確率の定義

    Aの上の実数値集合関数

定義:確率測度 (Probability Measure)、確率(Probability) 確率空間(probability space)・確率モデル(probability model)、確率の公理(probability axioms)

     (Ω, A)可測空間

     Aの上の実数値集合関数P: AAP(A)R

    とする。

    

    Pが以下の(P1)(P3)を満たす

      (P1) 0P(A)1 AA

      (P2) P(Ω)=1

      (P3) A1,A2,A, AiAj=φ (ij)

                     (完全加法性/可算加法性)

    

    ・Pを、(Ω, A)上の確率測度(probability measure)ないし確率(probability)と呼ぶ。

    ・組(Ω, A, P )を、確率空間(probability space)あるいは確率モデル(probability model)と呼ぶ。

    ・AAに対し、確率Pの値P(A)を、事象Aの起こる確率と呼ぶ。

    

    ・(P1)(P3)を確率の公理(probability axioms)と呼ぶ。

reference

文献1.岩波数学辞典(第三版)』項目47.B. (pp.127-128).

文献2. 佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994pp.18-24.

文献3. 鈴木武・山田作太郎『数理統計学―基礎から学ぶデータ解析―(第二版)』内田老鶴圃、1998年、pp.7-12

文献4. 矢野・田代『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、1993年、p.148-150.

文献5. 野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、p.2

文献6. 柳川堯『統計数学』近代科学社、1990, pp.3-4.

確率についての諸定理

1. 空事象φの確率P(φ)

    P(φ)=0

    (proof)

    確率の定義(P1)より、0P(φ)1  …(1)

    φ=φφφ… かつ φφ=φ であるので、確率の定義(P3)より、

    P(φ)=P(φφφ)=P(φ)+ P(φ)+

    仮に、0<P(φ)1とすると、右辺が収束せず、(1)と矛盾をきたす。

    したがって、P(φ)=0

reference

佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994p20

鈴木武・山田作太郎『数理統計学―基礎から学ぶデータ解析―(第二版)』内田老鶴圃、1998年、p.10,

野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、p.5

は、同様の証明。

柳川堯『統計数学』近代科学社、1990,p.4.は異なった証明。

2. 有限加法性(Finite Additivity)

    A1,…..,AnA, AiAj=φ(ij)

    ⇒

(proof)

    An+1An+2=…=φAとする。(1)

      ∵(1)

    

       ∵A1,…..,An, An+1,An+2,A, AiAj=φ(ij)にたいして、

        確率の定義(P3)完全加法性を適用

    

     空事象φの確率

reference

同様の証明を

佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994.p21pp.10,

野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、p.5

は詳細に示し、

柳川堯『統計数学』近代科学社、1990,p.4.

は方向性だけ示唆。

3-1.単調性(monotonicity)

    AB ⇒ P(A)P(B)

(proof)

    ABより、

      B=A (BA).

      A (BA)=φ (互いに排反)

    したがって、確率の有限加法性より、

      P(B)=P(A(BA))=P(A)+P(BA)

    確率の定義P1より、P(BA)0

    ∴P(B)P(A)

reference

同様の証明を

野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、p.6

3-2.差法可能性(subtractability)

    AB ⇒ P(BA) = P(B)P(A)

(proof)

    ABより、

      B=A(BA).

      A (BA)=φ (互いに排反)

    したがって、確率の有限加法性より、

      P(B)=P(A(BA))=P(A)+P(BA)

    両辺からP(A)を引いて、

      P(B)P(A)= P(BA)

reference

野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、p.6

3-3.余事象(complementary event)の確率

    P(Ac)=1P(A)

    (proof)

    Ω=A Ac

    確率の有限加法性より、

    P(Ω) = P(AAc) = P(A) P(Ac)

    確率の定義P2より、左辺=1となるので、

    1 = P(A) P(Ac)

    ∴ P(Ac) = 1 P(A)

reference

鈴木武・山田作太郎『数理統計学―基礎から学ぶデータ解析―(第二版)』内田老鶴圃、1998年、p.10.

矢野・田代『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、1993年、p149

が同様の説明。

野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、p.6は、3-2差分可能性の系として示す(B=Ωとおけば、BA=Ω−A=Acとなるので)

5.劣加法性

    A1, A2,,…A [:AiAj=φが条件に入ってない]

    (proof) 

 

加法則(additon rule)

    A,BAならば、

    P(AB)=P(A)+(B)P(AB)

    

    (proof)

    

    (a) 準備その1  

    まず、ABcBAcABについて、

    確率の有限加法性を適用する条件が整っていることを示す。

      ・A,BAより、Ac,BcA  σ加法族の定義(条件2)

       よって、ABcBAcABA  

           可測空間に関する諸定理(3) (An+1以降をφとおいて)

      ・ABcBAcABは互いに排反。∵ベン図を見よ。

    (b) 準備その2  

    次に、考察の対象となる事象を、
    
確率の有限加法性を適用可能な上記事象の和として表す。

    AB = (ABc)(BAc)(AB)

      A= (ABc)(AB)

      B= (BAc)(AB)

