順序のついた代数系−順序環・順序体
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定義:順序環、順序体
定理:順序体の自己稠密性
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定義:
順序環
[斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2章§1定義2.1.1 (p.38);『岩波数学辞典』項目121構造C代数系(p.327);]
(設定)
X: 集合
x+y:X上の加法
xy :X上の乗法
X: 加法x+y, 乗法xyという二つの二項演算を、集合X に定めてつくった代数系。
※代数系を、もとの集合X 自体とは別の記号で表したほうが正確なのだろうが、慣例に従う。
(定義)
順序環とは、
加法x+y, 乗法xyという二つの二項演算を、集合X に定めてつくった様々な代数系Xのなかでも特に、
次の4条件を満たす代数系Xのことをいう。
条件A. Xが環であること。
条件B. X上に全順序
が定義されており、
が全順序集合であること。
なお、ここから、
かつx≠yを、狭義順序x<yと定義する。
条件C. X上に定められた加法と狭義順序が以下を満たすこと。
( ∀x, y, z ∈X ) ( x < y ⇒ x + z < y+ z )
条件D. X上に定められた乗法と狭義順序が以下を満たすこと。
( ∀x, y, z ∈X ) ( x < y かつ 0 < z ⇒ xz < yz , zx < zy )
※ 代数系Xが条件A-Cを満たすならば、条件Dと次の条件D'は同値であるから、
条件Dを、条件D'に置換えてもよい。
条件D'. X上に定められた乗法と狭義順序が以下を満たすこと。
( ∀x, y∈X ) ( 0< x かつ 0 < y ⇒ 0< xy )
証明→斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2章§1問題4 (p.39);略解(p.249);
(例)
整数の集合。
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定義:
順序体 ordered field
[斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2章§1定義2.1.1 (p.38);『岩波数学辞典』項目229体N(p.645);]
(設定)
X: 集合
x+y:X上の加法
xy :X上の乗法
X: 加法x+y, 乗法xyという二つの二項演算を、集合X に定めてつくった代数系。
※代数系を、もとの集合X 自体とは別の記号で表したほうが正確なのだろうが、慣例に従う。
(定義)
順序体とは、
加法x+y, 乗法xyという二つの二項演算を、集合X に定めてつくった様々な代数系Xのなかでも特に、
次の4条件を満たす代数系Xのことをいう。
条件A. Xが体であること。
条件B. X上に全順序
が定義されており、
が全順序集合であること。
なお、ここから、
かつx≠yを、狭義順序x<yと定義する。
条件C. X上に定められた加法と狭義順序が以下を満たすこと。
( ∀x, y, z ∈X ) ( x < y ⇒ x + z < y+ z )
条件D. X上に定められた乗法と狭義順序が以下を満たすこと。
( ∀x, y, z ∈X ) ( x < y かつ 0 < z ⇒ xz < yz )
※ 代数系Xが条件A-Cを満たすならば、条件Dと次の条件D'は同値であるから、
条件Dを、条件D'に置換えてもよい。
条件D'. X上に定められた乗法と狭義順序が以下を満たすこと。
( ∀x, y∈X ) ( 0< x かつ 0 < y ⇒ 0< xy )
証明→斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2章§1問題4 (p.39);略解(p.249);
※条件C-Dから、順序体の自己稠密性が導出される。
(例)
有理数の集合。
実数体。
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定理:
順序体の自己稠密性
[斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2章§5定義2.5.1 (p.52);赤『実数論講義』§2.7(pp.54-5);]
順序体は、自己稠密である。
すなわち、
順序体Kの任意の元x,yにたいして、x<z<yを満たすKの元zが存在する。
すなわち、(∃z∈K) (∀x,y∈K) ( x<z<y )
(証明)
順序体の条件C,Dから。
詳しくは、赤『実数論講義』§2.7(pp.54-5)。
定義:
順序同型写像
(設定)
X ,Y: 順序環もしくは順序体
(定義)
XからYへの順序同型写像とは、
1. XからYへの代数系としての同型写像
かつ
2. XからYへの順序集合としての順序同型写像
である全単射(双射) f :X→Yのことをいう。
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Reference
日本数学会編集『
岩波数学辞典(第3版)』 岩波書店、1985年、項目121構造A構造2)算法;C代数系(p.327);項目56環 (pp. 153-6), 項目104群(p.281);項目229.体 (p.643).
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第2章自然数から実数体の定義まで§1代数系(pp.35-39)
本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、2章2.1節半群A.二項演算。
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.2節いろいろな代数系(p.3)。
志賀浩二『群論への30講』朝倉書店、1989年、第3講群の定義、pp.16-18。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、p. 57.
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、pp.1-2.
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