岡山県赤磐市でケナフの種子休眠→発芽を確認

2002年、地球クラブの井柳氏から、「2002年3月に発芽した2代目ケナフ(*1)は、駐車場出入り口に勢力を拡大したため成長観察は継続できないと思われるので、別の場所で再検証して欲しい」との依頼が筆者にあり、これらの発芽種子と同じ親株から採れた種子(約50粒)が送られてきた。以下に検証結果を報告する。ご協力いただいた全国カヤネズミ・ネットワークの寺澤和枝氏ならびに適切なご助言をいただいた山本聡子氏に記してお礼申し上げる。

*1 静岡県清水市で自然繁殖した二世代目のケナフ(下記トピック参照)

<方法>
実験は2002年から2005年にかけて、岡山県赤磐市の耕作地で行った。
2002年6月に種まきを行い、その後は水やりや施肥、除草などは特に行わず、経過を観察した。

<結果と考察>
2002年6月 一世代目種まき
2002年秋  開花→結実→種子落下
2003年春  発芽→夏頃までに消失(*2)
2004年春  休眠種子発芽・生育→開花前にトラクターで畑にすき込む(*3)
2005年春  休眠種子発芽・生育→開花前に除草剤で他の草とともに枯らす
2006年〜  畑地雑草生育、ケナフは見あたらない

*2 寺澤氏の2003年8月時点の報告より「2002年は渇水で発芽が遅れ、開花も遅れ、結実も遅れた処へいきなりの霜で若い実は枯死したが、幾分か種子が残り今春発芽した。しかし、肥料分の多い場所の為草に負けてしまい、今は見当たらない」。

*3 当初は、実験終了まで放置して経過を観察する予定だったが、初年度に種子の自然繁殖を確認したため、2003年以後は万一にも種子が耕作地の外に飛散しないように配慮された。

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今回の検証実験で、静岡県清水市よりも冷涼な気候の岡山県赤磐市でも、種子の成熟→越冬→発芽が可能と分かった。また、2003年に発芽したケナフが肥料分豊富な畑で他の雑草に負けてしてしまったことから、実験に用いた種子が特別生命力が高いわけではないことが明らかになったので、他のケナフでも自生する力があると考えられる。事実、寺澤氏の近隣の小学校でも、種子の越冬が確認された。宮崎県では、放置されたケナフの株から、翌年新芽が出たという報告もある。

2006年以降に発芽が確認出来なかったのは、除草剤の影響によるものか、種子が全て発芽(or 死滅)したためかは、本実験からはっきりしない。但し2003年以降は開花前に生育株が消失または除去されたため、2004年と2005年にみられた発芽は、初年度(2002年)に播種された種子か、2002年に生産された種子が1年以上休眠・越冬した後に発芽したことを示している。

従って、程舟氏(高知大(当時))が「ケナフ協議会ニュース」第91号で帰化しない根拠とした「ケナフの種子は休眠期がない」という主張は誤りであり、本サイトで公開しているKathy Burk氏(FLORIDA Department of Environmental Protection)、小南陽亮氏(森林総研)、山本聡子氏((財)上越環境科学センター)の指摘が正しかったことが実証された。

なお、程舟氏の当該文献におけるその他の主張については、同じく本サイトで公開している黒沢高秀氏(福島大)の指摘により誤りであると反証されており、「ケナフに帰化する能力がない」という推進派の主張は完全に否定された。

既に野外にタネが播かれてしまった場合の対応としては、畠(2002)で完全にタネを回収することを提案したが、2004年にトラクターで畑にすき込んだ翌年も発芽したことから、一度種子が散布されれば、生育株を刈り取りや引き抜きで除去しても、翌年埋土種子が発芽する可能性が十分あるので、2、3年は監視の継続が必要となるだろう。

<参考文献>
畠佐代子. 2002. ケナフ. (村上興正・鷲谷いづみ, 監修. 日本生態学会, 編.: 外来種ハンドブック)p. 200. 地人書館, 東京.

