「八重葎 茂れる宿の 寂しきに 人こそ見えね 秋は来にけり」・・・・百人一首(恵慶法師)
この有名な歌の八重葎(やえむぐら)は現代のヤエムグラでは無く、カナムグラの事であるとする説が定説になっている。( 「ヤエムグラとカワラマツバ」 の項参照)
ヤエムグラも生い茂る雑草ではあるが、越年草で春から夏にかけて茂り、秋には枯れてしまう。 一方、カナムグラは夏から秋にかけて人の住まない放置された廃屋や、荒地に蔓を絡ませながら鬱蒼と生い茂る。
枕草子にも 「廃れたる家にムグラ這ひかかり、ヨモギなど高く生ひたる庭に月くまなくあかき」 とあり、当時の葎(ムグラ)やヤエムグラはカナムグラの事を指すと考えられる。 八重の意味は輪生する葉の数ではなく、たくさんを意味する言葉であろう。
カナムグラ(金葎)の名の由来も茎の強靭さと質感を金(かね・・・金属)に例え、葎(むぐら)は何処にでも鬱蒼と生い茂る雑草を意味し、 「強靭な雑草」 から来ている。
茎には下向の刺(とげ)が有り、これで藪に絡み付いて這い登り、しばしばクズやヤブガラシ等と入り混じって茂っているのが見られる。( 「クズとコマツナギ」、「ヤブガラシは蜜の宝庫」 の項参照)
クワ科の植物で、ヤツデのような葉の形に特徴が有ってクズやヤブガラシとは歴然と違い、花もヤブガラシやクズの花が終わる頃に雌雄異株の花を付け始めるが、ビールに使われるホップと近縁の為、雌花はホップによく似ている。
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