サンフランシスコ市 2003年10月22日
サンフランシスコ環境コード
第1章 予防原則方針声明

情報源: San Francisco Environment Code
CHAPTER 1 PRECAUTIONARY PRINCIPLE POLICY STATEMENT
https://sfenvironment.org/policy/environment-code

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年11月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/san_francisco/sf_env_code.html

San Francisco Environment Code
サンフランシスコ環境コード

PREFACE TO THE ENVIRONMENT CODE
環境コードへの序文
CHAPTER 1
第1章
PRECAUTIONARY PRINCIPLE POLICY STATEMENT
予防原則方針声明
100節判明したこと
101節サンフランシスコ市の予防原則
102節3年後検証
103節全ての環境条例と決議文のリスト
104節一般的福祉向上にのみに限定した市の責任
CHAPTER 2
第2章
ENVIRONMENTALLY PREFERABLE PURCHASING ORDINANCE
環境的に望ましい購入方針
CHAPTER 3
第3章
INTEGRATED PEST MANAGEMENT PROGRAM
統合有害生物管理(IPM)プログラム
CHAPTER 4
第4章
HEALTHY AIR AND SMOG PREVENTION
健康的な空気とスモッグ防止
CHAPTER 5
第5章
RESOURCE CONSERVATION ORDINANCE
資源保護方針
CHAPTER 6
第6章
[RESERVED]
[予備]
CHAPTER 7
第7章
RESOURCE EFFICIENCY REQUIREMENTS
資源効率要求
CHAPTER 8
第8章
TROPICAL HARDWOOD AND VIRGIN REDWOOD BAN
熱帯硬材と赤色木材の禁止
CHAPTER 9
第9章
BAN ON PURCHASE OF MOTOR VEHICLE FUEL CONTAINING MTBE
四エチル鉛含有自動車燃料の購入禁止
CHAPTER 10
第10章
TRANSPORTATION OF AGGREGATE MATERIALS
集成物質の輸送
CHAPTER 11
第11章
[RESERVED]
予備]
CHAPTER 12
第12章
URBAN FORESTRY COUNCIL
市街地緑化会議
CHAPTER 13
第13章
ARSENIC-TREATED WOOD
ヒ素処理木材


環境コードへの序文


 サンフランシスコ市コードは2003年10月22日に承認された条例253-03を通じて立法化された条例を含む。環境コードは、条例171-03、ファイル番号021726、承認2003年7月3日である。条例番号及び承認日時を含む立法履歴は、そのほとんどが各節の末尾に記されている。1999年3月以降に承認された条例の履歴は執政部(Board of Supervisors)のファイル番号も含む。
 建築、電気、住宅、機械、及び配管コードはサンフランシスコ市コードの一部であるが、ここには含まれていない。それらは下記で購入可能である。
General Code Publishers, 72 Hinchey Road, Rochester, NY 14624; (800) 836-8834; http://www.generalcode.com


第1章 予防原則方針声明


第100節 判明したこと

執政部(Board of Supervisors)は次のことを認め、これを宣言する

A. 全てのサンフランシスコ人は健康で安全な環境に対し平等な権利を持っている。このことは、我々の空気、水、土地、及び食物が、個人及び地域が健康で満足した威厳ある生活を送ることができるよう十分に高度な基準にあることを求める。サンフランシスコの環境を強化し守り保存する義務は、政府、住民、市民団体、及び産業界などの肩にかかっている。

B. 歴史的に環境的に有害な行為は、それらが環境を著しくなったこと又は人々に被害を与えたことが判明した後にしか、止めさせることができなかった。例えば、PCBs、 DDT、 鉛、アスベストの場合には規制行為は被害が起きてからとられた。最初の被害が認知されてから対策がとられるまでの遅れにより人間の命が失われていく。

C. サンフランシスコ市は、環境に対する害が最も小さい代替案を選択し、従来のリスク管理に挑戦するリーダーである。”統合害虫管理(IPM)条例”、”資源効率建築条例”、”健康な空気条例”、資源保護条例”、及び、”環境的に望ましい調達条例”など多くの市条例が、特定の市の調達と行為に対し予防的アプローチを適用している。国際的に、このモデルは予防原則と呼ばれている。

