ホーム > 共同親権についてのQ&A
Q1 | 要綱案による法改正後は、「家庭裁判所が共同親権を強制する」ようになるのですか。 |
A | 離婚後、共同親権か単独親権かで父母の意見が分かれ、家庭裁判所の調停で話し合っても合意できない場合、家庭裁判所の審判や判決(判決は離婚訴訟の場合)で決定することになります。その場合の基準はあくまで「子の利益」です。 こうした「強制される」との心配・不安を持つのは、主としてDV・虐待がある事案や父母の関係が高葛藤である事案等についてと思いますが、法制審の要綱案では、一定の場合には、家庭裁判所は必ず父母の一方を親権者(つまり単独親権)と定めなければならないとされています。 具体的には、下記のような場合には、単独親権になります。 ・父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき ・父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、親権者についての協議がととのわない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき、 ・その他父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき |
Q2 | 要綱案によれば、離婚後に父母双方が共同親権をもつ場合、子のさまざまな行為について、都度、父母が同意することが必要になりますか。例えば、「子どもをプールに入れるためにも元配偶者の同意が必要」という解説がみられますが本当ですか。 |
A | 誤解です。 「監護及び教育に関する日常の行為」は、要綱案では、共同親権下であっても、一方の親権者が単独で行うことができることとされています。プールに入れるのに他方配偶者の同意が必要というのは誤りです。 現在、離婚していない共同親権をもつ父母の場合(円満に同居しているケース、不仲で別居しているケース、いずれのケースも含め)と同じです。 |
Q3 | 離婚後に父母双方が共同親権を持つ場合、例えば、「子どもが保育園に入る」にも父母双方の合意が必要になるのですか。 |
A | 子ども・子育て支援法第20条第1項においては、市町村から保育の必要性の認定を受け、子どもの保育所入所申請を行う主体を「保護者」としています。 また、同法第6条第2項においては、この「保護者」とは、「(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、)子どもを現に監護する者」をいうと規定しています。 この「保護者」に当たるかについては、保育の必要性の認定申請を受けた市町村において、どの程度こどもの監護を行っているか(関わっているか)という点を確認し、各家庭の御事情を十分踏まえたうえで判断することになるため、子どもの親権を有していることのみをもって、当該子どもの「保護者」になるというものではありません。 したがって、こどもの親権を有していたとしても、「子どもを現に監護する者」に当たらない父又は母については、子ども・子育て支援法上の「保護者」には当たらず、子どもの保育所入所申請に際して、当該父又は母の合意は必ずしも必要ないと考えられます。 |
Q4 | オーストラリアでは、離婚後の共同親権の法制がうまく機能しなかったとして、単独親権制に戻ったという解説がみられますが本当ですか。 |
A | 誤りです。 2023年のオーストラリアの法改正は、共同親権制度そのものを見直すものではありません。オーストラリアには親権という概念はなく、親責任とされています。2023年の改正後も、離婚後も父母ともに親責任を持ち続けることを前提に、父母それぞれが子の養育にどう関わるかを取り決めています。特に子に関する重要事項については、父母間で話し合って決定することが推奨されますが、裁判所では、あくまで子の安全保護などの「子の最善の利益」の基準に従って、共同決定にするのか、単独決定にするのかを定めることとしています。この点は、日本の法制審の要綱案と同じです。 なお、ネット上では、「オーストラリアでは面会交流の際に必ず中立的な第三者(弁護士)が立ち会わなければならないこととなった」との情報も流れているようですが、これは誤訳です。 多くの国で、離婚後の共同親権がうまく機能しない場合に、当事者の申立てにより、単独親権への変更を求める手続きを有しており、実際、離婚後に単独親権に変更するケースはありますが、離婚後も共同親権を原則としたり、共同親権を選べる法制自体は定着しており、単独親権のみの法制に戻ろうとしている国はありません。 |