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南京大虐殺の裁判

731・南京・無差別爆撃李秀英さん名誉毀損本多勝一さん名誉毀損夏淑琴さん名誉毀損夏淑琴さん名誉回復
淑琴さん名誉毀損訴訟

 

原告と請求内容

夏淑琴さん

提訴

2006年6月30日 東京地裁

東京地裁判決

2007年11月2日 勝訴

東京高裁判決

2008年5月21日 勝訴

最高裁決定

2009年2月5日 勝訴

支援団体

南京への道・史実を守る会

夏淑琴さん名誉棄損訴訟とは?

 夏淑琴さんは南京大虐殺の被害者の一人です。1937年12月13日、南京での凄惨な虐殺が巻き起こる中、日本軍によって夏淑琴さんの家族、そして隣家の人々が、夏淑琴さん(当時八歳)とその妹(当時四歳)を除いて皆殺しされました。夏さんご自身も日本軍に銃剣で刺されるなどの被害を受けましたが、妹とともに、奇跡的な生還を遂げました。

 南京大虐殺否定派の中心人物で、歴史修正主義の右翼「学者」である東中野修道氏(亜細亜大学教授)は、著書『「南京虐殺」の徹底検証』(展転社、1998)において、また同じく松村俊夫氏も、著書『「南京虐殺」への大疑問』(展転社、1998)において、それぞれ南京事件の被害者夏淑琴さんを強引な理屈で「ニセ被害者」「ニセ証人」だと侮辱しました。この事実を知った夏淑琴さんは、2000年11月、中国・南京で名誉毀損訴訟を起こしました。東中野氏と松村俊夫氏及び展転社を被告とした裁判でしたが、被告人らは代理人も立てず、一度も出廷することなく敗訴が決定しました。
 この中国での訴訟に対し、2005年1月、東中野氏と展転社は、中国の裁判での賠償金支払い命令に関し、日本国内での支払い義務がないことを確認する「債務不存在確認訴訟」を起こしました。この訴訟に対して、2006年6月、夏淑琴さんが原告となり、東中野氏と展転社を被告とする反訴として提起したのが、ここで紹介する名誉毀損訴訟です。

東京地裁での闘い

●結審の報告

 歴史修正主義右翼「学者」東中野修道が、その著書『「南京虐殺」の徹底検証』(展転社刊)において、南京事件の被害者夏淑琴さんを「ニセ被害者」「ニセ証人」呼ばわりしている問題で、夏淑琴さんが東中野修道と株式会社展転社を名誉毀損で提訴した訴訟の最終弁論が6月27日、開かれました。

 「南京への道・史実を守る会」は、毎回の口頭弁論に合わせ、裁判所前で夏さん支援のビラまき宣伝行動を行ってきましたが、昨年6月30日の第1回口頭弁論以来、毎回、西村修平、阿羅健一ら右翼が東中野の応援にやって来て、私たちと宣伝合戦になるのが恒例でした。けれども前回(6月29日)の弁論から彼らはやって来なくなり、この日の最終弁論の前も、やや物足りないと思いながら、裁判所に向けてのアピールの宣伝を行いました。

 さて、その最終弁論では原告・被告双方の代理人がそれぞれ約15分ずつ、最終準備書面の要旨を陳述しました。原告(夏さん)の代理人は、1937年の南京において日本軍によって家族を惨殺され、自らも瀕死の重傷を負い、戦後そのような歴史を繰り返してはいけないと、その被害体験を証言している夏淑琴さんが東中野の書籍によって「第二の被害」というべき侮辱を受けたこと、東中野が夏さんを「ニセ被害者」扱いした本件書籍の記述に相当な根拠がないこと等を縷々述べました。

 これに対する被告(東中野ら)の代理人の陳述は、要するに名誉毀損が成立しないというものですが、聴いていて睡魔に襲われるほど覇気のないものでした。

 なお、この日の最終弁論では、原告(夏さん)の側から最終準備書面とともに、裁判所前での西村修平らを写した2枚の写真が裁判所に証拠提出されました。それは、昨年6月30日の第1回口頭弁論の時のもので、西村修平らが「指名手配シナ人・夏淑琴に神罸 罪状 大嘘吐き」「シナ・中共の売女・夏淑琴に天罸を」などと書かれたプラカードを裁判所前で、夏さん本人にも見えるように掲げている写真ですが、その立証趣旨は、「被告東中野修道の書籍によって、それを真実と信じて、原告(夏さん)に侮辱的な言辞を弄する者が多数いて、東中野の書籍の発行により原告(夏さん)の受けた損害は甚大である」というものです。