(07/02/19)


検証−ケナフの自然落下種子、静岡県で2年連続発芽

 2002年3月、静岡県清水市で、2001年に引き続きケナフの自然落下種子の発芽が確認された(報告者:「地球クラブ」井柳氏)。これは、言い換えれば「静岡県でケナフが二世代にわたり自然繁殖した」という事実に他ならない。

2000年 播種された株が成長、放置。
2001年 放置株5本から自然落下種子が成長、その後25本生育。
what's new、01/06/23付で報告済み)
2002年 25本から自然落下した種が発芽。


 実は2001年の速報と前後して、私の所に井柳氏から「ケナフの野生化の検証ポイント」について問い合わせがあり、検証のポイントは以下の4点だと回答した。

(1)露地栽培で親株が花を咲かせて、且つ成熟した種子が出来る。
(2)(1)の種子が越冬後、発芽する。
(3)(2)の発芽した株が成長し、成熟した種子をつける。
(4)(3)の種子が越冬後、発芽する。

 2001年の井柳氏の報告では、「自然落下した種子が生育している」ということだったので、(3)の段階に入っていた。そこで、「出来れば、その株をそのまま放置して、(4)まで確認してはどうか」とアドバイスをした。今回の報告で(4)の段階まで到達したことが判明し、清水市と同様の気候・土壌等の諸条件がそろった場所では、野生化する確率は極めて高いと結論づけざるを得ない。

 生物多様性条約の「外来種:予防、導入、影響緩和のための中間的原則指針」(
http://www.biodic.go.jp/pdf/species.pdf)でも示されているとおり、外来種の導入に際しては、生態系に与える影響について十分な調査が必要であるはずだが、ケナフにはそれがなされていない。

 ケナフの栽培に厳重な管理が必要なのはもはや自明であり、「ケナフは日本で帰化しない」という見解を公表している推進団体は、上記の事実を受け入れ、速やかな公表内容の訂正をして頂きたい。また、環境省や日本生態学会等諸学会には、ケナフ栽培の功罪についての検証及び早急なガイドライン作りを望む。(02/05/03)


東南アジア・インド・アフリカでケナフがエスケープや害草化

 ケナフが東南アジア・インド・アフリカで栽培地からエスケープ(逸出)し、アフリカ・アジア地域では害草化していたという事実が下記文献等により判明しました。

 「竹松哲夫・一前宣正. 1993. 世界の雑草II. 離弁花類. 全国農村教育協会.」によれば、「アフリカとアジア諸国に多い畑地雑草で,ワタ,ダイズ及びトウモロコシなどの害草になっている。栽培地から逸出して広まっている。」ことが、海外の複数の文献を元に記されています。

 「J. Hutchinson and J. M. Dalziel. Flora of West Tropical Africa. T; 2. 1958. London. 」では、naturalized(人間がよそから持ち込んで、野生化している)として扱われており、アフリカの複数の国で栽培地から逃げ出しているようです。

 さらに、前出の「世界の雑草II.」には、ケナフの生態学的な特徴として、下記のことが書かれています。
時に多年生となり、根茎でも繁殖する。
種子の伝播は風、雨、動物、人間などによる。
畑地、樹園地、牧草地、路傍、荒地などに生育する。
・適温は15〜25℃、降雨量は生育期間に500〜800mmがよい。
土壌の種類を選ばないが、過剰の水分では生育がよくない


 ケナフはアフリカ原産(注1)と言われていますが、これだけ広い地域で逸出または帰化していることは、異なる環境への適応力が高いということを示しています。奄美・沖縄などの亜熱帯地域は、この条件を十分満たしており、栽培に際しては、万一にも帰化することがないよう、厳重な管理下に置く必要があると思います。

 現在、ケナフ協議会をはじめ、日本でケナフの普及を進めている複数の団体は、日本での帰化は殆どあり得ないというスタンスを取っています。しかし、残念なことに、これらの多くは生態学的に誤った認識や、意図的な事実隠し・曲解に基づいています。私はケナフ協議会などの団体に対して、これらの誤りをもう随分長い間指摘し続けて来ましたが、一向に認めようとしません。

 ところが、アフリカ(原産地)以外での「ケナフの自生」については、実は複数のケナフ推進団体のHP等で堂々と記載されています。

福島ケナフの会の関係者のコメント:http://www.ecofamilypark.gr.jp/ecopa/ecopatai/ecpa2/tai_4/tai_4.html
かごしまケナフの会:http://www.edc.miyazaki-u.ac.jp/~hongo/98yumekenafu.html
大川ケナフの会:http://www2.saganet.ne.jp/o-mirai/okawa/kenafu/kenafu02.htm
NAGANOケナフの会:http://www.jbnet.or.jp/kenafu/k-nani.htm

 上記以外にも、「ケナフ」「自生」で検索をかけると、似たような記述が一杯あります。 情報ソースは判りませんが、これらの自生地は原産地ではありませんから、「帰化」です。ケナフの帰化をかたくなに否定する一方で、このような事実を堂々と記述することは非常に不思議です。

 海外の帰化事例については、引き続き調査する予定です。新しい情報が判りましたら、お知らせします。(01/02/17)

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(注1)「植物の世界」第76巻68p. 朝日新聞社. 1995.


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