ヤエムグラとその仲間

ヤエムグラの花と実

ヤエムグラは手入れの行き届かない所に生える雑草で、花も小さくて注意して見ないとほとんど分からず、野の花として取り上げるには余りにも目立たないが、拡大すれば味のある花と実を付ける。
茎に逆向きの小さな棘があり、お互い同士や、他の植物に寄りかかって伸びて行き、自らの茎で立ち上がる事はできないもののその繁殖力は極めて旺盛である。 果実にも上の写真のように荒い毛が有り動物等にくっついて生存範囲を広げる。
余り注目を浴びる植物ではないが、名前の方は百人一首(恵慶法師)の 「ヤエムグラ 茂れる宿の 寂しきに 人こそ見えね 秋は来にけり」 ですっかり有名になっている。
ただ、百人一首のヤエムグラは現代のヤエムグラではなく、クワ科のカナムグラであるとする説が有力で、百人一首の歌は秋であり、春から夏に生い茂るアカネ科のヤエムグラは秋には枯れてしまうからである。( 「カナムグラと百人一首」 の項参照)。
ヤエムグラ(八重葎)の名の由来の八重は写真の様に葉が輪状に付く事を意味し、葎(むぐら)は何処にも生える雑草を表すように、散歩道のいたるところで茂っている。
このアカネ科ヤエムグラ属にはヤエムグラ、クルマムグラ、オククルマムグラ、カワラマツバ、ヨツバムグラ、ハナムグラなどがあり、いずれも小さな花を付ける。

ヤエムグラの花と葉

オククルマムグラ

カワラマツバの花と葉

クルマムグラ(車葎)とオククルマムグラ(奥車葎)は葉が車輪状に付くのでその名があり、両者ともほとんど区別はつかないが、クルマムグラの茎には棘が無いのに対し、オククルマムグラには少し棘がある。 オク(奥)は深山の意味で有るが、山裾にも生える。 両者共ヤエムグラとは異なり、まっすぐ立ち上がる。
カワラマツバはヤエムグラ属の中でも花が豪勢に咲き、夏の盛りに現れる。 河原に生え、松葉のような葉を付けるのでカワラマツバの名があるが、実際には土手や草原、畦道等何処にでも生え、南西諸島を除く日本全土に分布する。 花が固まって咲くので、土手でよく目立ち、茎や葉にはヤエムグラのような棘は無く、自らの茎で立ち上がる。

クルマムグラやカワラマツバは自立し、ヤエムグラは自立できないが、繁茂しているのは自立できないヤエムグラの方である。

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