D. サンフランシスコ市は従来の環境法を一つの環境コードにまとめ、将来の立法化のために一つの枠組みを構築したので、予防原則アプローチは、より健康的でより正当な案フランシスコための法の開発と実施のための政策の枠組みとして機能するであろう。このような方法でサンフランシスコ市は、現在及び将来の世代のために健康的で生存できる湾岸地域の環境を作り出し維持し、持続可能性ののモデルとなるであろう。

E. 科学と技術は環境問題を防ぐあるいは緩和する新たな解決をもたらす。しかし、科学は又、すでに母親の母乳中に入り込み新たな問題の原因となっているような新たな成分や化学物質を作り出している。新たな立法が、これらの状況に対処するために必要であり、予防原則が、新しい科学の有害でしばしば意図せずに生じる結果を取り除く一方、環境的に健康な代替案を促進するのに役立つツールとして考えられている。

F. 予防的アプローチの中心的要素は、入手可能な最良の科学を用いて入手可能な代替案を注意深く評価することにある。代替案評価は公衆にそれぞれのアプローチ結果を提示するために広い範囲の選択肢を検証する。このプロセスでは、短期間と長期間の影響またはコストを考慮し、より潜在的危険性が小さい選択肢を優先しつつ、それぞれの選択肢の危険な又は潜在的に危険な影響を評価し比較する。このプロセスは基本的な疑問を生じさせる。 「この潜在的に危険な行為は必要なのだろうか?」 「より危険性が小さい選択肢としてどのようなものが入手可能であろうか?」 「いかに小さいダメージが可能であろうか?」

G. 代替案評価はまた公共のプロセスである。なぜなら、国内でも国際的にも公衆は環境政策の生態学的及び健康に関わる結果の影響をこうむるからである。政府の一連の行動は、最大範囲の代替案が多様な個人と団体からの情報に基づき考慮される時、広範な公衆の参加により必然的に高められる。公衆は検証されるべき特定の代替案の範囲を決定することができなくてはならない。個々の代替案に対し、公衆は、地域の経済への可能性ある影響ととともに、短期的及び長期的の両方の影響を検討しなくてはならない。

H. この公開された政策決定の形態は、市民が立法過程を完全に見ることができるサンフランシスコ市の有名な ”サンシャイン法” と整合するものである。予防原則の目標の一つは、その健康と環境が影響を受ける政策決定に対等なパートナーとして市民を含めることである。

I. サンフランシスコ市は、市の電力が再生可能な資源から発電される時代、我々の全ての廃棄物がリサイクルされる時代、我々の車が飲める水だけを排出する時代、サンフランシスコ湾から有毒物質がなくなる時代、そして海から汚染物質がなくなる時代、そのような時代が来ることを待ち望んでいる。我々が、輸送、建設、土地利用、企画、水、エネルギー、医療、リクリエーション、調達、公共支出、等に関する将来の法律と政策を評価するときに、予防原則はこれらの目標に我々が到達するのに役立つ方法をを提供するものである。

J. 我々の社会をこれらの目標の実現に向けて変え、自然との境界を尊敬を持って保つ社会生活を実現するためには技術革命と共に行動様式の革命も必要である。政策決定に対する予防的アプローチは、サンフランシスコが、環境の病の治療法を見つけるのではなく、環境が傷つく前にその病を予防する政策に切り替えるスピードを上げるのに役立つであろう。

(Added by Ord. 171-03, File No. 030422, App. 7/3/2003)

第101節 サンフランシスコ予防原則

 下記は、サンフランシスコ市/郡の予防原則方針である。市及び郡の全ての幹部職員、理事会、委員会、及び部局は、市及び郡の業務を遂行する場合、予防原則を実施しなくてはならない。

 予防原則は、幅広い代替案の徹底的な探求と注意深い分析を要求する。入手可能な最良の科学に基づき、予防原則は人間の健康と市の自然に対する脅威が最も小さい代替案の選択を要求する。公衆の参加と開放された透明な政策決定プロセスが代替案の発見と選択にとって重要である。