 東中野の応援団として裁判所に押し掛けてきた、西村修平や阿羅健一達の行動は、東中野らが支払わなければならなくなる慰謝料の額などに確実に影響するでありましょう。

 そして、この日の弁論は、最後に裁判長が弁論終結を宣言し、審理手続が終了しました。

 判決言渡し期日は、11月2日(金)午後4時30分と指定されました。(「南京への道・史実を守る会」事務局・指環)

●判決の概要

 ほぼ原告側の主張を認め、東中野氏と展転社に対して350万円、東中野氏に対し50万円、総額400万円の支払いを命じる判決が下されました。しかし、注目すべきは金額もさることながら、判決文で東中野氏の研究姿勢について「被告東中野の原資料の解釈はおよそ妥当なものとは言い難く、学問研究の成果というに値しないと言っても過言ではない」と厳しく断じている点です。

 

東京高裁での闘い

●9月6日(金)法廷傍聴記

 9月6日(金)午前11時から東京高裁の大法廷で夏淑琴さんの名誉回復を実現させる法廷が開かれました。今回は、原告・被告双方が準備書面の概要を5分ずつ述べるという設定でおこなわれました。

 原告側代理人の近藤弁護士から4点にわたり、簡潔な意見が述べられました。

@被告は中国には司法の独立はない、というが、日本の最高裁判所の判例でも、大阪高裁の次案で、外国の裁判所の判決を前提におこなわれているものであり、被告の主張は失当である。

A管轄権の問題・・・被告は中国で松村本の海賊版が出版されていることをしらなかった、と主張しているが、海賊版の出版の有無にかかわらず、名誉毀損自体は、それ以前に成立しているものである。

B被告は、松村は私人である、と主張するが、マスメディアにも登場している著名人である。この本自体は別の裁判で「研究に名をかりたひぼう中傷の本である」旨、判決がでている。

C被告側は、日中間に相互補償がない、という大阪高裁の判決を援用しているが、この判決自体間違ったものであり、しかもこれは経済次案で、本件とは事情が異なる。

と明快に述べられました。

 これに対して、被告側のあらくら弁護士の弁論は乱暴きわまる暴論でした。

 民事訴訟法第118条の解釈の問題だときりだし、法規範は一般的、具体的妥当性が求められるし(このことは当然ですが)、中国の司法制度について論じ始めました。そして、中国の裁判所は、民訴法にいう「外国の裁判所に当たらない」というのです。中華人民共和国には司法の独立はない、というのです。バチカンの法王選出にカトリックの枢機卿が何回も投票していたことに比べれば、中国の代表選出の過程はまったく民主主義的ではない独裁国である。司法の独立が有る独裁国はない、などというのです。

 裁判官というのは法にのみ拘束されるはずなのに、中国では、人民大会、共産党は干渉してもよいことになっている、と主張しました。

 もし、この裁判で、中国の判決の執行を認めるようなことがあれば、@日本には無数の中国批判の書物があるが、これが中国で訴えられる。Aそうすれば、敗訴は確実になる。日本に執行要請がおこる。B日本で、言論の自由が崩壊する、というのです。

 被告側の弁論は、裁判所での発言とは思えないものばかりです。政治演説・アジ演説というたぐいです。中国に司法の独立がない、といいますが、日本には司法の独立はあるのでょうか。裁判官の判断が行政や立法機関の影響をまったく受けない、ということはありません。ましてや、中国の国民は何か問題がおこった時、どうすればいいのでしょうか。裁判所に頼るしかないのです。それぞれの国の事情は確かに違います。だから、外国の裁判所の判決を日本で執行する時のことが法律で示され、裁判所で争われているのです。

 相互保障の件でも、中国批判の書物が皆、中国でうったえられることはありません。今、問題になっているのは、松村俊夫氏の「夏淑琴さん」個人への誹謗中傷が問題になっているのです。中国人一般を批判したり、政策を批判したものは名誉毀損にはなりません。

 閉廷後、弁護士会館に会場を移し、報告集会をおこないました。米倉弁護士から法廷の経過と解説がありました。被告側の政治演説を批判し、実態としての審理を求めたことが報告されました。渡辺弁護士は「書店に平積みになっている反中国の本と同様の主張を法廷で堂々とやった」と被告側の主張を批判しました。その上で「東北アジアの国と日本が共同して発展していきたい」と願い、この裁判をおこなうことが東北アジア共同体の一助になる、と発言されました。

 このあと、会場からの発言があり、被告側の主張はわかりやすい、私たちもわかりやすく主張していく強うがあるのではないか。インターネットで被告が主張するようなことがまかり通っている、これに対抗するような情報がほしい。などという意見がでていました。

