オトギリソウ

「さあさあお立会い。止血の薬はござらぬか。あるよ、あるよ、ガマの油かオトギリソウ・・」・ガマの油売りの口上

オトギリソウは古来から有名な薬草である。
その昔のガマの油売りの口上にあるように、切り傷、打撲に古くから用いられ、又、鎮痛剤としても効能があり、薬草茶にはドクダミ、ゲンノショウコ、カキドウシ、ヨモギ等と並んでこの植物が今でも使われる。 ヨーロッパでも西洋オトギリソウはハーブとして用いられ、又、抗うつ病薬として名があるが、このように万国共通の薬草は他にもカキドオシ、クマツヅラ、ウツボグサ、ノコギリソウ、メハジキ等がある。 ( 「カキドオシは世界共通の薬草」 「クマツヅラは神聖な花」 「和洋共通の薬草ウツボグサ」 「ノコギリソウと西洋ノコギリソウ」 「世界の婦人病薬メハジキ」 )
オトギリソウは 「弟切り草」 と書き、1700年代の書物 「和漢三歳図会」 に次のような伝承が載っている。 「晴頼という鷹匠がいて、薬草を用いて鷹の傷を治す事で有名であったが、薬草の名は秘密にして決して口外しなかった。 ところが、人の良い弟が薬草の名を人にもらし、怒った晴頼は弟を切ってしまった。・・・・・・」
その時、庭に植えていた薬草に血が飛び散り、花や葉に黒点として残ったとして、オトギリソウの名の由来になっている。
表題の写真の蕾や花に黒い点や筋が見られるが、花や葉に腺体があって、色素が含まれると黒点になり、色素が含まれ無いと明点となって、オトギリソウ科の特徴をなしている。

オトギリソウ

近縁に、沢など水辺に多いサワオトギリ(沢オトギリ)や、小さな花を僅かに付けるヒメオトギリ(姫オトギリ)とコケオトギリ(苔オトギリ)、山地に咲き少し大柄で花が巴状にねじれている為その名があるトモエソウ(巴草)等があり、 又、夏の花壇を彩るビヨウヤナギ、キンシバイもオトギリソウ科の花である。

 サワオトギリ         サワオトギリ        ヒメオトギリ

トモエソウ        ビヨウヤナギ        キンシバイ

サワオトギリは葉の形が丸みを帯び、尖ったオトギリソウとは明らかに異なり、又、葉に多くの明点があるのが特徴で、一方、ヒメオトギリやコケオトギリには花にも葉にも黒点が無い。
オトギリソウは一日花であるものの次々と花を付ける可愛い花であるが、その名前の由来に関する伝承には凄まじいものがある。

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