2005年(平成17年)6月23日
中国人戦争被害者賠償請求弁護団
団長 弁護士 尾山 宏
団長代行 弁護士 小野寺利孝
劉連仁強制連行・強制労働事件弁護団
団長 弁護士 高橋 融
中国人強制連行・強制労働事件弁護団全国連絡会
事務局長 弁護士 森田太三
1 本日、東京高等裁判所第14民事部は、劉連仁強制連行・強制労働事件について判決を言い渡した。
判決は、戦後の救護義務違反による損害賠償責任を認めたものの、国家賠償法6条(相互保証)の適用がないこと、および、除斥期間の経過を理由にして、請求権を否定した。
しかし、中国との間で相互保証がないとして国家賠償を適用しないことは、人権救済の観点から相互保証を広く認める国際社会における解釈の大勢に逆行し、極めて不当である。
また、除斥についても、劉連仁が権利行使をしなかったことが著しく正義公平の理念に反するような特段の事情がないとしていることも不当である。
2
しかし、他方で判決は、劉連仁が国によって強制連行された事実、昭和鉱業所での労働が極めて劣悪な労働条件下の過酷なものであり強制労働であること、
その結果、劉連仁が昭和鉱業所から逃亡した後の過酷な13年間の過酷な体験をしたこと、それが国の救護義務違反の結果であることなどの事実をすべて認定し
た。また、国が外務省報告書を焼却し、国会で虚偽の答弁を行って事実を隠蔽したことの不公正さも認定した。
3 国は、すでに高齢である劉連仁氏の妻趙玉蘭さんをはじめ遺族のためにも、速やかにこの事件を解決することが求められている。日本と中国で寄せられた
260万余もの解決要求署名は、日本政府がこの問題の早期解決を行う政治的、道義的責任のあることを多くの人々が支持していることを示している。
4
本判決がすべての事実と国の救護義務違反を認めた以上、国はこの司法付の判断を真摯に受け止め、強制連行・強制労働という人間の尊厳を破壊する残虐行
為を行った戦争犯罪行為を正面から認め、日本に強制連行され,強制労働させられた約4万人の中国人労働者全員に対して、早急に謝罪と補償を行ない全面解決
に踏み出すべきである。このことは、日中両国の未来に向け真の友好と平和を築くうえで避けて通ることのできない不可欠の課題となっている。
国は、今こそ中国人強制連行、強制労働事件の全面解決に向けた政治的決断をなすべきである。