 渡辺弁護士からは「これまでの南京事件にかかわる名誉毀損裁判では、@李秀英裁判で『常識ある人が読めば、この本は誤りだとわかる』A百人斬り裁判では『戦闘ではないが、百人斬りに類する好意があった』B夏淑琴裁判で『研究書とは呼べない』と展転社側の出版物を判決が断罪しています」と発言がありました。

●判決の概要

 二審の東京高裁では被告・原告ともに控訴を棄却しました。

最高裁での闘い

●最高裁判決に対する弁護団声明

 最高裁判所第1小法廷は、本日、南京大虐殺事件の被害者である夏淑琴氏に対する名誉毀損に関し、慰謝料の支払い等を求めた事件について、一審被告東中野修道等による上告及び上告受理申立を、いずれも棄却する決定を行った。これによって、夏淑琴氏の勝訴が確定した。

 本件訴訟は、夏淑琴氏が1937年12月に南京で発生した旧日本軍による虐殺事件(南京大虐殺事件)において、両親など家族7人を虐殺され、自らも銃剣で刺されて重傷を負うなどの筆舌に尽くしがたい深甚な被害を被ったのにもかかわらず、被告東中野修道が、その名誉を毀損する書籍「『南京虐殺』の徹底検証」を被告株式会社展転社等から出版したことに対し、夏淑琴氏が名誉毀損及び人格権の侵害を理由として、損害賠償と謝罪広告の掲載を求めたものである。

 すなわち本件書籍は、史料に被害者として登場する「『八歳の少女』と夏淑琴とは別人と判断される」、「『八歳の少女(夏淑琴)』は事実を語るべきであり、事実をありのままに語っているのであれば、証言に、食い違いの起きるはずもなかった」、「さらに驚いたことには、夏淑琴は日本に来日して証言もしているのである」等と記載され、これらの記述は、原告が「ニセの被害者」であると決めつけ、ウソの証言までしているものと非難するものであり、原告の名誉を毀損するとともに、その人格権を著しく侵害するものである。

 一審被告らは、上告審においても、南京事件は国民政府の謀略である等、荒唐無稽の主張と史実の歪曲を重ねたが、最高裁判所もこれらの主張を受け付けなかった。南京大虐殺事件は歴史的事実であり、当時の日本の侵略性を示す事件として世界に広く報道され、国際的な批判を浴びた蛮行であった。大都市における顕著な侵略的事実は、当然のことながら多くの目撃者と記録が残され、現地においては公知の事実であり、大規模な虐殺行為が行われたという歴史的事実は疑いのないところであって、現在の歴史学界における定説といってよい。

 過去と向き合い、事実をありのままに受け入れることからしか、侵略の歴史への反省はあり得ないし、真のアジアの平和の構築も実現しない。

 夏淑琴氏が、高齢にもかかわらず本件訴訟を提起したのは、自分の悲惨な体験を語り続け、戦争の悲惨さと平和の尊さを社会に訴えることが、日中両国民の信頼関係の確立と、アジアの平和にとって必要なことであるという信念に基づく。

 最高裁判所が今般、あらためて夏淑琴氏の主張を認め、一審被告らの上告を棄却したことは、本件訴訟のこのような趣旨に照らし極めて大きな意義を有する。

 誤った歴史観を許さず、歴史の改竄を許さないことによって平和な国際社会を実現することは、日中両国の心ある市民と我々弁護団の共通の願いである。今般の最高裁決定によって、この願いが改めて実現したことを、私たちは高く評価するものである。

2009年2月5日

南京大虐殺・夏淑琴氏名誉毀損事件弁護団

●夏淑琴さんからのメッセージ

 私の裁判が最高裁で勝訴したと聞き、とても嬉しいです。70歳過ぎに裁判が始まり、私はもう80歳です。私はいつも心配していました。夢にまでみるほどでした。自分が生きているうちに最終的な結果が出るのだろうかと考えていました。本日、ついに勝利しました。

 私はここで、南京大屠殺紀念館の朱館長、談臻弁護士、呉明秀弁護士、日本の弁護団に感謝を申し上げます。彼らは私の裁判のために多くの仕事をして下さりました。

 私の、言われなき罪を洗い流すために、とても苦労したと思います。彼らはすごいです。

 無実の人を陥れる日本の右翼を見事に撃墜し、私の潔白を証明しました。勝訴を迎えた今も、私はやはりこう言いたいと思います。

 私は偽の証人ではありません。私は南京大虐殺の生存者であり、真の歴史証人です。

●南京大屠殺紀念館長の朱成山さんからのメッセージ

 本日、皆さんよりお送り頂いた日本最高裁判所の夏淑琴名誉毀損裁判についての判決を読みました。裁判が最終的な勝訴を得たことを知りました。私は侵華日軍南京屠殺遇難同胞紀念館と南京大屠殺史会を代表して、皆様に心から祝福を申し上げ、また皆様が苦労を惜しまず裁判にご尽力されてきましたことに心からの敬意を表します。

