キュウリグサとハナイバナ

キュウリグサ                       ハナイバナ

春も盛りの頃、散歩道の土手や川岸にワスレナグサを小さくした様な花々が目立ち始める。 キュウリグサとハナイバナで、ワスレナグサと似ているのも道理、いずれも同じムラサキ科の花である。
ワスレナグサは恋人のために花を摘んでいた騎士が川に落ちおぼれる寸前その花を恋人に投げ 「私を忘れないで下さい」 と叫んだドイツの伝承からその名が来ており、日本でも帰化して一部野生化している。
この地方で野生種を見ることは少ないが、花の形が良く似たキュウリグサやハナイバナは散歩道のあちこちで見られる。


ワスレナグサ(勿忘草)

キュウリグサ

ハナイバナ(葉内花)

キュウリグサは葉や茎を揉むとキュウリの匂いがするのでその名があるが、いつ頃からこの名が付けられたかは分からない。 野菜のキュウリは1000年ほど前に渡来したが苦味が強くて嫌われ、よく食べられるようになったのは品種改良が進んだ明治になってからの事であり、江戸時代の貝原益軒の書 「菜譜」 によるとキュウリの事を 「下品な瓜(うり)、味よろしからず」 とあって、余りポピュラーな野菜ではなかった。 キュウリグサはアジア各地に分布し、農耕と共に伝来した古代帰化植物であるが、上記の状況から鑑みるにキュウリグサの名も比較的新しい時代に付けられたと思われる。 古名については地方によってはタビラコと呼ばれていたようで、現代のタビラコ(コオニタビラコ)と重なるのでキュウリグサと呼ばれるようになったと考えるのは筆者の独断であろうか。( 「タビラコいろいろ」 の項参照)
一方、ハナイバナは日本全土の端や畑に生えるが、こちらの方は花期が長く、春から12月頃まで咲く。
ハナイバナは茎の上部の葉と葉の間に花を付けるので葉内花(ハナイバナ)と呼ばれ、2−3ミリの淡青紫色小さな花を付け、キュウリグサの様に一つの茎に多量の花を付けることは無く、花の中心部が、キュウリグサの黄色に対し、白なので区別が付く。

キュウリグサもハナイバナも小さいので、よくよく見ないと見過ごしてしまうが、目を近づけてみるとワスレナグサに似た可愛い花である。

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