ではなぜ,虹では特定の方向に特定の色が付いて見えるのでしょうか?
ある方向からくる光の中に特に強い光の色(波長)があれば,我々は,その方向の光はその色に見えます。
では光の強さは何で決まるか? それは光のエネルギー密度……ということになりますが,これを光線の本数の多い少ないでイメージするならば,光線の詰まり具合,すなわち光線密度の大小で決まる……といえます。
太陽光線は雨滴に満遍なく均等に入射してきます。この段階では,光線密度に差はありません。しかし雨滴で散乱されると,散乱角によって光線密度にばらつきが出てきます。一定の射出角に含まれる光線数が多ければ明るい,少なければ暗い……というわけです。
ここで$\varDelta y/\varDelta \theta$ は,グラフの勾配 $\varDelta \theta/\varDelta y$ の逆数になっていることに注意してください。
上図において,散乱角 $\theta$ は極値を持っており, $\maru{4}$ 式は点aで極大値, $\maru{5}$ 式は点bで極小値をとります。すなわちこの部分では,衝突係数 $y$ の値が少しずれても散乱角 $\theta$ にほとんど変化がなく,光線が小さい散乱角の間に密集していることになります。数学的には,この位置で $\varDelta \theta/\varDelta y=0$ ,よってその逆数である $\varDelta y/\varDelta \theta$ の値は無限大に発散しており,光線密度は他の部分より極端に大きく,光強度が極めて強くなっていると言えます。すなわち,散乱角が極大値,極小値をとる角度方向で光が最も強いということが言えます。
この散乱角の極大値,極小値が屈折率の関数になっていて,値が波長(色)によってわずかずつずれているために,角度によって違った色の光が目に入ることになり,これが虹として見える……というわけです。
次の解説,「解説3(散乱角の詳細計算)」 で,散乱角の極大値,極小値を求めます。
虹の話
概要
解説1(解説1:雨滴による虹散乱)
解説2(虹の色と散乱角)
解説3(散乱角の詳細計算)
解説4(反射率)
解説5(虹散乱での反射率)
*** 以下,過剰虹 関連 ***
解説6(波動光学)
解説7(過剰虹成因の概要)
解説8(波面の式)
解説9(虹の光強度の式)
解説10(波動光学による虹)