 夏淑琴名誉毀損裁判は、李秀英名誉毀損裁判に続く、南京大虐殺事件の被害者の名誉を守る裁判でした。更に言えば、南京大虐殺の史実を守る裁判闘争でした。

 日本の東京地方裁判所、東京高等裁判所、最高裁判所が均しく公正な判決を下し、喜び、安堵しました。この判決が、再度、南京大虐殺の歴史を否定することは許されないということを証明しました。

 夏淑琴さんの裁判の件では、皆様方は苦労を惜しまず南京へ来られ、聴き取りをされたり、夏淑琴さんの訪日、出廷のために心血を注がれました。皆様の崇高な理念、正義、被害者の権利を守るために尽力され、実際的な行動によって中日友好に貢献されたその行動に、心より感謝申し上げます。歴史を直視し尊重してこそ、中日両国国民の相互信頼、民族和解は堅固な基礎を築くことができ、共に平和な未来を構築できるのだと信じています。

館長 朱成山 
                                2009年2月6日

●夏淑琴名誉毀損事件弁護団からのメッセージ

 2月5日、日本の最高裁判所が夏淑琴名誉毀損裁判について最終決定を出し夏淑琴は勝訴を獲得しました。この裁判の勝訴のために努力をされてきた日本の夏淑琴名誉毀損事件弁護団、支援団体の皆様に、江蘇法徳永衡律師事務所一同、熱烈な祝福を申し上げます。

 夏淑琴名誉毀損東京裁判は夏淑琴名誉毀損南京裁判と同様、重要な現実的意義、歴史的意義があります。このたびの勝訴は、法的側面から言えば、より一層、史実が守られることになりました。夏淑琴さんの名誉を守ったばかりでなく、亡くなった南京の30万の同胞の魂にとっても慰めとなりました。政治的側面から言えば、このたびの勝訴は東中野修道及び日本の右翼が南京大虐殺を否定し、歴史を改竄するといった行為に対する有力な反駁、暴露です。

 このたびの勝訴は、中日双方の弁護団の協力が実を結んだ良き成功例です。

 私たちは共同努力によって、さまざまな障害を克服し、歴史に学び未来に向かい、正義を貫いて平和を愛し、中日友好の発展に貢献できるものと信じています。

 夏淑琴名誉毀損事件弁護団補佐人 弁護士 談 臻

●中華全国律師協会会長からのメッセージ

 2月5日、日本の最高裁判所が夏淑琴名誉毀損事件につき決定を下し、夏淑琴氏の勝訴が確定したことを聞き、心より嬉しく思います。ここに、中華全国律師協会ならびに14万の弁護士を代表し、本件勝訴のために尽力された日本の夏淑琴名誉毀損事件弁護団の皆様、支援団体の皆様に、心からのお祝いを申し上げます。

 夏淑琴東京裁判と夏淑琴南京裁判の勝訴はともに重要な現実的意義、歴史的意義を持ちます。このたびの勝訴は、法的側面から言えば、より一層、史実が守られることになりました。夏淑琴さんの名誉を守ったばかりでなく、亡くなった南京の30万の同胞の魂にとっても慰めとなりました。政治的側面から言えば、このたびの勝訴は東中野修道及び日本の右翼が南京大虐殺を否定し、歴史を改竄するといった行為に対する有力な反駁、暴露です。

 貴弁護団は数年来、夏淑琴名誉毀損裁判の東京地裁、東京高裁、最高裁と闘い抜き、弁護団の皆様は苦労を厭わず南京へ赴き、中国の弁護団とともに調査に励まれ、心血を注ぎ働かれてきました。本件勝訴のため、南京大虐殺の史実を守るため、中日両国人民の友好、相互の信頼関係のため、傑出した貢献をされました。歴史的責任を果たし、法の正義を貫く貴弁護団の崇高な理念に対し、心から敬意を表します。

 本件勝訴は、中日両国弁護団の誠意と協力が成功を収めた模範となりました。私たちは共に努力し、今後も様々な困難を克服し、歴史にならい、未来に向かい、正義を貫き、平和を愛し、中日両国の友好を一層堅固なものに発展させるべく貢献をしていけると確信しています。

 中華全国律師協会会長 于 寧 2009年2月11日

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