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民法772条関連

2007年2月15日
「民法772条の嫡出推定に関する勉強会」を開催

mネットは参議院議員会館で2月15日、「民法772条の嫡出推定に関する勉強 会」を開催しました。
 この集会は、坂本由紀子参議院議員(自民党)、枝野幸男衆議院議員(民主 党)、丸谷佳織衆議院議員(公明党)、仁比聡平参議院議員(共産党)、福島み ずほ参議院議員(社民党)の5人の国会議員に呼びかけ人となっていただき、全 議員に参加を呼かけました。
 民法772条2項の離婚後300日以内に出産した子どもを前夫の子と推定する規定 によって困難な状況に陥っている当事者4組が、それぞれの体験を直接議員に話 しました。また、弁護士の榊原富士子さんにも参加していただき、改正案につい て説明していただきました。詳しくはmネット通信第144号でお知らせいたします。
*出席の国会議員は次のとおりです。
【議員】
(自民) 衆・ 宇野 治議員、広津素子議員、谷 公一議員、
       上川陽子議員、あべ俊子議員
(自民) 参・ ありむら治子議員
(民主) 衆・ 太田かずみ議員、枝野幸男議員、郡 和子議員、
       小宮山洋子議員、平岡秀夫議員、市村浩一郎議員
(民主) 参・ 千葉景子議員、松岡 徹議員
(公明) 衆・ 丸谷佳織議員
(社民) 衆・ 辻元清美議員、福島みずほ議員
(共産) 参・ 吉川春子議員
(18名)

【代理】
(自民) 衆・ 清水清一朗議員、川条志嘉議員
(自民) 参・ 坂本由紀子議員、谷川秀善議員、南野知惠子議員
(民主) 衆・ 菊田まきこ議員、松本 龍議員、西村智奈美議員、
       三日月大造議員、松木けんこう議員、
       細川律夫議員、寺田 学議員、金田誠一議員、
(民主) 参・ 下田敦子議員、円より子議員、森 ゆうこ議員、
       津田弥太郎議員、
(社民) 衆・ 日森文尋議員
(社民) 参・ 近藤正道議員
(19名)

2007年4月9日
法務省民事局長宛 要望書

                 
         2007年4月9日
法務省民事局長 寺 田 逸 郎 様
早稲田大学教授   棚村政行
弁護士      榊原富士子
独協大学名誉教授  松嶋由紀子
mネット・民法改正情報ネットワーク
共同代表 坂本洋子
要  望  書

