを必ず統一しましょう。
例えば、JJ*JGGを「ジャパン・ジュリエット・*・ジャック・ジャーマニー・ゴルフ」のように、
1つのコールサインに異なるフォネティックコードを混ぜるとベテランでも一瞬戸惑ってしまうものです。


        



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