    () 準備その3

    考察の対象となる事象の確率を、確率の有限加法性を用いて分解する。

     <c-1>

     P(AB)=P[(ABc)(BAc)(AB)]  ∵(b)

         =P(ABc)+P(BAc)+P(AB)  ∵(a)ヨリ確率の有限加法性を適用

     <c-2>

       P(A)=P[(ABc)(AB)]  ∵(b)

        =P(ABc)+P(AB)  ∵(a)ヨリ確率の有限加法性を適用

     <c-3>

       P(B)=P[(BAc)(AB)]  ∵(b)

         =P(BAc)+P(AB)  ∵(a)ヨリ確率の有限加法性を適用

    (d) 本題

    P(AB)=P(ABc)+P(BAc)+P(AB) ∵<c-1>

       =[P(A)P(AB)]+[P(B)P(AB)] +P(AB) 

            ∵<c-2><c-3>で、P(AB)を移項した表現

             P(ABc)= P(A)P(AB)

             P(BAc)=P(B)P(AB)

             ヨリ

       =P(A) +P(B)P(AB)

    

    

  1. 確率の連続性

    {An}A単調増大列または単調減少列のとき、

    

    基礎知識→極限集合 

(i)下からの連続性(continuity from below)

    {An}A単調増大列

    (解釈)「増大事象列An, n=1,2,…にたいして、P(An)は増大しながら、

            

         に収束する。」[西尾pp.33-34]

    (proof)

     準備1:

       仮定より、{An}⊂A単調増大列

       増大列の極限についての定理から、{An}には極限が存在し、

        ()

     準備2:

       {Bi}を、

       B1=A1

       B2=A2A1

       :

       

       :

       とおく。

       

       すると、

      ・Bi A ( i=1,2,)

         なぜなら、

         仮定よりB1=A1A 

         Bi AiAi1Ai (Ai1)C ( i = 2,3,4,)   

            ここで、仮定よりAi A (1)

            (1)とσ加法族の定義(条件3)より

            (Ai1)C ∈A (2)

            σ加法族は有限のintersectionについて閉じているので、

            (1)(2)より、

            Ai (Ai1)C ∈A 

      Bi B j=φ (ij) [排反](**)

      ・   (***) 

      ・    (****)

      

      ()

            (****)

            (**)より確率の公理(P3)確率の完全加法性を適用

             つまりP(B1)+P(B2)+P(B3)+

           

             つまりn→∞での[P(B1)+P(B2)++P(Bn)]

           (**)より確率の有限加法性を適用  

           ↑この辺り納得いかんが、野田宮岡によると、こうなってる。

             (***) より

    

    

(ii)上からの連続性(continuity from above)

    {An}A単調減少列⇒ 

    (解釈)「減少事象列An, n=1,2,…にたいして、P(An)は減少しながら、

          

         に収束する。」[西尾p.34]

         

    (proof)

     準備1:

       仮定より、{An}⊂A単調減少列

       減少列の極限に関する定理から、{An}には極限が存在し、

        (1)

     準備2:

       {Bi}を、

       B1= A1A2

       B2=A3A2

       :

       Bn=AnAn+1

       :

       とおく。

       (An+1がないとBnは定義されない。

        つねに、{ Ai }のほうが{ Bi }よりも一歩先まであることに

        注意せよ)

     

       すると、

      ・Bi A ( i=1,2, 3,) (2)

         なぜなら、

            仮定よりAi A (a)

            (1)とσ加法族の定義(条件3)より

            (Ai)C ∈A (b)

            σ加法族は有限のintersectionについて閉じているので、

            (a)(b)より、

            Ai (Ai+1)C ∈A 

         ゆえに、

         Bi AiAi+1Ai (Ai+1)C ∈A ( i = 1,2,3,)   

      ・、{Bi}は互いに素。 (3)

      ・ と書ける。(4)

      ・    ∵{ Bi }の定義

        ∵AiAi+1より確率の差分可能性適用 

       

      

             (5)

    (本題)

        (4)ヨリ

          (2) (3)より

                     確率の公理(P3)確率の完全加法性を適用

          (5)ヨリ

     ∴

  なんか納得できない。P( lim An )lim P(An)の記法の違いでごまかされている気がする。両者の間に、記法の違い以外に、どのような実質的な意味の違いがあるというのだろうか。LimAnの定義は、極限集合ではっきり定義されている(ここでは∩Anになる)。limP(An)の定義は?

reference

文献1.『岩波数学辞典(第三版)』項目47.B. (pp.127-128).

文献2. 佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994pp.20-24.

文献3. 鈴木武・山田作太郎『数理統計学―基礎から学ぶデータ解析―(第二版)』内田老鶴圃、1998年、pp.9-12

文献4. 矢野・田代『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、1993年、p.148-150.

文献5. 野田一雄・宮岡悦良『数理統計学の基礎』共立出版、1992年、pp.5-8

文献6. 柳川堯『統計数学』近代科学社、1990, pp.4-6.

文献7. 西尾真喜子『確率論』実教出版社、1978, pp.32-34.