あなたは日本語に長けてるのね その2

シンハラ語質問箱 Sinhala QA59
2006-01-23 2007-12-09 2009-07-30 2015-May-27


  前回(QA57)の質問箱で日本語の「に」とシンハラ語の「タ」が同じように使えることが分かりました。でも話が込み入っていて分かりにくい。
 「日本語に長けてる」をもうすこし簡単に文法的に説明して…

 

ニパータの使い方をもう一度整理すると

 ニパータを使いこなすことはシンハラ語会話ではとても大切です。もう一度整理してみましょう。
   ①ඔබ ජපන් භාෂාවට දක්ෂයි නෙ
    オバ ジャパン・バーシャーワタ ダクシャイ ネ
    あなた 日本語に 長けてる ね

 これは前々回のQA57で取り上げた文例です。今回はこれと同じような文例を並べてみます。
   ②ඔබ ජපන් භාෂාවෙහි දක්ෂයි නෙ
    オバ  ジャパン・バーシャーウェヒ ダクシャイ ネ 

    あなた 日本語に 長けてる ね

 ①と②の違いは殆どありません。ただ、ジャパン・バーシャーワජපන් භාෂාව (日本語)に付くニパータがタか-‐①の場合‐‐-、それともවෙහිか‐‐②の場合--の違いがあるだけですです。①②とも、訳せば「あなたは日本語に長けているね」となります。日本語では①②とも「に」で訳せます。
 しかし、シンハラ語では①と②でニパータが使い分けられています。この使い分けには何かしらの意味の違いがあるはずです。では、違いって何でしょう。

 これは次のように考えることができます。

①あなたは日本語に対して長けている。--使われるニパータはタ
②あなたは日本語において長けている。--使われるニパータはヒවෙහි

 ①のタが添えられた名詞はシンハラ文法で与格サンプラダーナ・ウィバクティを表すとされます。与格は間接目的語のことです。日本語では助詞の「に」で表される名詞のことです。
 ②のヒවෙහි は場所格アーダーラ・ウィバクティを表します。場所格という「格」で文の成り立ちを捉えるなんて私たちは学習したこともないので、ちょっと取り付きにくいのですが、②は「あなたは日本語おいて)長けている」と言っているのです。

 日本語は助詞を使って単語ををつなぎ、文意を方向付けます。シンハラ語もニパータで単語をつなぎ、文の意味を方向付けます。ですから、ニパータの使い方を間違えると意味が飛んでしまいます。
 しかし、ニパータに対して神経質になる必要はありません。日本語初心者が助詞を間違えて使って日本語を話してもわたしたちはそれを正しい日本語文に整形して聞き取ることができます。シンハラ人の場合も日本人が間違えて使うシンハラ語のニパータを修正して聞き取ることがちゃんとできます。

 ここまでニパータの細かな意味を話してニパータに注意を喚起しながら、実は私はこうも思っています。上の①と②の文でニパータのタとヒが相手に聞き取れなかったとします。それでも相手に文意は通じます。日本語からテニヲハを取って話しても、所有を表す「の」を省かなかったら、だいたい相手の言いたいことはくみ取ることができるものです。助詞を使わなかったり、助詞の使い方を間違えてしまう日本語初級者は多いのですが、間違いなど気にしないで日本語を話そうと努力を続ける人は、だんだんと話し言葉の日本が流暢になります。
 これはシンハラ語で話す時も同じです。あなたがニパータを意識しながら、間違いを恐れずに話せば、シンハラ語はどんどん話せるようになります。あなたのニパータの間違いを指摘してくれるシンハラの方に出会えたなら、それはもう幸運そのもの。


 ニパータは言葉をモジュールにまとめてくれます。モジュールmoduleは話し言葉の最小単位です。文を解析するときモジュールで切り離せば文は壊れません。俗にチャンクchunkと言い換えてもいい。取るに足らない接辞ですが、あなたの気持ちや言葉のニュアンスを最小の単位にまとめて運んで、相手に伝えてくれるのです。このモジュールを作るのがニパータです。