ヘクソカズラ

あまりと言えばあまりの名前である。 ハキダメギクやブタナの例にあるように感性の低い現代人が付けた名前かと思ったら万葉の頃すでにクソカズラの名前があり、それに屁(へ)が加わって屁糞蔓(ヘクソカズラ)となったものである。
万葉集に高宮王の歌として次の一首がある。 「さう莢に 延(は)ひおほとれる くそかずら 絶ゆることなく 宮仕えせむ」。 「さう莢」 は棘(いばら)の有る植物の事で、そんな植物にも絡み付いていく屁糞蔓(ヘクソカズラ)の様に一生懸命宮仕えしますの意で、今も昔も変わりは無い。
この植物をもんだりすると強烈な悪臭があり、それが屁糞(へくそ)の由来で、ツル性植物なので蔓(かずら)の名がある。 花の中央の赤色をお灸に見立ててヤイトバナの別称があり、花の形を早乙女の笠に見立ててサオトメバナとも呼ばれる。 この名の方が良い。
ツルが他の植物や下の写真のようにフェンス等に巻きついて広がっていくが、基部は木質で意外に太い。

ヘクソカズラの花と葉

秋からヤマブキ色の実がなり、この実の成分に抗菌作用があり、又実をつぶして手に付けるとシモヤケ、アカギレに効果がある。 根は下痢止めの薬となる。

ヘクソカズラの実

葉や茎をさわったり、揉んだりしなければ悪臭も無く、花は可愛く、実や根は薬用にもなり、秋から付ける実は冬の野鳥の貴重な餌となるアカネ科の花である。
ヤブガラシと共にいたるところに絡み付き生い茂って可愛い花をつけ、秋には山吹色の実をいっぱい付ける様はある意味では夏から秋にかけての風物詩と言える。( 「ヤブガラシは蜜の宝庫」 の項参照)

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