最判平成17年10月18日(集民218号79頁(平成17年(行ヒ)第106号))

(原審:東京高判平成16年11月30日(平成15年(行ケ)第590号)

<事案の概要>
 X(原告,上告人)は,特許権の設定登録時の名称を「包装され,含浸されたクリーニングファブリックおよびその製造方法」とする特許権(特許第2673339号。以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
 本件特許の経緯は,以下のとおりである。

平成 6年 5月31日 出願
平成 9年 7月18日 設定登録
平成13年 4月25日 Y(被告,被上告人)による無効審判請求(以下,「第1次無効審判請求」という。)
平成15年10月 2日 第1次無効審判請求の審決(訂正を認め,訂正後の請求項1乃至22に係る発明を無効とする。)送達
平成15年12月29日 X出訴
平成16年 2月13日 Xによる訂正審判請求(以下,「第1次訂正審判請求」という。)
平成16年 4月12日 第1次訂正審判請求取下
平成16年 4月19日 Xによる訂正審判請求(以下,「第2次訂正審判請求」という。)
平成16年 6月 7日 第2次訂正審判請求取下
平成16年11月16日 Xによる訂正審判請求(以下,「第3次訂正審判請求」という。)
平成16年11月30日 請求棄却判決(東京高判平成16年11月30日(平成15年(行ケ)第590号)
平成17年 1月 7日 X上告受理申立
平成17年 1月24日 第3次訂正審判請求審決(訂正を認める。)送達
平成17年 3月11日 Yによる無効審判請求(以下,「第2次無効審判請求」という。)
平成17年 9月 7日 第2次無効審判請求審決(請求不成立。)送達
平成17年10月 7日 第2次無効審判請求審決確定

 第3次訂正審判請求の内容は,発明の名称を「包装され,含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法」とし,請求項の一部を削除して請求項の数を4とすること等である。審決は,この請求を認め,これによって特許請求の範囲が減縮された。

<判決>
 破棄自判。
「3 特許を無効にすべき旨の審決の取消請求を棄却した原判決に対して上告受理の申立てがされ,その後,当該特許について特許出願の願書に添付された明細書を訂正すべき旨の審決が確定し,特許請求の範囲が減縮された場合には,原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分によって変更されたものとして,原判決には民訴法338条1項8号に規定する再審の事由がある。この場合には,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があったものというべきである(最高裁昭和58年(行ツ)第124号同60年5月28日第三小法廷判決・裁判集民事145号73頁最高裁平成14年(行ヒ)第200号同15年10月31日第二小法廷判決・裁判集民事211号325頁参照)。
 そして,特許を無効にすべき旨の審決の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許について特許出願の願書に添付された明細書を訂正すべき旨の審決が確定し,特許請求の範囲が減縮された場合には,特許を無効にすべき旨の審決を取り消さなければならない(最高裁平成7年(行ツ)第204号同11年3月9日第三小法廷判決・民集53巻3号303頁最高裁平成10年(行ツ)第81号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号231頁参照)から,本件無効審決は,これを取り消すべきものである。
 そうすると,論旨は理由があり,本件については,原判決を破棄し,本件無効審決を取り消すのが相当である。
 なお,前記事実関係によれば,訴訟費用については,行政事件訴訟法7条,民訴法62条を適用し,上告人の負担とするのが相当である。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」