 人々や自然に対する深刻な又は不可逆的な危害の脅威が存在する場合には、原因と結果についての完全な科学的確実性がないことをもって、市が、環境の悪化の防止や市民の健康の保護のためのコスト効果のある措置を遅らせるための、十分な理由とすることはできない。代替案の検証によって発見される科学的データの欠陥も将来の研究のための指針となるが、市が予防措置をとる妨げとしてはならない。新たな科学的データが得られるようになったら、市は従来の決定を見直し、根拠があれば調整をする。

 懸念に合理的な根拠がある場合、政策決定への予防的アプローチは、潜在的脅威の最も小さいものを選択するというプロセスを引き金とすることで、危害を低減することに役立つことを意味する。政策決定への予防原則の主要な要素は下記のようなものである。
  1. 先行措置 : 危害を防ぐために先行措置をとる義務がある。政府、産業界、及び地域の団体は、一般大衆と共にその責任を共有する。

  2. 知る権利 : 地域住民は、製品、サービス、運転、又は計画の選択に関連する、人間の健康と環境への潜在的な影響に関する完全で正確な情報を知る権利がある。この情報を提供する責務は提案者側にあり、一般大衆にはない。

  3. 代替案評価 : 全ての代替案を検証し、何もしないという代替案も含めて、人間の健康と環境に対する潜在的な影響を最小にする代替案を選択する義務がある。

  4. 全てのコスト明細 : 可能性ある代替案を評価する時には、たとえ、それらが当初の価格に反映されていなくても、原料、製造、輸送、使用、保守、最終的廃棄、及び、医療に関わるコストを含めて、合理的に予測できる全てのコストを検討する義務がある。短期と長期の便益、及び時間制限も政策決定時には考慮されなくてはならない。

  5. 参加型政策決定プロセス : 予防原則を適用する政策決定は、透明で参加型であり、入手可能な最良の科学的及び他の関連情報を知らされなければならない。
(Added by Ord. 171-03, File No. 030422, App. 7/3/2003)

第102節 3年後検証

 この条例の発効がら3年以内、及び公衆からの聴聞の後、環境委員会は執政部に予防原則方針の有効性に関する報告書を提出しなくてはならない。

(Added by Ord. 171-03, File No. 030422, App. 7/3/2003)

第103節 全ての環境条例と決議文のリスト

 環境部長は、サンフランシスコ市及び郡の環境に影響を与える又は関連する条例と決議文のリストを作成してこれを保守し、このリストを環境部のウェブサイトに掲載しなくてはならない。

S(Added by Ord. 171-03, File No. 030422, App. 7/3/2003)

第104節 一般的福祉向上にのみに限定した市の責任

 執政部は、全ての市職員と幹部が、健康と環境に影響を与える措置をとる時、特にそれらの措置が深刻な又は不可逆的なダメージを与える恐れがある場合には、予防原則を考慮し、代替案を評価することを奨励する。
 この条例は、市職員あるいは幹部に特別の措置をとる特定の義務を課すものではない。この条例を採用し、実施するにあたって、サンフランシスコ市及び郡は一般的福祉(general welfare)を推し進めることのみを保証するものと想定している。
 幹部及び職員に対し、彼らのこの条例の不履行が原因で被害を受けたと主張する人に対する金銭的損失に対する責任を負わせるものではなく、またこの条例は、これらを含むしかしこれらに限定しない職務執行令状や強制命令などに対し、どのような法的救済のためのベースをも与えるものではない。
 この章を採用するにあたって、執政部は、カリフォルニア州法の下に所有権のある情報を公衆に開示する権限を授与する又は要求することはない。

(Added by Ord. 171-03, File No. 030422, App. 7/3/2003)


訳注:関連リンク
サンフランシスコ環境コード全編:San Francisco Environment Code
サンフランシスコ予防原則:The Precautionary Principle
サンフランシスコ環境局:San Francisco Department of the Environment


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