ミミナグサとオランダミミナグサ

ミミナグサ

「枕草子」 の中の若菜摘みの話にミミナグサが登場する。 正月七日の若菜の準備に、六日から一騒ぎしていると、見も知らぬ草を子供が取ってきたので、清少納言が 「何と言う草か」 と尋ねると すぐには答えられなかったが、誰かが 「耳無草(みみなぐさ)と言います」 と言ったので、道理で話が聞こえないような顔をしていること、と大笑いになった。
実際にはミミナグサは耳無草ではなく、耳菜草と書き、短い毛の生えた柔らかそうな葉の形をネズミの耳にたとえ、食べられる菜と言う事でその名があるが、清少納言が面白おかしく書いたものであろう。
この話には落ちがあって、暫くして別の子供が可愛らしい菊を持ってきたので清少納言が 「摘めどなほ 耳無草こそ つれなけれ あまたしあれば 菊(聞く)も混じれリ」 と一句詠んで披露しようとしたが相手が子供なので聞く耳は持つまいと止(や)めたとある。
古くから食べられていた植物であるが、現代では在来種のミミナグサは探すにも難しい状況にあり、又、伊吹山固有種で、葉が小さく花の大きいコバノミミナグサもあるが、いずれにしても日本古来からあるミミナグサはかぎられた範囲にのみ存在し、写真のミミナグサもやっと見つけたものである。
一方、近年ヨ−ロッパ原産のオランダミミナグサがいたるところに繁茂し、繁栄を謳歌している。

   ミミナグサ         ミミナグサ        コバノミミナグサ

外来種のオランダミミナグサ

オランダミミナグサは日本中何処にでも見られ、田の畦、道端、空き地等、どこにでも生え、早春から同じナデシコ科のハコベ共々その存在感を示す。 
ミミナグサもオランダミミナグサも花はほとんど同じであるが、ミミナグサの花柄がオランダミミナグサよりずっと長く、茎やガクの部分が暗紫色である事等で区別がつく。
日本古来の品種が外国からの帰化種に圧倒されている例はタンポポ、イヌノフグリ、オオカワジシャ等、枚挙にいとまが無いが、ミミナグサもその一つである。( 「タンポポ今昔」 、「オオイヌノフグリの名の由来」 、「オオカワジシャと帰化種」 の項参照)

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