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強制連行群馬訴訟 東京高裁 判決に対する弁護団声明

声明
2010年2月9日
中国人強制連行・強制労働群馬訴訟弁護団
代表 廣田 繁雄

1 本日,東京高等裁判所第10民事部(園尾隆司裁判長,藤山雅行裁判官,藤下健裁判官)は、中国人強制連行・強制労働損害賠償請求控訴事件(平成19年(ネ)第5051号)に関し、被控訴人日本国,同鹿島建設株式会社及び同青山管財株式会社に対する損害賠償等請求を退けた前橋地方裁判所の第1審判決を是認し,本件控訴を棄却した。

この判決は,戦後60年余りを経てなお被害回復を受けない控訴人らに対する司法の積極的な役割を放棄したものといわざるを得ない。当弁護団は,速やかに上告及び上告受理申立手続をとり,最高裁判所に対し、控訴人らが被った被害の賠償を求めていく決意である。

2 ところで、東京高等裁判所判決は,控訴人らが強制的に連行されたうえで,賃金の支払いも受けずに強制的に労働させられた実態を認定したうえで,被控訴人日本国と同企業2社との共同不法行為を判示した。この点,被控訴人日本国や同企業2社の不法行為責任を明示しなかった第1審判決より前進したものとして評価することができる。

しかしながら,東京高等裁判所は,国家無答責の適否,安全配慮義務違反の有無,時効・除斥期間の適用の許否といったその余の論点にはまったく触れるところがなかった。しかも、日中共同声明第5項により個人賠償請求権は裁判上訴求する権能を失ったと判断した最高裁第2小法廷西松建設事件判決(2007年4月27日言い渡し)については、控訴人代理人らが同事件では提出されなかった新たな証拠を数多く提示し、個人賠償請求権に関する放棄意思の不存在を具体的に指摘していたにもかかわらず、「控訴人らが指摘する事実のすべ
てを考慮に入れても…上記判断は変更の要をみない…」(判決書37頁)とし、なぜ変更する必要がないのか、具体的な理由を全く説明していない。問答無用な切り捨てという外はない。

このように東京高等裁判所の判断は,現実に被害を受けた中国人らがその回復を求めて本訴を提起している事実に目を瞑り,上記最高裁判決に従った不当な判決である。

3 強制連行・強制労働による肉体的,精神的被害を受けた被害者全体の被害回復は,被害者らが高齢化し次々と亡くなっている現状を踏まえると,まさに差し迫った急務である。戦時中の強制連行・強制労働問題を未解決のまま放置して,日本が国際社会において、名誉ある地位を占めることなど到底おぼつかない。日中両国の友好関係をより深め、国民相互間の信頼を醸成し,日本国憲法の掲げる平和主義の理念を現実のものとしていかなければならない。

最高最4.27西松判決は、強制連行・強制労働による被害の甚大性に鑑み,その解決へ向けての努力を求めている。これを受けて西松建設は,強制連行・強制労働の被害者に対し、既に被害補償へ向けた和解を成立させ、あるいは現に和解協議を進めている。本件においても,被控訴人日本国,同企業2社は,同判決を真摯に受け止め,強制連行・強制労働被害の解決に向けて積極的な姿勢で臨むべきである。

いま,控訴人らを含む被害者全体の高齢化に歯止めはない。当弁護団は、被控訴人らに対し、被害者の存命中に、加害の事実を正面から認めて謝罪し,全被害者の尊厳を回復するため、道義的,社会的責任を果たすよう、強く要請するものである。

以上

 

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