ガガイモ

ガガイモは神代(かみよ)の時代から日本に存在する花として知られている。
古事記には大国主命(おおくにぬしのみこと)と共同して国造りをしたとされる少名彦(すくなひこ)のことを  「天の羅摩(カガミ)の船に乗って来た・・・」  とあり、日本書紀には  「一人の小男がカガミの皮で造った船に乗って・・・」  とある。
羅摩やカガミはガガイモの事であるとされており、果実が舟形をしているのでその鞘にのって小さな神が来たと言う事であろうか、真偽はともかく神話に登場する数少ない植物である。
夏になると他の植物に絡み付いて蔓(つる)を延ばし、オニドコロ、ヘクソカヅラ、クズ等と入り混じって鬱蒼と茂り、葉だけでは余り目立たないが、花が咲くとその独特の姿で人目を引く。( 「オニドコロと野老」、 「ヘクソカズラの悪臭」、 「クズの裏風」 の項参照)。
秋になると、神話にあるように舟形をした果実を付け、これを干したものを漢方で羅摩子(らまし)と呼び、滋養強壮の薬となる。 この果実の中にはびっしりと長毛(絹毛)が詰まっており、実が割れるとタンポポの綿毛のように飛んで分布を広げるが、かっては、この毛を綿の代用として針刺しや印肉に使用した。

ガガイモの花と葉

ガガイモの果実とその内部

生の茎や葉は解毒や腫れ物の貼り薬として使われ、又、茎を切ると白い乳液を出し、イボや虫刺されに塗られ、若芽は茹でて油炒め、煮物等の食用ともなった。
名の由来は諸説ある。 古名のカガミはしゃがむという動作で、かがむような低い所に太い茎があるところからカガミイモがガガイモになったと言う説や、ガガはスッポンの事で、葉の形が亀の甲羅のようで、芋に似た実を付ける事からガガイモになったとする説等がある。

ガガイモ科として一家を成し、ヘクソカズラ、クズ、オニドコロ等と共に蔓を延ばして生い茂る様子はある意味では日本の夏の風物詩であると同時に神話の時代に思いをはせさせる花でもある。

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