文房四宝(墨)

ここでは墨について説明します。
       
 
墨磨りのすすめ
 
墨を磨ることは大相撲にたとえると、力士が土俵に上がって対戦までの数回行う「しきり」と同じだといえます。
しきりをすることによって精神統一をしたり、どのように攻めたら良いか等作戦を練ります。墨すりはそれとまったく同じで、磨っている時に漂う、墨に含まれた香料の香りが精神を穏やかにしてくれますし、磨っている間にどのような作品にしようか構想を練ります。墨が磨り終えた時には精神状態は最高になっています。こうして取り組んだ作品は見てくださる方に必ずや感動を与えることと思います。
 
 
墨のサイズ
 
市販されている日本製の墨(和墨といいます)は右図のようなサイズに分かれます。
どのサイズの墨を買い求めるかは、所有する硯の大きさによって決めます。当然のことですが大きい硯で大きい墨を使って磨ればたくさんの墨液を短時間で得ることが出来ます。
安価な墨の中には中国産の墨(唐墨といいます)がありますが、サイズの名称が逆になります。
※一丁型は600g・二丁型は300g・四丁型は150g・八丁型は75g十六型は37.5g・三十二丁型は18.75g・六十四丁型は9.38gとなります。
 
 
墨の種類(原料)
 
油煙墨
菜種油、ごま油、大豆油などの植物油を土器に入れ、灯芯に火をつけて上に離して皿をかぶせるように設置しておき、それに付着した煤(すす)を採取して膠(にかわ)と、膠は動物の骨や皮を煮詰めて作るので臭いので、香料も混ぜ込みます。
品質の良否は灯芯の太細によって決まります。太い灯芯は煤がたくさん出ますが粗煙になり、細い灯芯は時間はかかりますが炭素粒子が微細で良質になります。
 
松煙墨
倒れて朽ち果てた松の木の樹脂(やに)だけ残っている部分を燃やした煤から作ります。障子紙張りの枠の中で松の樹脂を燃やして障子紙に付着した煤を採取して作ります。炭素粒子が油煙より大きく墨色が複雑です。製造後年数を経ると青墨化してきます。これが青墨といわれる超高級品です。
 
工業煙
軽油、重油、廃油などの安価な工業用油を燃やした煤に、膠の代わりに科学糊を混ぜて作られます。安物の墨がそれです。
顔料を混ぜて青墨、茶墨等と称して市販されているものもあります。
 
左の写真は奈良墨運堂の玉品。力強い楷書を書くときに濃墨にして使っています。
 
 
墨の磨り方
 
墨の磨り方はゆっくり丁寧に磨る事です。力を入れて勢いよく硯にこすりつければ早く磨れるでしょうが、きめの細かい良い墨液は望めません。何よりも精神統一や、作品の構成を考える貴重な時間を無駄にします。
どんなに良い墨でも硯の状態が良くなければ早く良い墨が磨れません。硯の鋒鋩(硯のざらざら)に古いすみの粕が付着してしていれば時間がかかります。
 
 
墨の歴史
 
中国
殷・周時代(B.C1700−B.C770)の遺跡から、墨で書かれたと思われる陶器や竹簡などが発掘されておりますが、どのような墨だったのかまではわかっておりません。漢時代(B.C206−B.C220)の遺跡からは小さな墨丸といわれる球状の墨が発掘されています。平たい硯で磨り潰して使っていたみたいです。唐(A.D618−A.D960)になると墨匠という墨作りの名人が多く出てきます。この時代には墨は量産されるようになりました。
日本
日本の墨についての記録は八世紀に書かれた「日本書紀」に出てきます。正倉院には日本最古の墨として中国と朝鮮の墨が保存されています。発掘された古墳の壁画などには色々な色彩の墨が使われており、もっと早い時代に中国や朝鮮から伝わっていた可能性があります。
 
 
日本でいちばん有名な墨の老舗は奈良の墨運堂さんですが、そのホームページで墨の製造工程等、墨に関してのことがくわしく学習できます。必ず参照して下さい。
 
      竃n運堂
http://www.boku-undo.co.jp/
 
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Last updated: 2006/1/15