日本の歴史認識慰安婦問題第2章 慰安婦システム / 2.4 慰安婦のリクルート / 2.4.1 リクルート方法

2.4 慰安婦のリクルート

慰安婦は、日本本土のほか植民地(朝鮮、台湾)や慰安所を設置した占領地からもリクルート(徴募)された。リクルートの方法は地域によってその方法に特色があり、日本では内務省の通達もあって娼婦経験者が多かったとみられるが、朝鮮では騙されて連れていかれた人が多数名乗り出ている。

図表2.7 慰安婦のリクルート

慰安婦のリクルート

2.4.1 リクルート方法

慰安婦のリクルート方法は、リクルータ、連行の強制性、人身売買の有無、の3つの視点で分類できる。

(1) リクルータによる分類

R1; 業者
業者は日本人、朝鮮人のほか中国などには親日的な現地人の業者もいた。軍はこれらの業者に依頼して慰安婦を集めた。日本や植民地(朝鮮、台湾)の慰安婦のほとんどはこの方法でリクルートされたものと思われる。

R2; 現地の有力者
占領地の村長や資産家など地域の有力者に依頼して集めることもあった。依頼といっても、事実上は半強制的な命令のようになることも少なくなかった。中国や東南アジアの占領地の現地人慰安婦を集めるときは、この方法がよく使われている。

R3; 軍人や軍属
軍人や軍属が直接売春宿などから調達したり、集落のゲリラ討伐を行った際に強制的に連行したり、シンガポールでは軍が新聞に慰安婦募集の広告を出したりしている。強制的なリクルートになったケースも少なくないと思われる。

なお、行政府の役人や警察官などがリクルートに関与した可能性はあるが、官側の公式資料でそのようなことが行われたことを示すものは見つかってない。例えば、関特演のとき朝鮮総督府に依頼したという証言があるが、実態は不明である。

(2) 連行の強制性

K1; 暴力的に拉致
銃で脅したり腕力で強引に連行

K2; 非暴力的に強制
親族や有力者、官憲などからの「命令」によるもの

K3; 詐欺、だまし
仕事を、看護婦、洗濯婦、女工、などと偽って連行

K4; 本人の意思
慰安婦になることを本人が了解している。強制性はない

(3) 人身売買(身売り)の有無

当時の公娼制度は、娼婦となる女性が娼館に入るとき、前借金を受けとり、それを返却するまで娼館に拘束される仕組みになっており、慰安婦制度も拉致・強姦と重なるようなケースを除いてこれを踏襲していた。

J1; 身売りあり
誰かが前借金を受け取って娼館に入ったケース。受け取ったのが家族、親戚、その他本人以外で、本人に身売りされたことを告げないと連行は強制的(上記K1~K3)になる。

J2; 身売りなし
前借金なしで娼館に入ったケース。当時の娼館では前借金ありが一般的だったと思われるので、このケースは拉致・強姦と重なるようなケースだけだと思われる。

(4) 地域特性

・日本からのリクルートは、 2.4.2項(3) で述べる内務省の規制があったせいか、既存の娼婦が高収入にひかれて自らの意思で転身する者が多く、これはR1/K4/J1のパターンになる。

・朝鮮・台湾では、日本の公娼制と同様に業者が前借金を家族などに払って身受けする方法でリクルートしたが、娼婦未経験の未成年が多く、「工場での仕事」だとか「日本で金儲けができる」などと甘言で誘ったり、場合によっては拉致して連行してしまうようなケースもあったとみられる。R1/K1・K2・K3/J1・J2のパターンである。

・中国や東南アジアで現地の女性をリクルートする場合、大都市で多いのは地元の業者や有力者を介して娼婦をリクルートするケース(R1・R2/K4/J1)で、僻地では一般の女性を強制的にリクルートするケース(R2・R3/K1・K2/J2)が多かったとみられる。

なお、日本人以外の元慰安婦が名乗り出て証言するのは、どの地域においても一般人から慰安婦にされた場合で、娼婦から慰安婦になったケースの証言は少ない。