解説2:虹の色と散乱角

 

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強い散乱光が射出される方向:

 雨滴に太陽光線が当たると,その衝突係数 $y$ (=光線の入射位置 $b$ ÷雨滴半径 $a$ )の値によって前ページで求めた $\maru{4}$ 式, $\maru{5}$ 式で与えられる角度の方向に散乱されます。 $0 \le b \le a$ ゆえ $0 \le y \le 1$ であり,観測者の目には雨滴の一滴々々から様々な値の衝突係数 $y$ に基づく様々な色の散乱光が様々な角度で届くことになります。

 ではなぜ,虹では特定の方向に特定の色が付いて見えるのでしょうか?

 ある方向からくる光の中に特に強い光の色(波長)があれば,我々は,その方向の光はその色に見えます。

 では光の強さは何で決まるか? それは光のエネルギー密度……ということになりますが,これを光線の本数の多い少ないでイメージするならば,光線の詰まり具合,すなわち光線密度の大小で決まる……といえます。

 太陽光線は雨滴に満遍なく均等に入射してきます。この段階では,光線密度に差はありません。しかし雨滴で散乱されると,散乱角によって光線密度にばらつきが出てきます。一定の射出角に含まれる光線数が多ければ明るい,少なければ暗い……というわけです。

 上図のように,衝突係数 $\varDelta y$ の幅に入射した光線が散乱角 $\Delta \theta$ の角度幅に散乱されたとすれば,同じ $\varDelta \theta$ に対して $\varDelta y$ が大きいほど $\varDelta \theta$ 内に多くの光線が含まれていることになり,光線密度は大きい。つまり,光線密度は $\varDelta y/\varDelta \theta$ に比例するといえます。

 上図は,前ページ $\maru{4}$ 式, $\maru{5}$ 式に基づく衝突係数 $y$ -散乱角 $\theta$ の関係図です(詳細は解説3参照)。
 ここで$\varDelta y/\varDelta \theta$ は,グラフの勾配 $\varDelta \theta/\varDelta y$ の逆数になっていることに注意してください。
 上図において,散乱角 $\theta$ は極値を持っており, $\maru{4}$ 式は点aで極大値, $\maru{5}$ 式は点bで極小値をとります。すなわちこの部分では,衝突係数 $y$ の値が少しずれても散乱角 $\theta$ にほとんど変化がなく,光線が小さい散乱角の間に密集していることになります。数学的には,この位置で $\varDelta \theta/\varDelta y=0$ ,よってその逆数である $\varDelta y/\varDelta \theta$ の値は無限大に発散しており,光線密度は他の部分より極端に大きく,光強度が極めて強くなっていると言えます。すなわち,散乱角が極大値,極小値をとる角度方向で光が最も強いということが言えます。
 この散乱角の極大値,極小値が屈折率の関数になっていて,値が波長(色)によってわずかずつずれているために,角度によって違った色の光が目に入ることになり,これが虹として見える……というわけです。

次の解説,「解説3(散乱角の詳細計算)」 で,散乱角の極大値,極小値を求めます。

  虹の話   概要
  解説1(解説1:雨滴による虹散乱)
  解説2(虹の色と散乱角)
  解説3(散乱角の詳細計算)
  解説4(反射率)
  解説5(虹散乱での反射率)
   *** 以下,過剰虹 関連 *** 
  解説6(波動光学)
  解説7(過剰虹成因の概要)
  解説8(波面の式)
  解説9(虹の光強度の式)
  解説10(波動光学による虹)