 現在、戸籍の出生届出ができなかったり、届出をしていないためにとても辛く悲しい思いをしている子どもたちが大勢います。このような「戸籍のない子ども」たちのなかには、国籍や法制度の違いからそうなってしまうケースもありますが、両親が日本人であるのに戸籍が作れないという場合も少なくありません。たとえば、母親が前夫の暴力で家を出て離婚調停中に他の男性の子として生まれた女子高校生(16歳)は、出生届を出せば居所が知れてしまうため、出せずにいたところ、修学旅行のパスポートを発行されずにいます。また、母親と前夫との離婚が成立してから226日後に生まれた2歳の女児は、離婚後300日以内の出生であるために再婚した夫の子としての出生届ができず、健康保険も使えず保育園にも入れない状態にあります。さらには、前夫と間の絶縁状態からようやく離婚が成立し、再婚の婚姻届を提出後1か月して子どもが生まれたものの、前夫の行方が知れず、役所から離婚後300日以内なので前夫の子としての届けを出すように言われ途方に暮れている母親もいます。
 もともと、民法772条は、父親を決定する法的ルールとして、結婚している間に妻が妊娠した子は夫の子と推定し、結婚から200日後、離婚などから300日以内に生まれた子は結婚により妊娠したものと推定する、二段階の推定をおきました。この規定は、円満な夫婦生活と医学的な統計を信頼して、結婚によって妻の産んだ子は夫の子であろうという一応の原則(推定)を立てたものでした。明治民法の起草当時から、これは推定であって、これに反するという医師の鑑定(反証)があれば覆すことができると考えられていました。この原則自体は、子どものために父親を明確にしておこうという趣旨で、父が誰かで混乱しないように、子の福祉への配慮から生まれたものでした。
 しかしながら、この規定は、明治31(1898)年という100年以上も前に作られたもので、現在のように離婚や再婚が増え、医療技術、DNA鑑定など親子鑑定の技術も格段に進歩するという状況まで考えて作られたものではありませんでした。たとえば、不妊治療や医学の発達に伴い、出産が早くなる傾向もあり、最近、妊娠25週体重265グラムの赤ちゃんが無事退院するなど、かなりの未熟児でも順調に成育することが可能になりました。また、2005年に再婚したカップルは、全体の25.3%と4組に1組にも及んでいます。そのため、全国の家庭裁判所での嫡出否認や親子関係不存在確認の審判(家事審判法23条)も2005年で年間3000件を超えており、前夫の子という戸籍の記載を訂正するため、これほど多くの裁判が起こされるようになっているというのが実情です。この件数は10年前の1.5倍ほどにも増えています。
 もちろん、戸籍制度というのは、人の基本的な身分関係を登録公証する制度であって、法律関係を大きく左右するものですから、いい加減な記載や届出がなされてはならないことは言うまでもありません。また、戸籍の担当者は実質的審査権をもっていないため、窓口で夫婦の関係や子の出生にまつわる細かい事情まで確認するわけにもいかないことも当然です。しかしながら、戸籍は日本国民としての国籍簿であり、子どもにとっても、さまざまな権利や利益を受けるうえで重要であるため、国民として市民としてのサービスを受けるための基本中の基本といえます。したがって、法制度上の不備や戸籍取り扱い上の問題のためだけに、何の罪もない子どもたちに戸籍がないことの不利益や著しい迷惑を及ぼすべきではありません。
 1994年に日本が批准承認している「児童の権利に関する条約」7条でも、児童は出生後直ちに登録され、氏名を有し、国籍をもつ権利を保障されるとしています。子どもの権利や子どもの幸せという点からみるかぎりでも、離婚後の懐胎が明らかであるケース以外に、再婚後に生まれた子などで、前夫の子でないことが明らかなケースまで、前夫の子として届出をさせ、子どもたちに対して戸籍のない状態や真実と異なる戸籍を作らせることは、あまりにも不合理ではないでしょうか。
 今回、与党のプロジェクトチームは、戸籍のない子どもたちの問題が少しでも生じないですむように、民法772条2項の特例を認め、戸籍の取り扱いについて緊急的かつ必要最小限の配慮をするという方向で議員立法を行う旨の決定をしました。しかしながら、法務省では、つい最近、離婚後に懐胎したことが医師の証明書により明らかな子についてのみ、再婚した夫の子か前夫の子でなく嫡出でない子としての出生届を受理する通達だけですませるという方針を決定したとのことです。
 私たちは、法務省が考えている離婚後妊娠が明らかなケースだけでなく、あくまでも離婚後300日以内の出生子でも前夫の子でないことが明らかな子については、一定の条件の下に出生届が受け付けられるように特別措置を認めていただきたいと切に望んでいます。今回の問題は、子どもたちの幸せな生活や人生の基盤となる戸籍を早く作るための特例措置であることをご理解いただき、迅速かつ適切な対応を要望いたします。

以下、賛同人37名記載

2007年12月6日
「民法772条に関する第2回勉強会」を開催

mネットは12月6日、国会議員を対象に「民法772条の嫡出推定に関する第2回勉強会」を参議院議員会館で開催しました。与野党の議員、秘書、政党関係者、マスコミなど65人の参加がありました。今回の勉強会では、mネットによる政府や国会の動きを中心とした今日までの経過説明、呼びかけ人による各政党の取り組み報告と今後の決意表明、772条の規定に苦しむ当事者の相談に応じているNPOからの問題提起、東京弁護士会と第二東京弁護士会からの提言、出席議員との意見交換を行いました。NPO代表理事の井戸正枝さんは、具体的に事例を紹介しながら、離婚後妊娠のみを救済する法務省の通達の問題点を指摘しました。出席した議員からはさらなる取り組みの決意表明がなされました。出席議員は次のとおりです。
【議員】
(自民)衆・早川忠孝議員、森山真弓議員、野田聖子議員
    参・森まさこ議員
(民主)衆・枝野幸男議員、郡和子議員、小宮山洋子議員、西村智奈美議員
    参・千葉景子議員、神本美恵子議員
(公明)衆・谷口和史議員
(社民)衆・辻元清美議員
    参・福島みずほ議員
(共産)参・仁比聡平議員
(無所属)参・松浦大悟議員
  (15名)

【代理】
(自民)衆・臼井日出男議員、後藤田正純議員、塩谷立議員、冨岡勉議員
(民主)衆・市村浩一郎議員
    参・山本孝史議員、円より子議員、松岡徹議員、松野信夫議員
(公明)衆・丸谷佳織議員、大口善徳議員
(共産)参・紙智子議員
  (12名)