4.2010年代以降の変化 |
最後に,これまでの知見をまとめてみよう.メッシュデータにもとづく2010年時点での都市地域(mdbUA2010)の人口推移について,2015年と2020年の国勢調査のデータを加えた結果,下記のような変化が明らかになった.2010年以降の,いわゆる人口減少の段階に入った日本の都市がどのような状況にあるかを,そこからうかがい知ることができる.
まず,118の都市地域全体としては,これまで人口を拡大し続けてきた拡大都市の約半数で,人口の停滞が見られるようになった.また,これまで人口を継続的に維持してきた持続都市についても,その3分の1が人口減に転じている.すなわち,これまで人口を維持ないし拡大してきた都市地域の半数近くが,人口の停滞ないし減少を経験するようになっている.
とりわけ,人口の増加が停滞し始めた都市地域は倍以上の数になっている.その多くは大都市周辺の都市であり,関東圏と関西圏周辺の都市の多くが人口を停滞させており,名古屋圏と福岡周辺については,比較的停滞に転じている都市地域が少ない.それぞれの大都市圏の成長力の違いを反映しているのかもしれない.
これにたいして,これまで人口の減少が見られた都市の大部分は,そのまま人口が減少しており,これまで人口を維持してきた持続都市のいくつかは人口を減らしている.全体として人口を減らしている都市地域は増加している.
このような全体的な人口の停滞ないし減少とは異なった動向を示す都市地域も,一部には存在する.高崎,四日市,久留米,宮崎,沖縄の5つの都市地域は,これまで維持してきた人口規模を2010年以降増加させている.また,富山はそれまで減少し続けていた人口を回復しつつあり,鳥取も人口の減少に歯止めをかけつつある.
5.人口減少下の日本都市の現状と課題 |
以上,われわれが2010年段階で設定した日本の都市地域について,その後の2015年と2020年のデータを追加した分析によって,人口減少下での日本都市の現状が明らかになった.
当然のことながら,多くの都市が人口の減少ないし停滞の局面に入っている.これまで人口を増やし続けてきた都市の半数近くは人口が停滞し始め,人口が頭打ちになる停滞転化都市は倍以上に増えている.その大半は関東圏と関西圏周辺の都市で,この両都市圏の成長が鈍化しているということだろうか.
これにたいして名古屋都市圏と福岡都市圏は比較的良好な状態を保っている.また,持続都市から人口が増加し始めた都市や,減少していた人口を回復しつつある例外的な都市も一部存在している.
大都市周辺の都市の停滞が,本当に大都市圏の成長力の鈍化を示しているのか,他方,人口を回復しつつある一部の都市の理由はどこにあるのかを,今後明らかにしていくことが,人口減少下にある日本の都市の将来を考える上で,課題となるだろう.
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放送大学 教養学部
社会と産業コース
玉野和志
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