サンフランシスコ・クロニクル 2017年7月25日
サンフランシスコは議論ある難燃化学物質を
禁止するアメリカで最初の都市になるかもしれない

レイチェル・スワン
情報源:San Francisco Cronicle, July 25, 2017
SF may ban controversial flame-retardant chemicals
By Rachel Swan: a San Francisco Chronicle staff writer
http://www.sfchronicle.com/politics/article/SF-may-ban-
controversial-flame-retardant-chemicals-11349686.php


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2017年8月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/articles/
170725_SFChronicle_SF_may_ban_controversial_flame-retardant_chemicals.html


 サンフランシスコは、難燃化学物質の家具や子ども用品での使用を禁止するアメリカで最初の都市となる方向に進んでいるが、この動きはがんの発生率を下げ、子どもたちを様々な発達問題から守ることになるであろうと科学者らは述べた。

 同市の行政官マーク・ファーレルは火曜日の管理委員会の会合でその法案の立法を図るであろう。彼はその立法を、2012年にプラスチック袋を禁止し、昨年は発泡ポリスチレンを禁止した同市にとって、必然の措置であると考えている。

 難燃剤と注意力問題、低知能指数、ホルモンかく乱、生殖問題、がんと関連付ける多くの研究に言及しつつ、”サンフランシスコは常に環境のリーダーである(訳注3)”とファーレルは述べた。難燃剤は、ベビーカー、コンピュータ、ビル断熱材、プラスチック、介護まくらを含んで、多くの家庭用品中に練り込まれている。

 これらの化学物質は、ダストに移動し、床を這いまわる幼児やコンピュータのそばでものを食べる人々にとって有害である。

 ”化学産業は嘘をつき、だます”と、2006年にカリフォルニア州下院議員として最初の反難燃剤法を提案した元同州議会議員マーク・レノは述べた。元市の行政官でもあったサンフランシスコの民主党員レノは、カリフォルニア州下院及び上院議員を務めている間に4つのそのような法案を上程したが、そのうち3つは否決された。唯一採択された法案は、製品が難燃剤を含むかどうかを示すために家具に表示ラベルを求める2015年の法案であった。

 化学産業のロビーイストらはしばしば、彼の立法の取組みに激しく戦いを挑み、ラジオやテレビの広告、ロボコール(自動電話)、そしてメールにより選挙民に訴えた。

 ”彼らは人々に対して、’もしこの法案に反対しなければ、あなた方の子ども達は火事で死んでしまうので’、議員に電話し、これらの法案への反対投票を呼びかけるよう促した”と、レノは述べた。

 彼とその他の人々は、難燃剤に関わるカリフォルニア州の問題を、当時のカリフォルニア州知事(第34代)ジェリー・ブラウンが一期目の1975年に制定した、製造者に全ての製品を裸火テストにかけることを求める法律にまで遡って追跡した。

 その法律は善意のものであったが、”それらの会社に対して非常に多くの化学物質を使用することを求める結果となった”と、レノは述べた。彼は、その法律はカリフォルニア州独自のものであったが、同州は最も人口が多い州なので、他の州にも影響を及ぼしたと、彼は述べた。

 ”我々カリフォルニア州の市場は非常に大きいので、アメリカのどこで売られる家具もカリフォルニア州の法に準拠しなくてはならなかった”と、レノは述べた。

 第39代知事に返り咲いたブラウンは、2013年にこれらの法律を修正(訳注1)して、製造者が耐火性繊維と被覆を使用することを許すこととした。しかし彼は、難燃剤の完全禁止の手前で止めたので、オークランドを拠点とする環境健康センターによる調査によれば、全国で売られている全ての子ども用品の概略 4分の1 で、まだ難燃剤は使用されている。

 ファーレルの禁止法案はすでに有名な産業団体からの批判に直面しているが、彼はそれは管理委員会を容易に通ると期待している。

 ”難燃剤は消費者に火災防止の決定的に重要な要素を提供する”と、アメリカ化学工業協会の北米難燃剤連盟の報道官ブライアン・グッドマンは述べた。”それらはまた、生命と財産を守るためにある重要な火災安全基準に製品を合致させるのに役立つ”。

 そのような理由づけが数十年間消費者に安全についての間違った考えを与えてきたと、2009年にある開発銀行の仕事をやめて、サンフランシスコのマリーナ地区に有機赤ちゃん用品店を開いたスーザン・プライスは述べた。

 プライスは8年間、多くのほろ付き揺りかごやベビーベッドのマットレスに使用されている難燃化学物質を加えたポリウレタンフォームの代替物質を店に置くよう取り組んでいる。

 彼女はこれらの化学物質を避けて、羊毛、ラテックス(訳注:植物から得られる乳状の樹液)、重曹、ヤシ殻のような自然由来の難燃材料の製品を販売している。それらは高価であり、見つけるのが難しく、消費者に有害物質を放出しないマットレスに余分な50ドルを払うことに、なぜ価値があるのかを説明しなくてはならないと、彼女は述べた。

 ”世間一般の通念は、もしそれがそんなんに悪いものなら、政府はそれを禁止していたはずであるというものである”とプライスは述べた。”そしてある人々は、彼らの赤ちゃんを火災から守るために難燃化学物質が必要であると考えている”。

 もしそれが採択されれば、ファーレルの禁止法案は、小売業者や消費者だけでなく、難燃剤が燃えるときに有害な化合物を吸入するかもしれない消防士にも影響を及ぼすであろう。

 2014年に行われたサンフランシスコの12人の消防士の血液テストは、彼らの全てが高いレベルのダイオキシンを持っていることを示したが、それらの化合物は難燃剤に火が付いた時に放出されるものである。ダイオキシンは極めて発がん性が高いと、サンフランシスコ消防士がん防止財団の長、トニー・ステファニは述べた。

 ステファニは、アメリカの40〜50歳の女性の平均乳がん発生率より6倍高いはサンフランシスコの女性消防士の乳がんを含んで、彼の同僚消防士の中でがんが多いのは難燃剤のせいであると主張した。彼は、製造者の主張にもかかわらず、これらの化学物質は火災を制限するのに ”ほとんど、あるいは全く” 役に立たないと述べた(訳注2)。

 レイチェル・スワンはサンフランシスコ・クロニクルのスタッフ・ライターである。

サンフランシスコ環境法
  • 2006年: 大規模店及び小売業でのプラスチック袋禁止、及びレストラン及びホテルでの発泡プラスチック製容器の禁止
  • 2008年: 商業用及び住宅用高層建築物の LEED 基準(Leadership in Energy and Environmental Design)への合致要求(訳注:LEED グリーンビルディング認証
  • 2009: サンフランシスコの住民への、リサイクル可能な物質、堆肥化可能な物質、及び埋め立て用廃棄物の分別要求
  • 2012年: 全ての小売店にプラスチック袋禁止の適用を拡張
  • 2013年: 全ての飲食施設でのプラスチック袋禁止
  • 2014年: 全ての市営施設でのプラスチック飲料水ボトル禁止
  • 2015年: 市所有の車両の燃料を再生可能ディーゼルへ移行
  • 2016年: ピーナツ包装容器から氷箱、持ち帰り用コーヒーカップまで、全てのものにポリウレタン禁止
  • 2016年: サンフランシスコは新築ビル屋上に太陽光パネル設置を要求するアメリカの最初の都市となる

訳注:SF 難燃剤禁止関連情報 訳注1:カリフォルニア州難燃剤規制
訳注2:シカゴトリビューンの難燃剤テスト

訳注3:当研究会が紹介したサンフランシスコの先進的な環境政策



化学物質問題市民研究会
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