(原審:東京高判昭和58年7月28日(昭和57年(行ケ)第129号))
<事案の概要>
X(原告,上告人)は,登録第1168668号実用新案(以下「本件実用新案」という。)の実用新案権者である。
Y(被告)は,本件実用新案の登録を無効とすることを求めて無効審判を請求したところ,特許庁は昭和52年審判第17084号として審理を行い,請求成立の審決をした。
X出訴。
原審(東京高判昭和58年7月28日(昭和57年(行ケ)第129号))は,Xの請求を棄却した。
X上告。
なお,Xは本件実用新案について訂正審判を請求し,特許庁は昭和58年審判第19120号として審理を行い,原審口頭弁論終結後の昭和59年12月18日に請求成立の審決をし,審決謄本が昭和60年1月21日にXに送達されている。
<判決>
破棄差戻。
「原審は,登録第1168668号実用新案(以下「本件実用新案」という。)における登録出願の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載が「電動送風機を収納し車輪12を有する主体甲と,この主体の前部にその下部にて着脱自在に係合されかつ前輪14を有する集塵ケース乙と,この集塵ケースと前記主体甲をその上部で互いに掛止する掛金4とを備え,前記主体甲とケース乙との結合状態での重心位置が前記車輪12の軸心より前方に位置し,かつ前記主体甲それ自身の重心位置が前記車輪12の軸心より後方に位置するように前記車輪12の取付位置を選定し,前記掛金4を外したとき前記主体甲とケース乙との結合面をその係合部を支点として開くようにした電気掃除機」であること等を基礎として,本件実用新案の登録を無効とした特許庁昭和52年審判第17084号事件審決を正当としてその取消しを求めるXの請求を棄却したものであることは,原判文に徴し明らかである。
ところで,上告代理人提出の特許庁昭和58年審判第19120号事件審決謄本写及び本件記録によれば,本件実用新案についてはXの訂正審判請求に基づき原審口頭弁論終結後の昭和59年12月18日前記明細書における実用新案登録請求の範囲の記載を「電動送風機を収納しその両側に一対の車輪12を有する主体甲と,この主体の前部にその下部にて着脱自在に係合され,かつ前輪14と着脱できるフイルター装置丙とを有し,前記主体甲との結合面の開口より塵捨てをする集塵ケース乙と,この集塵ケースと前記主体甲をその上部で互いに掛止する掛金4とを備え,主体甲とケース乙との結合面を車輪12の前方に位置させるとともに,前記主体甲とケース乙との結合状態での重心位置が前記車輪12の軸心より前方に位置し,かつ前記主体甲それ自身の重心位置が前記車輪12の軸心より後方に位置するように前記車輪12の取付位置を選定し,前記掛金4を外したとき前記主体甲とケース乙との結合面をその係合部を支点として開くようにした電気掃除機」と訂正すること等を認める旨の審決がなされ,その審決謄本が昭和60年1月21日Xに送達されたことが認められる。
そうすると,原判決の基礎となつた行政処分が後の行政処分により変更されたものであるから,原判決には民訴法420条1項8号所定の事由が存するといわなければならないが,このような場合には,原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背があつたものとしてこれを破棄し,更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すのが相当である。
よつて,上告代理人のその余の上告理由についての判断を省略し,行政事件訴訟法7条,民訴法407条1項に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」